着物に化粧水のシミがついたら?シミ抜き対処法を解説
洋服のお出かけの時だと、お出かけ先で化粧水等を軽くスプレーして肌を保湿するという方も多いのではないでしょうか。しかし着物のお出かけでこれをやってしまうと、衿や胸周り・袖口等に化粧水のシミができてしまいやすいです。
着物に化粧水のシミができてしまったら、どのように対処をすればよいのでしょうか。
着物の化粧水シミのシミ抜き方法
化粧水は80%~90%が水で構成されています。その他の成分にはついては製品差もありますが、一般的にはほぼ水溶性の成分が多く、原則として「水性の汚れ」であると言えます。
そのためご家庭でのお手入れでは、水性汚れを落とすためのシミ抜き方法を行います。
※この方法では汚れを落とすために、着物を水で濡らす・水洗いをする工程が必要になります。事前に着物が水洗い(手洗い)に対応しているか、洗濯表示やメーカー推奨を確認しましょう。一般的には洗える素材でも、着物では収縮やはげしい色落ちが起きることがありますのでご注意ください。
※シミの状態・化粧水の種類によっては、この方法では汚れが落ちない場合があります。このページの下の項目も確認してからシミ抜き作業を行いましょう。
用意するもの
- 中性タイプの洗濯洗剤:液体タイプ(エマール、アクロン等)を選びます。弱アルカリ性の洗剤や、蛍光剤入りの合成洗剤等は使用できません。
- 洗濯用ネット:畳んだままで平らに着物が入るサイズを選びます。100円均一ショップのものでもOKです。
- バスタオル2枚:色落ち防止のため、色が薄いものを選びます。
- 着物ハンガー:和装専用のタイプです。一本の棒のような形をしています。無い場合、物干し竿等でも代用可能。洋服用のハンガーは使えません。
- アイロン、アイロン台:スチーム・ドライが選べる一般的なタイプがおすすめです。
シミ抜きの手順
- 洗面ボウルやバスタブ等にぬるま湯をためて、中性洗剤を適量溶かし、洗剤液を作っておきます。
- 着物のシミがある部分にぬるま湯をかけてしっかりと濡らし、中性洗剤の原液を少量つけて、優しく撫でるように洗います。
- 着物を畳んでネットに入れ、1)の洗剤液の中に全体を漬けて、両手で優しく押し洗いします。
- 水を2回取り替えて、すすぎを行います。この時もやさしく両手で押すようにしましょう。シミがある部分は特にていねいにすすぎます。
- ネットのまま洗濯機に入れて、30秒程度脱水します。(シワになりやすい素材の場合、この工程は省略します。)
- バスタオル2枚で挟んで優しく抑え、水分を吸い取ります。
- 着物ハンガーか物干しにかけて干します。色落ち・色あせの原因になるので、直射日光が当たる場所は避けてください。
- 乾いたらシミの状態をよくチェックして、アイロンがけをして仕上げます。
注意するポイント
※シミがある部分を強く洗ったり、こすりあわせるのは止めましょう。「スレ」という色が白っぽくなる現象や、色落ち等の原因になります。
※長く脱水すると、型崩れや取れないシワの原因になります。30秒程度を目安にしましょう。
シミが取れない化粧水や着物もある?
着物の種類、シミの状態、また化粧水の種類などによっては、自分ではシミ抜きができない場合があります。
水洗いできない着物
化粧水のシミを落とすには、ご家庭でのお手入れの場合、必ず水洗いをしないといけません。水洗いに対応していない着物、手洗いの可否がわからない着物を無理にシミ抜きするのはやめましょう。
水シミになっている着物
正絹(シルク)等の水で縮みやすい着物の場合、化粧水で濡れた部分が縮んで、水シミ・輪ジミ(ウォータースポット)になっていることがあります。この「水シミ」はご家庭では直すことができません。
付いてから時間が経っているシミ
自分でシミ抜きのお手入れができるのは、付いた当日~翌日程度のシミまでです。化粧水の汚れが乾いて成分が定着してしまうと、ご家庭では落ちにくいシミになってしまいます。
付けてから数日以上が経過したシミや、いつ付けたかわからないシミ、後から浮いてきたシミ等は、ご家庭では対処できません。
香料が多い化粧水
人工香料・天然香料を問わず、香料を多く含む汚れが着物についた場合、家でそれを落とすのは難しいです。
果汁エキス・花エキス等を含む化粧水
果汁や花・植物等のエキスは色素成分が強いため、ご家庭ではシミを取りきることができません。無理に汚れを落とそうと漂白剤やアルコール等を使うと、着物自体を傷めてしまうことになります。
アルコールやその他成分による変色
化粧水のアルコール成分、ビタミン成分等で染料が変色している場合には、ご家庭では対処できません。
シミの状態や着物の種類で思い当たる点がある場合には、無理に自分でシミ抜きをせず、早めに専門店に相談しましょう。
着物を化粧水シミでクリーニングに出す時の注意点
着物に化粧水のシミがついてしまい、クリーニングに出す場合には、次の点に気をつけることが大切です。
丸洗いでは化粧水シミは落ちない
一般的なクリーニングのメニューである「丸洗い(きもの丸洗い)」では、化粧水のシミは落ちません。
丸洗いは石油系の溶剤を使った機械洗いなので、皮脂汚れやチリ・ホコリ等を落とすのは比較的得意ですが、化粧水等の水性の汚れを分解して落とすことができないのです。
洋服クリーニングをメインで行う店舗や、激安料金の着物クリーニング店等の場合、着物の洗い方がこの「丸洗い(機械洗い)」しか無いこともよくあります。十分にご注意ください。
「シミ抜き」「洗い張り」ができるお店を
化粧水等による水性の汚れが付着した場合には、職人の手作業による「シミ抜き」や、状態によっては「洗い張り」が必要になります。洗い張りとは着物を一度ほどいて反物の状態に戻し、水で丁寧に洗う伝統的な着物の洗浄方法です。
着物のお手入れを専門に行う悉皆屋(しっかいや)や、職人が在籍する着物クリーニング専門店であれば、シミ抜きや洗い張り等の専門的なメニューも扱えます。
着物を専門に扱うお店かどうか、またシミ抜きや洗い張りができるかどうかは、事前に確認しておくと良いでしょう。
化粧水シミは予防が大切!
水分の多い化粧水のシミは、一度作ると対処がなかなか大変です。着物を着て化粧水を扱う時には、次のような方法でシミを予防する対策も取りましょう。
襷で袖を上げる
トイレ等で肌のお手入れをする時には、襷(たすき)等を使って袖を上げましょう。袖口には意外と化粧水等がはねやすいものです。
胸周りは手ぬぐい等でカバー
できればスプレー方式の化粧水は避けるのが理想的。でもどうしても…という場合には、大きなバンダナや手ぬぐいなどで首~胸回りをしっかりと隠すようにしましょう。
おわりに
化粧水は製品によって成分の差が大きいです。特に最近はエッセンシャルオイル(精油成分)や、ホホバオイル等の落ちにくい成分を配合した製品も増えてきました。
「もしかしたらこのシミ、家では落ちにくいかも」と思った時には、無理に自己処理をしない方が無難。早めに専門店に相談しましょう。