プロ指南!着物につく花粉の対処法
着物をお召しになって出かけた先で、着物に花粉のシミを作ってしまったという経験がある人も多いのではないでしょうか。生け花やパーティーのフラワーアレンジメントなどで飾られていた花は、ほんの少し触れただけでも取れない着物の花粉シミになってしまうものです。
着物の花粉シミにやってはいけないこと
着物についた花粉の対処法でまず知っておいてほしいのが、絶対にやってはいけないポイントです。「手で払う」と「濡らす・水洗い」・・・この二つは絶対に避けましょう!
着物の花粉汚れは手で払わない
そもそも花粉がなぜ落ちにくいのか?というと、虫の脚などに花粉をつけて運ばせるために、粘着力が高くなっているため。脂質やタンパク質をたっぷりと含み、ベタベタしているのです。そのため手やティッシュなどでパッパッと払った程度では、着物についた花粉は落ちません!シミの範囲をどんどん広げることになってしまいます。
× 手で払う
× その場でティッシュなどで拭く
外出先で着物に花粉がついた場合、残念ですがその場での対処は諦めてください。着物についた花粉を手で払ったり応急処置でなんとかしようとするほど、後の対処が大変になるのです。
着物の花粉汚れは濡らさない・水洗いしない
着物に花粉がついたときの対処法として最悪なのが「濡らす」です。おしぼりのような水分の多いタオル類で拭くことも絶対にNGだと考えた方が良いでしょう。
× おしぼりで拭く
× ウェットティッシュで拭く
× 水を垂らす・濡らす
× 水洗いする
花粉はごく細かく小さな粒子です。そのため、水分を含むと水と一緒に繊維の奥にどんどん入り込んでしまいます。さらに上でも解説した通り花粉は強い粘着力を持つため、奥に入り込んで繊維の一本一本に強く付着します。ガッチリと取れないシミに変化するわけです。
こうなってしまうと、専門店でも着物についた花粉の対処が難しくなってしまうこともあります。
アセトン・除光液を使うのもNG
アセトンや除光液などによるシミ抜きは、着物には行うことができません。例え花粉の汚れを落とせても、今度は着物の染料が破壊されてしまい、部分的な色抜けや変色が起きてしまう可能性の方が高いからです。
着物に花粉シミがついた時の対処法
では着物についた花粉に対処するにはどうしたら良いのでしょうか?ご家庭でできる対処法を3ステップでご紹介します。
【事前の注意】
着物の花粉シミの状態が次のような場合には、ご家庭での対処ではシミが落ちません。
× 花粉シミがいつ付いたかわからない(古いシミである)
× 花粉シミを濡らしたりオシボリで拭いたりした
× シミの半径が1センチ以上ある
× 刺繍などの特殊加工部分に花粉シミがある
× 粗い織物の着物である
上のような場合には自己処理をせず、すぐに専門店にシミ抜きを依頼しましょう。このページの次の項目で、着物に花粉シミがある場合のお店の選び方を解説しています。
1.乾燥させる
着物の花粉シミは、ついた当初は水分を含んでおり特にベタベタとしている状態です。そのため、まず乾燥させることが重要になります。
着物を風通しの良い所に干して、乾燥させましょう。この時、直射日光に当たらないようにすることも大切です。着物の繊維・染料の中には日光に弱いものも多く、日干しをすると色褪せの原因になります。
2.着物ブラシで払う
着物についた花粉を十分に乾燥させたら、布地の裏側から指ではじくようにトントンと叩いて、花粉が表面側に出てくるようにします。
さらに着物用ブラシで優しくブラッシングして、花粉を払い落としましょう。着物用ブラシがない場合、洋服用のブラシで毛質がとても柔らかいものであれば代用できます。毛が硬いものや、毛のないタイプの洋服ブラシなどは使用しないでください。摩擦によって着物の布の表面が毛羽立つと、元に戻らなくなります。
3.掃除機で吸い取る
着物ブラシでも落ちきらない花粉は、掃除機で吸い取る方法があります。ただし掃除機のノズルをそのまま着物に当てるのは絶対にNG!ノズルの汚れが着物につくだけでなく、吸い込む力が強すぎて、着物に取れないシワができてしまいます。
【掃除機で吸い取る手順】
- 掃除機ノズルにガーゼまたは柔らかい布を何枚かかぶせて、ヘアゴム・強い輪ゴムなどで括って固定させます。「弱」で試運転をして、ガーゼや布が動かないか確認します。
- 「弱」で掃除機を動かし、着物の花粉シミがある部分にノズルを当てて花粉を吸い取ります。ノズルを強く当てたり、擦ったりしないように注意しましょう。また掃除機は絶対に「中」「強」にはしないこと!着物の生地が傷んだら元には戻りません。
※※注意※※
なお花粉の種類・状態によっては、掃除機で吸い取っても汚れが取れないケースは多いです。花粉のシミは衣類のシミの中でもトップレベルで「落ちにくい汚れ」なのです。症状が改善しない場合には無理に自己処理を続けず、早めに専門店に相談しましょう。
着物の花粉シミには「プロのシミ抜き」が理想的
着物についた花粉の汚れは定着力・粘着力がとても強く、落ちにくいです。正直言って花粉のシミがご家庭での対処で落ち切るケースは少ないため、早めにプロに依頼するのが一番とも言えます。ただし着物をクリーニングに出す場合には、次のような点に注意が必要です。
丸洗いではなく「シミ抜き」を
着物についた花粉シミは、全体的なお手入れである「着物丸洗い」では落ちません。着物クリーニングの専門の職人さんが手作業で行う「シミ抜き」での対処が必要です。
状態によっては「染色補正」が必要
着物の色あいや花粉シミの状態によっては、より強い漂白で対処をしないといけないことも。この場合、着物を元の状態に近づけるために部分的な染め直しをしたり、柄を足してシミをカバーすることもあります。
このような対処を「染色補正」と呼びます。着物の花粉シミは手強いので、染色補正も視野に入れた対処法が検討できるお店を選んだ方が良いでしょう。
着物専門店への相談が安心
洋服メインのクリーニング店だと「着物の花粉シミは落ちない」とお断りされたり、汚れが落ちないまま戻ってきてしまうケースも見られています。できれば最初から着物のお手入れを専門に行うお店に相談した方が安心です。
おわりに
今回は着物につく花粉の汚れの対処法について解説しましたが、情報はお役に立ちそうですか?着物の花粉汚れは、上でも少し書きましたが本当にガンコで取りにくい汚れの一つです。
「汚れが取れないから」と無理にご自宅でのシミ抜きケアをした結果、ひどい毛羽立ちや変色を起こしてからお店に持ち込まれるケースも多く見られます。こうなってしまうと染め直しなどの対処が必要になってしまうので、余計にお金がかかってしまい、もったいないですよね。
着物についた花粉の汚れは「汚れがついた!!」と気づいた時に、早めにお店に相談するのが一番と言えます。
またこのような着物トラブルを防ぐために、ホームパーティーやお茶会などでは「花粉のつきやすい生花」を避ける配慮もしていきたいですね。特に百合の花粉は定着力が強くシミになりやすいので、雄蕊・雌蕊をカットした状態で扱ってほしいところです。