着物の紅茶のシミは拭いて良い?応急処置とシミ抜きの正解は
ミルクティーやレモンティー……色も美しく香りの良い紅茶は、レストランやカフェでも定番人気の飲み物のひとつです。しかし紅茶を着物にこぼしてしまった場合には、なかなか手ごわいシミになってしまいます。
着物に紅茶のシミができた時には、どんな応急処置やシミ抜きを行えば良いのでしょうか。

紅茶シミの応急処置に濡れタオルはアリ?
ギュッと固く絞ってある冷たいタオルで、洗浄剤や香料を含まないものなら、小さいシミに使っても大丈夫です。ただし「強くシミを押さない」「ゴシゴシ拭かない」「濡らしすぎない」に気をつけましょう。
濡れタオルでトントンと軽く叩いてから、乾いたタオルで水分を十分に取っておきます。
おしぼりやウェットティッシュはNG
飲食店のおしぼりやウェットティッシュ等、アルコール類・洗浄剤・香料等を含む布や紙で着物の紅茶のシミを拭くのはNGです。
着物の布地を傷めたり、変色させることがあります。
シミを濡らしすぎないこと
「紅茶のシミの色を落とそう」と、タオルをゆるく絞ったり、直接水を含ませるのは止めましょう。
正絹(シルク)等の水濡れに弱い着物は、濡らすほどその部分が縮んで「輪染み」になってしまいます。
大きなシミは「吸い取るだけ」にする
直径1.5~2センチを越える大きな紅茶のシミができた場合は、乾いたハンカチやタオルで紅茶の水分を吸い取るだけにしましょう。
大きな紅茶のシミは、外出先では色を目立たなくすることが難しいです。ムリに濡れタオル等で応急処置をすると、かえってシミが広がってしまいます。
水分だけ取って、帰宅後にはすみやかにシミ抜きを行いましょう。
着物の紅茶のシミは応急処置だけで落ちる?
着物の紅茶のシミは、応急処置だけでは取りきれません。自宅または専門店でのキチンとした「シミ抜き」が必要です。
紅茶には「タンニン」や「シュウ酸カルシウム」等の成分が多く含まれています。タンニンは「タンニン染」という染料の元となるほどの定着力が強い成分で、一度繊維に定着して染まってしまうと、なかなか落とすことができません。
「応急処置でほとんど目立たなくなったから」とシミを放置すると、少しずつ酸化して変色した手強いシミが浮いてきてしまいます。
早めにきちんと対処をしておきましょう。
紅茶のシミは自分でシミ抜きできる?
「水洗いできる着物」で「付いたばかりの紅茶のシミ」であれば、ご家庭でのシミ抜きができます。
洗濯表示を確認しましょう
紅茶のシミは水性の汚れなので、ご家庭でのシミ抜きでは「水洗い」をする工程が必要になります。着物が水洗いできるかどうかを確認しましょう。
【水洗いできる着物の例】
- ポリエステルのの着物
- ウォッシャブルウールの単の着物 等
※特殊加工がある場合は水洗いできないこともあります
【水洗いできない着物の例】
- 正絹(シルク)の着物
- 先染め織物の着物
- 刺繍や特殊な加工がある着物
- 天然染料を使った色落ちしやすい着物 等
ご家庭で水洗いができない場合や、色落ち・色あせ等が不安な場合には、すみやかに専門店に「シミ抜き』を依頼しましょう。
紅茶のシミのシミ抜きの方法
着物に付いた紅茶のシミは、早い段階であれば中性洗剤を使ってシミ抜きすることができます。
用意するもの
- 洗濯用洗剤(液体型・中性タイプ)
- 洗濯ネット
- アイロン
- 着物専用ハンガー(または物干し)
シミ抜きの手順
- シミが付いた部分に少し水をかけます。
- 中性洗剤を少量シミにつけて、やさしくなじませ、振り洗いをします。
- シミが目立たなくなったら、洗面器等に水を入れて中性洗剤を適量溶かし、畳んだ着物を全体的に漬けます。
- 両手で上から軽く押して、全体を優しく押し洗いします。
- 水をとりかえて、2~3回すすぎます。
- 洗濯ネットに入れて、洗濯機で40秒程度、軽く脱水させます。
- 着物専用ハンガーまたは物干しに、形を整えて干し、直射日光が当たらない場所で自然乾燥させます。
- アイロンで仕上げます。
注意するポイント
※ミルクやクリームを入れた紅茶のシミの場合、洗濯に「お湯(ぬるま湯含む)を使うのはやめましょう。ミルクの油脂成分が固まって、取れないシミになります。
※一度乾いてしまった紅茶のシミ、付いてから数日以上が経過したシミは、ご自宅では取れません。早めに専門店にご相談ください。
紅茶のシミはクリーニングの丸洗いで落ちる?
着物についた紅茶のシミは、丸洗い(きもの丸洗い)だけでは落ちません。別途「シミ抜き」等ができるお店を選ぶことが大切です。
「丸洗い」とは洋服の「ドライクリーニング」と同じで、石油系の溶剤を使ったクリーニングの方法です。皮脂汚れ等の油溶性の汚れを落とすことはできますが、紅茶の汚れや汗の汚れ等、水性の汚れを落とすことは苦手としています。
着物の紅茶の汚れを落とす場合には、職人の手作業による「シミ抜き」や、程度によっては「洗い張り」等の専門的なお手入れが必要になります。
着物専門のお店を選びましょう
洋服クリーニングで着物も多少対応をしているお店、チェーン店でまとめて工場で作業をしているお店……紅茶のシミができた着物の場合、このようなお店にクリーニングを任せるのは避けたほうが良いです。
紅茶のシミの場合、汚れの程度によって必要になるお手入れ方法も変わってきます。最初に着物を検品するスタッフも含めて、着物に詳しい人がいる着物専門のお店を選んだほうが安心です。
古い紅茶のシミはクリーニングで落ちる?
時間が経って定着した紅茶のシミは、一般的な「シミ抜き」等だけでは落とすことができません。着物を甦らせるには、さらに専門的なお手入れが必要になります。
着物が染まっている場合は
紅茶のシミは、付いてから数日~一週間程度で繊維に定着し、落ちにくいシミになります。さらに時間が経つ毎にタンニンが繊維を染めてしまうので、「漂白」等の作業を行わなくてはなりません。
シミの定着度によっては、着物そのもの地色が変色していることもあります。このような場合には、染色を部分的に直したり、柄を足してシミをカバーする「染色補正」といった対応で着物を甦らせます。
「染色補正」等を行えるのは、染色補正士という専門技術を持った職人さんだけです。悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れ全般を扱う専門業)、またはキチンと職人さんと連携している着物クリーニングのお店に相談をしましょう。
おわりに
着物に付いた紅茶の汚れは、植物色素(タンニン)が完全に定着してしまわないうちに早く取り去ることが大切です。自宅で水洗いができる着物であっても、少し放っておくだけでご自宅では取れない手強いシミになってしまいます。
家でシミ抜きをする場合でも、専門店に着物を持ち込む場合でも、いずれにしても早めに対処をするようにしましょう。後回しにしてしまうと、それだけ着物をキレイに甦らせるためにお金や手間が余計にかかってしまいます。