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着物収納の大敵がプラスチックケース?対策は?よくある疑問Q&A

プラスチックケース 着物

あなたは家でどんなふうに着物を収納していますか?昔は着物といえば桐のタンスに入れるのが定番でしたが、現在ではなかなかタンスを見かけることも減ってしまいましたね。プラスチックケースを着物収納に使っている人も多いようです。

ただこのプラスチックケース、実はあまり着物収納には向いていないことはご存知でしょうか。着物をプラスチックケースで収納すると、思わぬトラブルの原因になってしまうことも多いんです。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。ここでは着物収納にプラスチックケースが不向きな理由や、それでもプラスチックケースを使いたい場合の対策など、プラケース収納についてのよくある疑問に着物のプロが詳しく回答していきます。

着物収納にプラケースは向いてないのですか?

基本的には着物収納にプラスチックケースは向いていません。ここではプラスチックケースを使う場合の対策などについても解説しますが、例えば「これから着物収納を買う」という人にはプラケースは正直、あまりおススメができないところです。

着物用のプラスチックケースを販売している会社さんには申し訳ないです。しかしプラケース収納による着物のトラブルをたくさん見てきたからこそ、「できればプラスチックケースでの着物収納は避けた方が良い」という視点で、このブログは執筆しています。

着物収納にプラスチックケースが良くない理由は?

着物収納にプラケースを使用する問題点としては、通気性によるカビや虫食い、保管状態の問題、そして埃(ホコリ)、品質劣化があります。それぞれを詳しく解説していきます。

空気がこもりやすい

着物の保管では、通気性の問題(空気がこもらないかどうか)が重要です。昔の日本の住宅はほぼ木造でしたし、そこに木製のタンスを置いて着物をしまっていました。暮らすには寒いしスキマ風も吹いたけれど、着物の保管という観点からは割と合った環境でした。ところが現在では鉄筋やコンクリートの住宅がほとんどですし、着物もクローゼットなどにしまいますよね。住環境という点で、まず昔に比べて「かなり空気がこもりやすい状態」になっています。

ここにさらに、プラスチックケースを着物収納に使ったと考えてみましょう。プラスチックケース収納は、はっきり言って通気性がよくありません。ビニールのレインコートを着ると暑いですよね。あれと同じような状態が、着物にとって毎日続くわけです。

さらに近年では、地球温暖化によって、夏には35℃を越える酷暑が続いたり、湿度の高い日々が続くようになっています。エアコンを止めた部屋の中で、プラスチックケースの内側の空気が一体何度になっているのか?湿度はどうなのか?考えるのもちょっと怖いくらいです。

カビが生えるリスクが高い

通気性の良くないプラスチックケースの中で温度・湿度が一度上がってしまうと、その湿気はなかなか外に出ていってくれません。このような蒸れた状態が大好きなのが、繊維にはえるカビ菌です。白カビ・黒カビ・青かびなどのカビ菌による症状は時あは、最初はカビくさい匂いから始まり、徐々に表面にカビが生え、さらにはカビによるシミや変色を作っていきます。

さらに困るのが、カビは一度生えたらカビクリーニングをするまで菌が取れないし、他の衣類にも菌が移るということ。ですからカビは予防対策がとても大切なのですが、プラスチックケースではカビ対策がなかなか難しいのです。

虫食いのリスクが高い

ヒメマルカツオブシムシ
プラスチックケースは空気はこもりやすいのですが、では密閉性は?というと、実はそこまで良くありません。昔の金属の衣類箱であればピタッと閉じるので虫などは入りにくかったのですが、プラケースですと意外と虫が入り込みます。

湿気のこもって暖かい環境は、虫食いする虫(カツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、イガ、コイガ)の好む場所です。

幼虫が孵化すると絹やウールなどの動物性繊維は特に好んで食べられて穴を開けられてしまうことに。このような虫食いの被害(虫害)も、一度起こると再発しやすく、他の衣類にも被害が及びやすいです。

入れっぱなしになりやすい

プラスチックケースは上記のように通気性の問題があるため、通常より頻繁な換気を必要とします。ところが、換気が難しい保管方法になりやすいのもプラケースなのです。

プラスチックケースには様々な形がありますが、特に避けたいのは上部でフタを開けるタイプです。この形は一度完全に箱を出してから出ないと中身を出し入れしないため、長期的に蓋を閉めておきやすくなるのがネック。

またプラスチックケースは軽くて扱いやすい分だけ、押し入れの天袋やクローゼットの奥の収納に使う人が多いようです。一度箱に入れると一年以上しまい混んでいる・・虫害やカビのトラブルでは、このような事例を多く目にします。

ホコリを寄せ付けやすい

プラスチックは静電気を帯びやすい性質を持ちます。そのため有機質素材に比べると、ホコリを寄せ付けてしまいやすいのも難点の一つです。

経年劣化によるトラブル

製品の品質にもよりますが、プラスチックはものによっては経年劣化が激しく、臭いやベタつきなどを生じることがあります。特にプラスチック劣化によるニオイが着物に写ってしまうのは問題です。

どんな材質も経年劣化はしますが、プラスチックは木製ダンスのように削り直して息を吹き返すことがないため、状態を良く確認する必要があります。

どうしてもプラケースで着物収納したい。対策は?

着物のプラスチックケース収納を行う場合、着物の種類を選んだり、換気を頻繁に行う、湿気とりを丁寧に行うといった対策があります。また高級着物には長期保管用の無酸素パックを使うのもおすすめです。

引き出しを開けて月1換気

着物をプラケース収納する場合、とにかく換気を徹底的に行うことが大切。引き出しタイプでクローゼットなどの前面においてあれば、引き出しを開けての換気が比較的行いやすいので、置き場所などにも配慮しましょう。

換気のタイミングは月1回以上が目安。湿度の少ない晴れた日に窓と引き出しを開けて、ボックスを積んでいる場合には階段のような形にしておきます。(すべての引き出しを全部引き出すと通気しません)時間は30分程度以上が理想的です。

虫干しは年3回

箱を開けるだけの換気では、畳んだ着物の内側にこもった湿気を追い出すことができません。そこで、箱の中のすべての着物を広げて干す「虫干し」というお手入れを定期的に行います。従来の桐タンス収納の場合ですと、虫干しは年に2回程度行えば十分ですが、プラスチック収納の場合には年3回は行うことをお勧めします。

文庫紙(タトウ紙)は必ず使う

プラスチックケースに畳んだ着物を直接しまうのはNGです。ホコリが貯まりやすいだけでなく、着物同士の隙間にも湿気が入り込みやすく、カビ・虫害のリスクがどんどん上がってしまいます。

ホコリと湿気の問題を少しでも改善するためにも、着物や帯は一枚ずつ文庫紙(タトウ紙)に包んだ状態で保管しましょう。和紙でできた文庫紙は、外からの湿気を吸い取り、ホコリやチリから着物を守る役割も果たしています。

吸湿剤を入れて定期交換

プラスチックケースで着物を収納する場合、必ず一緒に入れてほしいのが吸湿剤(湿気とり)です。換気するだけでは湿気が貯まるのに追いつかないので、吸湿剤の力で少しでも水分を取り去って貰います。吸湿剤は置き型タイプ・シートタイプがありますが、できれば両方入れておいた方が良いです。

お部屋の湿度の状態によりますが、プラスチックケースの中の吸湿剤は早くに水が貯まります。特に梅雨時などには早め早めに吸湿剤の状態をチェックして、新しいものに交換しましょう。

ポリ着物だけを保管する

プラスチックケースに入れる着物の種類を選ぶのも手です。例えばポリエステル着物は虫害(虫食い)の被害には遭いにくいですし、ご自宅で洗ってお世話ができる製品も多いので、比較的カビや変色などのトラブルも起きにくい傾向があります。また、普段着着物の方が頻繁に着ますから換気もしやすいですし、万一のトラブルに早く気づきやすいと言うメリットもあります。

着物無酸素パックで安心長期保管

無酸素パック
無酸素パックでタンスにしまう

留袖や振袖などの礼装用の着物をプラスチックケースで収納したい…これはなかなか難しいのですが、プラケースに入れる前に「無酸素パック」をすることをおすすめします。無酸素パックとは、特殊な袋に着物を入れてからガスを充填し、着物を長期保管できるようにする方法のこと。悉皆屋や着物クリーニング店などで行うサービスの一つです。

無酸素パックに入れておけば、酸素と触れ合うことがないため、長期保管中のカビ・黄変などのリスクを大幅に下げることができます。また虫の入り込みもないので安心です。あまり着ない着物をプラケースにしまっておきたい時に、最も安心度を高める収納方法と言えるでしょう。

着物をプロレベルで保管!

プラスチックケースから着物収納を切り替えるなら?

着物収納、プラスチックケースからそろそろ切り替えたほうが良いのかも…とお悩み中の人も多いのではないでしょうか。プラスチックケースから着物収納を変更するなら、有機素材の収納や専用袋などがおすすめ。また「お預かりサービス」を利用するのも手です。

桐箱で着物収納

ご自宅での着物収納で最も理想的なのは桐タンスなのですが、タンスだと今のライフスタイルやインテリアに合わないことが多いですよね。そこでクローゼットにも入れられる、着物専用の桐箱を使う方法をご提案します。桐の箱は呼吸をするように湿度調整をしますし、その香りは虫害を守る働きも果たしてくれます。

引き出しタイプになっている桐箱であれば、定期的な換気もしやすいです。これから本格的に着物を増やしていく予定があるなら、桐箱収納は特におすすめですよ。

布箱で着物収納

桐箱だと予算的に厳しい、サイズが収納場所に合わない…こんな時には、布でできた箱を使うのも手です。帆布(厚手のキャンバス地)などでできた箱は桐箱に比べてお手軽ですし、インテリアショップなどでも取り扱いが多い点が魅力と言えます。ただし密閉性は今ひとつなので、防虫剤はきちんと入れて、虫害対策はしっかり行うようにしましょう。

着物専用収納袋を使う

収納する着物の数が少ないなら、着物専用の収納袋を使うのも手です。収納袋は不織布などで作られていて、チリ・ホコリの蓄積を防いでくれます。また着物専用収納袋には防虫シートなども付属しているので、これ一つで収納対策ができるのも魅力です。

お預かりサービスを使う

「着物の収納って意外と難しい!」「定期的なお手入れが面倒」…こんな時には「衣類のお預かりサービス」を使ってみるのも手です。「着物専用のお預かりサービス」であれば、着物に最適な環境でプロが保管を代行してくれるので安心。特に結婚式などに着る礼装用の着物は着用する機会が少ないので、お預かりサービスを利用する人が増えています。

着物専用のお預かりサービスは、着物クリーニング店や悉皆屋(しっかいや ・着物のお手入れの総合的な専門店)などで行っていることが多いです。着物シミ抜き・クリーニング後のお預かり希望の増加で、当店『京都きものサロン創夢』も着物専門のお預かりサービスを開始しました。着物一枚からでもお預かりします。着物の収納や保管にお困りの時はお気軽にご相談ください。

おわりに

着物収納にプラスチックケースを使った結果、久しぶりに着物を出したときにカビや変色が起きていた…と言うケースは、特に最近では多く見られるようになっています。住環境の変化もありますが、やはり高温・高湿度な日々が増えてきているのも影響しているのでしょう。気温が厳しくなっているからこそ、着物の収納方にいっそう気を配る必要が出てきてしまいました。

プラスチックケースはお値段が安いのは良いのですが、万一のトラブルが起きた場合のリペア料金が高くついてしまうのが問題です。特に品質の良い着物については、長期保管に適した収納方法に切り替えるか、マメなお手入れで良い状態をキープしましょう。

また万一、着物のプラケース収納中に「着物がカビ臭い」「虫による穴が空いたようだ」「着物の色がおかしい」といったトラブルを発見した時には、できるだけ早く専門店に相談を。症状が軽い時に手当てした方が、リペア料金も抑えられます。当店でもカビ取りなどを受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

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