お宮参りの着物を七五三で使う5ステップ
お宮参りで赤ちゃんが使った初着(祝着)、一度使ったらそのまましまっておくだけでもったいない…と思っていませんか?実は初着(祝着)は、少しお直しをすると七五三の着物として使うことができるんです。
付け袖を外す
お宮参り用の着物には、インナーとして着る「長襦袢(ながじゅばん)」がありましたね。この襦袢の袖の中には「付け袖(つけそで)」という飾りの袖がついています。付け袖の色は男の場合には水色または白、女の子の場合は紅色か赤というのが一般的です。
この付け袖はお宮参りの時だけのものなので、七五三のときには外してしまいましょう。付け袖を外すことで着物の重量も軽くなり、気やすくなるのもメリットです。袖を外すのは意外とカンタン。お裁縫の基礎ができている人ならばできることでしょう。
袖の加工を行う(袖口・丸みつけ)
お宮参り用の着物は袖口が綴じられておらず、パッカリと開いた状態になっています。これに対して七五三の着物は袖口がある程度綴じられていて、さらに下の角には適度な丸みがついています。この「袖口を閉じる」「丸みをつける」という2つの加工を行わなくてはなりません。
袖口を綴る
- 袖口の空きは14センチ~15センチ。その部分にマチ針を打っておきます。
- 袖口下を「本ぐけ」でくけていきます。「本ぐけ」は和裁の縫い方のひとつ。要領は運針(本縫い)と同じですが、表・裏のどちらからも縫い目が見えないようにするやり方です。ただし本ぐけをする場合でも、糸の色は着物の色に合わせて変えるようにしましょう。
袖に丸みをつける
- 袖を中表にしておきます。
- 型紙を使い、チャコペンで袖裏に丸みのついた線を取っていきます。型紙は市販でも販売されていますし。近年では型紙ダウンロードができるお裁縫サイトも増えてきましたので、そちらを使ってもよいでしょう。チャコペンの色移りが不安な場合は、ヘラで抑えて印を付けておきます。
- マチ針をウチ、半返しで印の上を縫っていきます。
- 半返しの上5mm程度のラインを、2本どりでぐし縫いしていきます。
- 糸の始めと終わりの糸を引いてタックを作り、アイロンを当てて抑えていきます。
- 袖を表に返し、表側からもアイロンをあてて形を整えます。
縫い上げ(肩上げ・腰上げ)を行う
肩上げ(かたあげ)・腰上げ(こしあげ)とは、元々は大きな着物を子どもが着るために縮めるための方法です。七五三の際には「これから肩上げ・腰上げが取れるほど大きく成長するように」という願いを込めて、実際にはサイズ調整が必要なくても必ず少しだけ縫い上げを行います。
肩上げをする
- お子様の裄丈(ゆきたけ)を測定しましょう。着物の裄丈も測っておきます。「着物の裄丈-体の裄丈」の差が、肩上げをするサイズということになります。
- 肩幅のちょうど半分のところを肩上げ山にします。前身頃側は片山から脇に向かい、1センチ斜めになるように取っておきます。
- 上げ山を中心に肩上げ寸法の半分をつまみ、線を重ねて縫い合わせます。縫い合わせ線上にマチ針を打っておくと失敗しにくくなりますよ。後ろ側は片山から付け止まりにかけて1センチ引いた寸法に取ります。
腰上げをする
- 着物丈・着丈のサイズ測定を行います。着物丈は着物の襟後ろ側中心部から、裾までの長さ。着丈はお子様の首の後ろ(グリグリした部分)からまっすぐにおろして、くるぶしと同じ高さまでの長さを測定します。「着物丈-着丈」が、腰上げをする寸法になります。
- 腰上げ寸法の数値を2で割って、着物丈からその数値を引きます。さらにその数値を半分に割った数値が、肩から上げ山までの長さです。
- 上げ山を中心にして、腰上げ寸法の長さを半分ずつ取って、縫い合わせ線同士を重ねます。マチ針で縫い合わせ線を打って固定してから、二目落し縫いという表から見て糸が目立たない縫い方で縫っていきます。
- 上前の衿端は、着物を着た時に帯から出てよく見える箇所です。縫い合わせ箇所が飛び出てしまわないように、内側でタックを取って端をキレイに揃えるようにしてから縫います。
紐の付替えをする
お宮参りで使う初着・祝着は、赤ちゃんがそのまま着るのではなくママやおばあちゃまが肩にかけるようにして使うものです。その際に使いやすいように、初着では飾り紐は高い位置に付けられています。
紐の位置がそのままですと、七五三の際には着苦しく、見た目にも美しくありません。そのため、紐の付替えを行います。
- 現在ついている飾り紐を外します。
- だいたい3センチ~4センチ程度下の位置に飾り紐をつけ直します。
半衿を付ける
半衿(半襟・はんえり)とは、長襦袢の内側に付ける飾りの襟のこと。七五三の際には、女の子は刺繍入などの華やかな半衿をつけて首から胸元を美しく見せます。この半衿は着用のたびに手で縫い付けるものです。
- 半衿にはアイロンをかけて、シワを取り、形を整えておきます。
- 襦袢の衿の中心部から紐上までにかけての長さを測定します。半衿の中心から測定した数値と同じ長さを取っておき、残りはアイロンで抑えてしつけ縫いをかけておきます。
- 襦袢の襟幅を測定します。半衿の幅中心から測定した襟幅と同じ寸法を取って折り目を付け、アイロンでしっかり抑えておきます。
- 長襦袢の衿の中心と半襟の中心を合わせ、そこから両端に向かって順番にマチ針で固定していきます。少しでもズレると見た目によくないので、マチ針は仮止めでもキチンと固定しましょう。(仕上がりをより美しくしたい場合には、衿芯を長襦袢の内側に入れた上で半衿をつけます)
- 半衿の端から、本ぐけで縫い合わせをしていきます。縫い目の出ない縫い方ですが、やはり半衿の色味などを観ながら糸は選ぶようにしましょう。
お宮参り着物から七五三着物の加工は自分でできる?
お宮参りの初着・祝着を七五三で着る3歳向けの着物に加工するには、上記の5つのステップが必要です。さてこの加工、自分でできるのかどうか疑問に思う人も多いことでしょう。実際のところはどうなのでしょうか。
和裁経験or洋裁上級経験は必要
「お宮参り着物から七五三着物への加工は意外とカンタンですよ」と書いてあるブログもありますが…実際のところは、やはり和裁経験の有無、裁縫への慣れ方が大きいと言わざるをえません。
学校等で浴衣や着物を縫ったことがある人ならばある程度できるでしょう。また、洋裁でも、ふだんお洋服を作っている方、小物作り等で頻繁にお裁縫をされている方ならば大丈夫ではないでしょうか。「縫い目の出ない縫い方にしてください」と言われて「なるほど」とピンと来るかどうか、縫い方を自分で(本やネットを見ずに)選べるかどうか、というところを基準にしていただくと良いかもしれません。
ふだん縫い物はあまりしない、やってもミシンで縫うのがほとんど、という方の場合には残念ながら七五三着物への加工はおすすめしません。失敗してしまうと見た目に良くないだけでなく、最悪の場合には着物の価値を下げてしまうことにも繋がります。
加工だけを専門店に依頼できる
肩上げや縫い上げ、袖の丸みつけ等は、着物の加工を専門に行うお店でプロに縫ってもらうことができます。プロの職人さんですから仕上がりももちろんキレイですし、着たときの美しさ、着心地の良さにはやはり定評があります。
「縫い上げ等を自分で上手にできるか不安」「キレイな仕上がりにしたい」という場合には、着物加工の専門店に依頼をしてみましょう。
おわりに
お宮参り着物を七五三着物として活用する方法はいかがでしたか?当店『きもの創夢』でも、お宮参り着物から七五三着物への加工やお直し、シミ抜き等のトラブル対応を受け付けています。七五三着物でお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。