着物のブランデー汚れのシミ抜き方法は?よくある7つの質問を解説!
ブランデーとはブドウ等の果汁を蒸留して作るお酒のこと。香りの高さや高級感でも人気があり、会席での食後酒やパーティー等でも好まれます。
普段はあまり飲まない人でも、着物を着た席で少しだけブランデー等をいただく…というケースも多いようです。ただ着物にブランデーをこぼしてしまうと、少々困ったシミになってしまいます。
着物にブランデーをこぼした場合の応急処置やシミ抜き方法を知って、大切な着物をキレイにしましょう!
着物をブランデーで汚したらすぐ濡らした方がいい?
外出先の応急処置では、乾いた布でブランデーの水分を取るだけの方が良いです。濡らしたタオル等を使ったり、水で濡らしたりするのは避けましょう。これには2つの理由があります。
- 濡らしたタオル等で水分を与えることで、汚れが広がるケースが多いため
- 水濡れに極端に弱く、縮んだり水シミを作る着物もあるため
特に正絹(シルク)の着物や天然染料を使った着物は、水で濡れることでどんどん被害が広がってしまうことが多いです。外出先ですべての汚れを取ろうとせず、軽い応急処置にとどめましょう。
着物のブランデー汚れの応急処置におしぼり使って平気?
出先での応急処置では、おしぼりは使うのをやめましょう。
消毒薬や除菌のためのアルコール、そして香料等が多く使われているためです。同じ理由で、ウェットティッシュ等も使わないことをおすすめします。
またティッシュペーパーも使わない方が無難。これはティッシュが水分と摩擦に弱く、紙の繊維が着物に残りやすいためです。応急処置では、次のような布を使ってください。
- 乾いたタオル(柔らかいもの)
- 乾いたハンカチ
- 色が薄い手ぬぐい 等
ゴシゴシとこすったり叩いたりせず、そっと押さえて水分を取りましょう。
着物のブランデー汚れってシミ抜きしないとダメ?
はい、ご家庭かまたは専門店で必ずシミ抜きをしてください。着物についたブランデーのシミは乾くと一見して目立たなくなることもありますが、後からシミが浮いてきたり、変色するケースが多いです。
ブランデーはアルコール度数が高く、中には度数が50°を越えるものもあります。つまり消毒用のアルコールを着物をこぼしたのと同じ状態です。さらにブランデーには、天然の香料がたっぷりと含まれています。香水でシミを作るのと同じように、ガンコなシミになってしまうというわけですね。
放置したブランデーのシミはカビや虫害(虫食い)などの原因にもなります。必ずキチンとお手入れをしましょう。
訪問着にブランデーのシミ…家でシミ抜きできる?
着物の素材や加工の状態・染料等で、ご家庭でシミ抜きができるかどうかは変わってきます。着物のブランデー汚れをシミ抜きする場合「水洗いができるかどうか(水が使えるか)」が重要です。
水が使える着物の例
- ウォッシャブルウールの着物
- 一部の木綿着物
- 一部の麻の着物 等
水が使えない着物の例
- 正絹(シルク)の着物
- 絹の混紡・交織の着物
- 金箔・銀箔等の特殊加工がある着物 等
着物についたブランデーの汚れは水に溶けやすく石油系溶剤には溶けない「水溶性の汚れ」です。シミ抜きするには、水を使わなくてはなりません。
しかし正絹(シルク)の着物等は水に弱く、濡らすと激しく縮んだり、スレが起きたりしてしまいます。ブランデーの汚れを取るはずが、別のトラブルになってしまうというわけです。
ご家庭でシミ抜きをする前に「着物の素材」「着物の洗濯表示」をよく確認しましょう。
着物のブランデー汚れのシミ抜き方法は?
着物のブランデー汚れのシミ抜きでは、洋服用のおしゃれ着用洗剤を使います。詳しい準備と手順をご紹介しましょう。
用意するもの
- 中性洗剤:エマール、アクロン等、おしゃれ着用の液体洗濯洗剤です。
- タオル:バスタオル等の大きめのものが良いです。
- 乾いた布:ガーゼ素材等の柔らかいものが理想的。数枚用意しましょう。
- 洗面器等の容器:ボウル等でも構いません。
- 洗濯用ネット:着物を畳んで平らに入れられるサイズ。
- 着物用のハンガー:洋服用は型崩れしやすいのでNG。物干しでも代用できます。
- アイロンとアイロン台:スチームハンガーだと襟の型崩れ等を直せないので、通常のアイロンを使います。
- あて布:アイロン用のあて布。大判のバンダナやハンカチ等でもOKです。
シミ抜きの手順
- タオルを敷き、着物のシミがある部分を表にして置きます。
- 洗面器に水を入れ、シミの部分に少しずつ水を垂らして濡らし、染み込ませます。
- 乾いた布を上に乗せて、優しく抑えて軽く水分を吸い取ります。
- 洗面器の水に中性洗剤を適量たらし、よく溶かします。
- 洗剤液をシミの部分に垂らして、染み込ませます。
- 乾いた布を上に乗せて優しく抑え、水分と汚れを一緒に吸い取ります。
- 汚れが残っている場合は、5)と6)を繰り返します。
- 汚れが目立たなくなったら、水道水でシミがあった部分を濡らし、ガーゼで吸い取っておきます。洗剤の成分をしっかり取っておきましょう。
- 着物を畳んで洗濯ネットに入れ、中性洗剤を使って仕上げ洗いをします。洗濯機の場合は、弱水流やドライコース等、優しく洗えるコースを選びましょう。洗濯機が不安な場合は、浴槽等に洗剤液を作り、ネットに入れたまま漬けて、優しく押し洗いしてから2回すすぎます。洗濯機での脱水は30秒程度で、短く行いましょう。
- 着物用ハンガーまたは物干しに着物をかけ、形をよく整えます。直射日光のあたらない風通しの良い場所でしっかり乾燥させましょう。室内干しの場合、扇風機等で風をあてても良いです。
- あて布をあててアイロンをかけ、形を整えます。
※ご家庭で洗えない着物(水に弱い素材や加工の着物)はこの方法でシミ抜きしないでください。水による変質で着物が元に戻らない可能性が高いです。
※布でシミの水分を取る時にゴシゴシこすったり強く叩くのはやめましょう。摩擦によって表面がすれて白っぽくなると、専門店でも元に戻すのが難しいです。
※中性洗剤で汚れが落ちない場合でも、アルカリ性洗剤や漂白剤、重曹、セスキ炭酸等は使用しないでください。水洗いができる着物でも、生地の縮み、変質、変色が起こる可能性があります。
家で落ちないブランデーのシミもありますか?
次のような着物のブランデーの汚れは、ご家庭でのシミ抜きでは落とせません。
- 時間が経って乾いたシミ(数日以上経過している)
- 後から浮いてきたシミ(変色・酸化している)
- 水で濡らせない着物のシミ(シルクの着物・ウールの着物等)
このようなシミ・汚れについては、早めに専門店に相談をしましょう。
クリーニングに出せば着物のブランデー汚れは落ちる?
丸洗い(ドライクリーニング)だけでは、着物についたブランデーのシミは落ちません。手作業による「シミ抜き」や、程度によっては「洗い張り」が必要です。
- シミ抜きとは:職人が手作業で汚れを取るメニューのこと
- 洗い張りとは:着物をほどいて反物に戻し、専門の職人が水洗いする伝統的な洗濯方法のこと
ブランデーのような水性汚れが着物についた場合、一般的な洋服クリーニングのお店では対処ができないケースも多いです。「着物のシミ抜き」がキチンと行える専門店を選ぶようにしましょう。
おわりに
着物についたブランデー汚れは、付けたその時よりも後から厄介なシミになったのを発見し、慌ててお店に持ち込むという方も多いものです。着物のシミ抜きは専門店でも付けてから速やかに行った方が作業がカンタンで、料金も安く抑えることができます。
「この程度のシミなら平気かも?」と甘く見ないで、早めに対処を行いましょう。当店「京都きもの創夢」は着物のお手入れ全般を扱う専門業である悉皆屋(しっかいや)ですので、着物の水性汚れのシミ抜きはもちろん、洗い張り等にも対応しております。
着物のシミ・汚れにお困りの際には、お気軽にご相談ください!