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着物の洗い張りとは?やり方・料金相場・仕立て直しとの違いを徹底解説!

着物の「洗い張り」とは?

「大切にしまっていたお着物、久しぶりに出してみたら汚れが気になったり、サイズが合わなくて諦めてしまっていませんか?」

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。

私たちは数えきれないほどのお着物をお預かりし、一針一針、心を込めてお手入れをしてまいりました。

着物の洗濯には、そのまま洗う方法もありますが、一番きれいになるのが「洗い張り(あらいはり)」です。一度お着物をほどいて、元の「反物(たんもの)」の状態に戻してから、職人の手で天然の水と石けんを使い、隅々まで丁寧に水洗いをいたします。

手間はかかりますが、こうすることで生地は本来の輝きとハリを取り戻し、お嬢様やお孫様の寸法に合わせて新しく仕立て直すこともできるようになります。

「古いものだから」と諦める前に、どうぞ一度ご相談ください。先代から受け継いだ知恵と技術で、あなたの大切な一着が、また誰かの笑顔を彩るお手伝いをさせていただきます。

洗い張りが必要かも?セルフチェック洗い張りが必要かも?セルフチェック

洗い張りで解決できる6つのケース

洗い張りで解決できる6つのケース洗い張りで解決できる6つのケース
「私の着物、これって綺麗になるの?」そんな不安を抱えている方へ。洗い張りは、以下のような6つのケースで最大の効果を発揮します。

① 親戚や知人から譲り受けた(サイズ直し)

お母様や祖母様から譲り受けた大切な着物。しかし、自分には裄(ゆき)が短かったり、丈が合わなかったりすることがほとんどです。

洗い張りが必要な理由

着物を一度バラバラの布(反物)に戻すため、元の縫い跡を消し、生地の端まで目一杯使って「今のあなたにぴったりのサイズ」へ仕立て直すことができます。

② 10年以上、一度も袖を通さずタンスに眠っていた

「ずっと開けていないタンスがある…」というケースです。一見綺麗に見えても、絹の繊維は酸化が進み、生地が固くなっています。

洗い張りが必要な理由

古い糊(のり)を水で洗い流し、新しく糊を引き直すことで、生地の柔軟性と通気性が復活します。着物の「老化」を止めて若返らせる作業です。

③ 全体的に「古い家の匂い」や「カビ臭さ」がある

タンスを開けた瞬間のツンとする匂いや、カビ臭さは、丸洗い(ドライクリーニング)だけではなかなか取り切れません。

洗い張りが必要な理由

匂いの原因は繊維の奥に潜む菌や古い汚れです。たっぷりの水と職人の刷毛(はけ)さばきで、汚れを根本から洗い流し、清潔な状態にリセットします。

④ 生地を光にかざすと、うっすら黄色いシミ(黄変)がある

古いシミが酸化して黄色や茶色に変色した「黄変(おうへん)」は、通常のクリーニングでは落ちません。

洗い張りが必要な理由

生地を解くことで、縫い目のキワまで徹底的に洗うことができ、その後の「シミ抜き」の効果も格段に高まります。重症化する前に生地を丸ごと洗浄するのがベストです。

⑤ 衿や袖口に、丸洗いで落ちなかった汚れがある

「クリーニングに出したのに、衿元の汚れが残っている…」という経験はありませんか?

洗い張りが必要な理由

丸洗いは着物の形のまま洗うため、縫い代に溜まった汚れまでは書き出せません。洗い張りなら、パーツごとに分けて裏側までしっかり洗うため、蓄積した頑固な汚れもスッキリ落ちます。

⑥ これからも「一生もの」として、子供や孫に譲りたい

「自分だけではなく、次の世代にも着てほしい」という願い。それは、着物が持つ最大の魅力です。

洗い張りが必要な理由

洗い張りは、いわば着物の「定期点検」です。20年に一度ほど水を通してメンテナンスを挟むことで、絹の寿命は100年以上持たせることができます。

洗い張りの方法とは?プロの技で甦る6つのステップ

洗い張りは、着物を一度バラバラに解いて「反物(たんもの)」の状態に戻してから水洗いする、日本伝統の究極のメンテナンスです。熟練の職人が、生地の風合いを甦らせるために行う6つの工程をご紹介します。

STEP 1:解き(とき)

まずは着物の糸をすべて丁寧に取り除き、袖、身頃、衿などのパーツごとにバラバラに分解します。

ポイント: 生地に傷をつけないよう、すべて手作業で行われます。この時、古い糸のくずや縫い代に溜まったホコリもしっかり取り除きます。

STEP 2:端縫い(はぬい)

バラバラになったパーツを、ミシンなどで繋ぎ合わせて1本の長い布(約12メートル)に戻します。

ポイント: 1本の長い「反物」の状態に戻すことで、この後の洗浄や乾燥の工程で、生地に均一なテンション(張力)をかけることが可能になります。

STEP 3:洗い(あらい)

専用の洗剤とたっぷりの水を使い、職人が大きなブラシで汚れをかき出します。

ポイント: 丸洗い(ドライクリーニング)では落ちない「水溶性の汚れ(汗や古い糊)」を根こそぎ落とします。これにより、絹本来のしなやかさと通気性が復活します。

STEP 4:伸子張り(しんしばり)・乾燥

水洗いで縮んだ生地の幅を整えるため、竹製の細い棒(伸子)を生地の両端に刺して、左右にピンと張りながら乾燥させます。

ポイント: この工程が「洗い張り」の名前の由来です。生地を引っ張った状態で乾かすことで、シワが伸び、絹特有の光沢が戻ります。(現在は大型の機械乾燥を用いるケースも増えています)

STEP 5:湯のし(ゆのし)

乾燥した生地に高温の蒸気を当てながら、専用の機械で幅を一定に整え、シワを完全に取ります。

ポイント: 家庭のアイロンとは異なり、蒸気の力で繊維の奥までふっくらと立ち上がらせます。この工程を経て、新品のような美しい反物の状態に巻き上げられます。

STEP 6:検品

最後に、シミが残っていないか、生地に傷みがないかを厳格にチェックします。

ポイント: 洗い張りだけで落ちない頑固なシミがある場合は、ここで追加の「シミ抜き」を検討します。

【ここが重要!】洗い張りの後は「仕立て」が必要です
洗い張りが終わった状態は、まだ「1本の布(反物)」です。もう一度着物として着るためには、ここから改めて「仕立て(縫製)」を行う必要があります。

「以前よりサイズを大きくしたい」「今の体型にぴったり合わせたい」というご要望は、このタイミングで伝えるのがベストです!

「仕立て」は含まない?洗い張りの料金・値段を見る時の注意点

洗い張りの料金・値段を見る時の注意点洗い張りの料金・値段を見る時の注意点
洗い張りの料金を調べる際、最も注意すべきなのは「提示されている金額にどこまでの工程が含まれているか」という点です。ネットや店頭の価格表を見る際は、以下の3つのポイントを必ずチェックしましょう。

①「洗い張り代」=「洗うだけ」の料金

多くの場合、広告やメニューに載っている「洗い張り 10,000円〜」といった料金は、着物を解いて、洗い、反物の状態に戻すまでの作業代です。この状態では「ただの長い布」なので、そのままでは着ることができません。

②「仕立て直し代」が別途かかる

洗い張りをした後に、再び着物の形に縫い上げるには「仕立て代」が別途必要になります。

  • 洗い張り代: 約10,000円 〜 18,000円
  • 仕立て代: 約25,000円 〜 50,000円(手縫いかミシンか、振袖か小紋か等による)
  • 合計: 約35,000円 〜 70,000円程度

「洗って、また着られる状態にする」までには、この合計金額がかかることを念頭に置いておきましょう。

③隠れた追加費用「付属品」の交換

洗い張りを機に、古くなったパーツを新しく交換することが一般的です。これらも別途費用が発生するケースが多いです。

  • 胴裏(どううら)・八掛(はっかけ): 裏地が黄ばんでいる場合、せっかく表地を綺麗にするなら新調するのがおすすめです。
  • シミ抜き・カビ取り: 洗い張り(水洗い)だけでは落ちない頑固なシミがある場合、特殊なシミ抜き代が加算されます。
  • ガード加工: 綺麗になった状態を維持するために、撥水加工を追加する場合。

失敗しないための見積もりチェックリスト
依頼する前に、お店に以下の「3つの確認」をしてみてください。

  1. 「この見積もりは、再び着られる状態(仕立て込み)の金額ですか?」
  2. 「裏地などの付属品を新調する場合、いくらプラスになりますか?」
  3. 「洗い張りだけで落ちないシミがある場合、事前に連絡をもらえますか?」

プロのアドバイス
「意外と高いな」と感じるかもしれませんが、洗い張りと仕立て直しを同時に行うことは、「新品同様のマイサイズ着物を手に入れる」ことと同じ価値があります。古い着物を丸洗いで誤魔化し続けるよりも、一度リセットする方が、結果として着物を長持ちさせる一番の近道になります。

着物の洗い張りは自分でできる?

着物の洗い張りは、その工程のほとんどが手作業であり、ひとつひとつが手間のかかる仕事です。洗い張りの後に「再仕立て(仕立直し)」も行う場合、1枚あたりの工期は1ヶ月~2ヶ月程度はかかってしまいます。そのため洗い張りの料金は着物丸洗い(ドライクリーニング)に比べると、どうしても高くなりがち。「着物の洗い張りが群を抜いて安い業者」というのは、残念ながらあまりありません。

そのため、中には「クリーニング代を抑えるために、着物の洗い張りを自分でしたい」と考える方もいらっしゃるようです。確かに着物の洗い張りは、江戸時代等には各家庭での洗濯方法としても用いられるものでした。そのため洗い張り=絶対に自分ではできない、というものではないのですが… ご自宅での洗い張りは、あまりおすすめすることができません。それには以下のような理由があります。

和裁技術が無いと失敗する

着物の洗い張りをする上では、和裁の専門技術・知識は必須となります。「ほどいてつなぐくらいなら…」と無理に着物をほどいた結果着物を傷ませてしまったり、反物の状態に戻せず、端を傷ませた状態で諦めて持ち込んだら業者に断られてしまった…というケースも見られているようです。ちなみに「ほどいた着物」を持ち込んでも、その分のクリーニング料金を割安にする業者はほとんどありません。

生地を縮めてしまいやすい

洗い張りでのもっとも大きな失敗としては、「生地が縮んで戻らない」というものが挙げられます。一般家庭で洗える着物(ウォッシャブル着物)を除くと、一般的な着物の生地はいずれも非常に縮みやすいものばかりです。例えば綿・麻といった洋服では洗うことのある素材でも、織り方等によって7%~8%近くも縮んでしまうというケースは多々あります。8%といえば、1メートルに対して8センチ!この収縮によって柄が歪んでしまうことも多いのです。

プロによる洗い張りでは、このような生地の縮みが起こらないよう、繊細な作業が行われています。また「洗い」の工程で生まれた縮みを「張り」によって戻すといった技術も、プロならではのものです。

なお、ご家庭での洗濯で既に生地を縮ませてしまった場合、プロの洗い張り業者でも生地の状態を元に戻すことは非常に難しくなります。

汚れがキレイに落ちていない

せっかく一生懸命に着物を解いて洗っても、汚れが落ちきっていなかったら意味がありませんよね。洗い張りを行う専門店では、各素材に合わせた専用の洗剤やブラシが使われています。着物の汚れをしっかり落とすには、洗い張りの道具を揃えることがまず大切なんです。

ご家庭での一般的な洗剤等の場合、生地を傷ませる恐れがあるだけでなく、油溶性等のしつこい汚れが残ってしまう恐れも考えられます。「洗ったつもり」で残った汚れが、変色やカビ等の原因となってしまうこともあるのです。

安心してご相談いただくために。洗い張りの「よくあるご質問」

Q. 洗い張りをしたら、必ず「仕立て直し」が必要ですか?

A. 再び着るためには必要ですが、「反物のまま保管」も可能です。
洗い張りは着物をすべて解いて「布(反物)」の状態に戻す作業です。そのため、もう一度着るには縫い直す「仕立て直し」の工程が必要になります。
もし「今は着る予定がないけれど、汚れだけ落としておきたい」という場合は、洗い張り後の反物の状態で納品させていただき、数年後に必要になったタイミングでお仕立てをすることも可能です。

Q. 洗い張りをすることで、着物の生地が傷むことはありませんか?

A. むしろ逆です。職人が水を通すことで、絹の寿命は延びます。
絹は天然繊維ですので、古い糊(のり)や汚れが付着したままだと繊維が劣化し、生地が弱くなってしまいます。洗い張りで不純物を洗い流し、適切な糊を引いて張り直すことで、絹本来のしなやかさと強さが蘇ります。
※ただし、すでに生地が極端に弱っている(スレや破れがある)場合は、職人の判断で最適な方法をご提案いたします。

Q. 洗い張りをすると、どのくらい長持ちしますか?

A. 適切なお手入れを続ければ、100年以上持たせることも可能です。
着物は「三代受け継ぐもの」と言われます。20年〜30年に一度、洗い張りと仕立て直しを挟むことで、生地の酸化を防ぎ、お嬢様やお孫様の代まで美しく保つことができます。洗い張りは、着物にとっての「大規模な定期点検」のようなものです。

Q. 自分で着物をほどいて持ち込んだ方が、安くなりますか?

A.あまりおすすめいたしません。料金も基本的には変わりません。
着物をほどく際、生地を傷つけないための特別な技術が必要です。また、洗い張りには「端縫い(バラバラの布を1本に繋ぎ合わせる)」という工程があり、ご自身でほどかれた場合でもこの工程は省けません。
生地を傷めてしまうリスクを避けるためにも、解きの作業からプロにお任せいただくのが一番安心です。

Q. 汚れがひどい場合、洗い張りだけで全て綺麗になりますか?

A. 洗い張りで落ちない「古いシミ」は、追加のシミ抜きが必要です。
洗い張りは全体を水洗いして「地(じ)の汚れ」を落とすものですが、酸化して定着したシミや変色(黄変)は、別途「シミ抜き」の工程が必要になります。
当店では、洗い張りが終わった時点で一度検品を行い、追加のシミ抜きが必要な箇所があれば必ず事前にお客様にご相談・お見積りをさせていただきます。

おわりに

着物を反物の状態に戻す「洗い張り」では、再仕立てをする際にお着物を新たな形に甦らせることができるのが大きな魅力です。例えば、お母様から娘様に着物を譲る時に、娘様のお体に合わせたサイズに身丈や裄丈を変更する。「年齢に合わなくなったから」と感じていた着物を帯に仕立て直して、コーディネートのポイントにする。

昔の振袖を訪問着に直して、着用するシーンを増やす…こんな様々な方法で、昔の着物がまた活躍できるようになります。また袖を通してから一度も洗っていないお着物、丸洗いでは汚れが取り切れなかったお着物等があったら、一度「洗い張り」を試してみてはいかがでしょうか。

新品のようなツヤを取り戻した着物を見て、「もっと着物のオシャレを楽しもう!」という気持ちも強くなるはずですよ。

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