着物に付いたソースの汚れの落とし方は?2ステップでキレイに!
ウスターソース、中濃ソース、とんかつソース、お好みソース…いまやソースは醤油と同じくらいに定番の「食卓の調味料」のひとつと言えます。昭和レトロな洋食のリバイバルブームも着ており、お出かけ先でソースをかけたお料理をいただく機会が増えたという人も多いのではないでしょうか。
この「ソース」が着物に付いた場合の対処法は少々厄介です。インターネット上でも「ソースは水性!」「ソースは油溶性!」等の様々な情報が入り乱れていて、どのように着物のソース汚れをシミ抜きしたら良いのかお困りの方も少なくないことでしょう。
着物に付くソース汚れは水溶性?混合性?
着物のシミ抜きをする上で、大切なのが汚れの特性を確認することです。水溶性(水性)の汚れであれば水洗いが必要ですし、油溶性(油性)であれば一度油系の溶剤等で油汚れを分解する必要が出てきます。両方の性質を含んでいれば「混合性」です。さて、着物についたソースの汚れは「水溶性」か「油溶性」か、はたまた「混合性」なのでしょうか?
ソース単体の汚れは「水溶性」
食事用のソース(中濃ソースやとんかつソース等)自体の成分は、水溶性であると言えます。ソースは主にトマトやりんご、にんじん、たまねぎ等の果汁や野菜の汁で構成されており、ドレッシング等に比べれば油分の構成料は少なめだからです。したがって、「ソースだけ」を単体でこぼしたのであれば、水溶性汚れとして対処をすることができるでしょう。
食事の汚れは「混合性」の可能性が高い
ではソースのシミは水性汚れなのか?というと、そうとも言い切れません。外食等でのシミの場合、ソースをかけて食べるのは、ほとんどが「油を使った献立」だからです。
ソースを使った料理の例
- とんかつ
- エビフライ
- コロッケ
- お好み焼き
- たこ焼き 等
フライ系等の「揚げ物」にはもちろん、お好み焼きやたこ焼き等の「粉もの」にも油はたくさん使われています。これらの食品が着物に落ちて「シミ」となった場合、その汚れには「水性の汚れ(ソースの汚れ)」と「油性の汚れ(料理の汚れ)」が両方含まれている可能性が高いです。
つまり、この場合の汚れは水性汚れと油性汚れの両方の特性を持つ「混合性」であると考えた方が良いです。
混合性汚れに対して水性汚れのシミ抜きだけを行うと、後から「油汚れ」が残って油ジミが後から浮き出してきたり、数年経ってから変色シミとなる可能性が高くなります。
着物に付いたソース汚れの落とし方
それでは実際に、着物に付いたソースの汚れを「混合性汚れ」と想定してシミ抜きを行っていきましょう。ステップ1では油性の汚れを取り除き、ステップ2で水性汚れを落としていきます。
なお、ソース汚れには「水にしか溶けない水性の汚れ」が含まれるので、ご家庭のシミ抜きでは「水洗い」が絶対に必要になります。ベンジンのみでは汚れが落ちません。お手持ちの着物が「ご家庭での水洗い」に対応しているかどうか、事前に洗濯表示等で必ず確認をしておきましょう。
1.油溶性の汚れを落とす
まずは石油系の溶剤である「ベンジン」を使って、油の汚れを分解していきます。ベンジンは薬局やドラッグストアで数百円程度で購入することが可能です。
用意するもの
- ベンジン
- 柔らかい布
- 汚れても良いタオル
※衿元が崩れやすい着物の場合、安全ピン等で仮止めするか、ざっくりと縫い止めておきます。
※染料によってはベンジンで色落ち・変色が起こる可能性があります。事前に目立たない場所でテストすることをおすすめします。
※ベンジンは揮発性が高く、刺激の強い物質です。作業中はすべての窓を開けるか、換気扇を回してよく換気しましょう。
※ベンジンは引火性です。使用前には火器類をすべて止めておきましょう。
シミ抜きの手順
- 下にタオルを敷いてから、着物のシミの部分を広げておきます。
- 柔らかい布にベンジンをたっぷりと染み込ませておきます。
- 汚れの部分を布で軽くトントンと叩いて、汚れを下に落としていきます。
- 布やタオルは常にきれいな部分が当たるようにして、動かしながら作業を繰り返します。
- 十分に汚れが落ちたら、2.の作業に進みます。ベンジンが乾ききらないうちに水洗いの工程に入った方が、輪ジミになるのを防げます。
※強くこすったり叩いたりするのはNGです。表面が白っぽくなる「スレ」という現象が起こると、後から直せなくなってしまいます。
2.水溶性の汚れを落とす
油分汚れが落ちたら、ソースの汚れそのものとも言える水性汚れ(果汁や野菜の汁の汚れ)を洗い流していきます。
用意するもの
- 中性タイプの液体用洗濯洗剤(アクロン、エマール等のおしゃれ着用洗剤)
- 洗濯用ネット
- 洗面器等の容器
- 着物用ハンガー(物干しでも代用可)
- アイロン、アイロン台
シミ抜きの手順
- シミがある部分に35℃前後のぬるま湯をかけて濡らします。
- 洗面器等にぬるま湯を少し入れてから洗剤を適量たらし、泡立てるようにして薄めておきます。
- 薄めた洗剤をシミがある部分に少しずつ指でつけて、優しくなじませます。
- 2~3を繰り返し、汚れが落ちたらぬるま湯で十分にすすぎます。
- 着物を本畳みして、洗濯用ネットに入れます。
- バスタブや洗面ボウル等にぬるま湯を入れ、中性洗剤を適量入れてよく溶かします。
- 着物をネットごと、洗剤を入れたお湯に漬けこみます。上から両手で優しく押して、押し洗いをします。
- ぬるま湯を3回程度取り替えて、すすぎを行います。
- ネットのままで洗濯機で脱水を30秒程度行います。長く脱水すると衿の崩れやシワの原因になります。
- 1着物を専用ハンガーまたは物干しにかけて、シワをよく伸ばし、形を整えます。直射日光を避けた風通しの良い場所で、十分に自然乾燥させます。
- 素材に適した温度にアイロンを温めて、シワを伸ばし、形を整えます。
家で落とせない着物のソース汚れもある?
着物の種類や、ソースの汚れの状態によっては、ご家庭では着物のソース汚れが落とせないこともあります。
自分ではシミ抜きできない着物・シミの例
× 水洗いができない着物
× 時間が経ったソースのシミ
× 後から浮いてきた油シミ
× 変色しているソースのシミ
× 縫い目をまたいだソースのシミ
ソースのシミのような「野菜や果物の汁」を多く含むシミの場合、ご家庭で対処ができるのは「汚れが付いた当日~2日以内」が限度です。汚れが完全に乾いてしまうと果汁・野菜の汁が繊維に定着してしまい、染まったようなシミになってしまいます。
ソース汚れは着物に強い専門店へ
ソースの汚れは水溶性のシミなので、油系の溶剤を使う「ドライクリーニング(きもの丸洗い)」だけでは汚れを落としきることができません。着物に付いたソース音汚れをキチンと落とすには、シミの原因に合わせた手作業での「シミ抜き」が必要です。
着物の汚れを落とす専門の職人が居る悉皆屋(しっかいや:昔からある着物のお手入れの専門店)や、着物専門クリーニング店等、着物の扱いに強いお店に相談することをおすすめします。
おわりに
着物に付いたソースの汚れは、放っておくとどんどん落ちにくいシミになっていきます。あまりにも時間が経っていると、漂白をしてから染め直し等が必要になってしまうこともあるんです。
できるだけ早く対処をした方が、シミ抜きやクリーニングにかかる料金も安く抑えられます。洗えない着物等にソースのシミが付いた場合には、早めにお店に相談をしましょう。