たとう紙の読み方は?文庫紙も同じ?よくある疑問Q&A
着物を包む紙である「たとう紙」。着物を日常的に着るようになったり、着物文化を知るようになったことで「タトウ紙」という単語を初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。着物をチリやホコリ・湿気などから守る、とても大切な存在です。
さてこの「たとう紙」、読み方はご存知ですか?また「たとう紙」に他にも名称があることは知っていましたか?着物文化やお手入れについての知識を深めるために、こんな情報も知っておきたいですね。
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たとう紙の読み方は「たとうし」?「たとうかみ」?
たとう紙の読み方についてですが、これは「たとうかみ」でも「たとうし」でも構いません。たとう紙は「畳紙」から生まれた言葉ですので「たたみかみ → たとうかみ」と変化していったと考えられますが、現在では「たとうし」という読み方も定着しており、いずれの言葉も着物業界では使われています。
地域によっては「たとうがみ」と音を濁らせることもあるようです。
ちなみに表記にもいろいろな書き方があります。
【たとう紙の書き方】
- たとう紙
- タトウ紙
- 多当紙(一般的には祝儀袋の意味ですが、着物用に使うこともあります)
- 畳紙(”たたみがみ”と読むと畳のための紙になるので注意しましょう)
たとう紙は平安時代には使われていることが判明しているほど、古く歴史のある言葉です。その分、日本のあちこちに言葉が伝来して読み方や名称・使用する漢字が変化したと考えられます。研究をなさる方は別ですが、「どれが正解なのか」と突き詰めるよりも「様々な読み方・表記がある」と捉え、対応していく方が良いでしょう。呉服屋さんや着物関係のお店で「たとうかみ」と言っても「たとうし」と言っても、十分に通じると思いますよ。
たとう・タトウだけのことも
たとう紙のことを省略して「たとう」「タトウ」とだけ呼ぶこともあります。インターネット上ですとあまり使われない用語ですが、実店舗があるお店やお茶・お花等の教室ではこのような使われ方もありますので、頭の隅に入れておくと良いですね。
たとう紙と「文庫紙」は同じですか?
はい、たとう紙と文庫紙(ぶんこがみ)は同じものです。文庫紙という名称は京都を中心に、主に関西・近畿地方で使われています。関東にある店舗やきもの学校でも、本店が京都や関西・近畿地方だと「文庫紙」をお使いになるところもあるようです。
ただ最近ではインターネットの発達で言葉が均一化されてきたので、混乱を避けるために「文庫紙・たとう紙」といったように、わかりやすく併記をするお店も増えてきました。
これも「たとう紙と文庫紙はどちらが正解か」といったものではありません。言葉や用語に地域差があるのだなと知っておけば十分です。
きもの文庫・着物文庫とも呼ぶ
たとう紙(文庫紙)のことを「着物文庫」「きもの文庫」と呼ぶこともあります。これは文庫紙から派生した呼び方ですね。
たとう紙と「四つ手」は同じですか?
はい「四つ手」もタトウ紙をあらわす言葉です。四ツ手はどちらかというと呉服屋さん等の着物を扱う「お店の人達」が使う、いわばプロ向けの業界用語といったところです。地域差があるので一概には言い切れませんが、一般的に「着物を購入する側」の方はあまりお使いにならないことが多いのではないでしょうか。
例えばお洋服を売るアパレル業界ですと、コートやスーツ・ワンピースのことを「重衣料」なんて呼び方をします。でもアパレルやファッション業界におつとめで無い方には聞き慣れない言葉でしょう。「四つ手」もそれと似たような感覚の用語といえるのではないでしょうか。
なぜ「四手」と呼ばれるようになったかには諸説ありますが、一説には「広げると四つの手があるように見えるから」というものも。たしかにタトウ紙を広げると、順番に畳む四枚の手があらわれますね。
「たとう紙」は衣裳敷だと言われたけど?
「たとう紙 = 衣裳敷」となるのは、主に京都での呼び方です。まず「衣裳敷とは何か」から説明していきますね。
衣裳敷とは
衣裳敷(いしょうじき)とは、厚みのある和紙でできているいわば「着替え用のシート」であり「衣替えに使う紙」のことです。畳の上や床の上で直接着物を広げると、大切な着物が擦れたり、ホコリが付いてしまう恐れがありますね。
衣裳敷を敷いておけば、スレや汚れ等を防ぎながら着付けをすることができます。また衣替えなどで着物を取り出す時にも下に衣裳敷をしいておけば、着物の汚れやダメージを防げるというわけです。現在でも和紙製の衣装時期は1,000円~2,000円前後(大きさにより異なる)で販売されています。長持ちしますし、ぜひ一枚お持ちになっておくことをおすすめします。
京都では上でも説明したように、たとう紙のことは文庫紙(きもの文庫)と呼びます。その代わりに…と言ってはなんですが、衣裳敷のことを「たとう紙」と呼ぶのです。しっかりとした厚みがありながらコンパクトにたためるのが衣裳敷の魅力ですから、確かに「畳紙」という名称は合っているようにも感じられます。
ただ京都での名称の違いを知らない人だと、京都で着物を包む紙のつもりで「タトウ紙をください」と言ったら衣裳敷が出てきてビックリ!ともなりかねませんね。特に京都でお買い物をされる場合や、京都を本流としたお茶・お花・踊り等のお習い事をする場合などには、名称の違いを知っておいた方が安心です。
タトウ紙って交換するものですか?
はい、たとう紙は定期的に交換するのが理想的です。いつまでも古いタトウ紙を使っているとカビ等のトラブルのリスクが高くなってしまいます。
タトウ紙はそもそも、チリやホコリなどから着物を守るだけでなく、周辺の湿気を吸い取って着物がカビないようにしたり、虫害に遭いにくいように保護する役目も担っています。
しかし紙も時間が経てば少しずつ劣化しますし、吸湿力は落ちていくものです。保管状態によってはタトウ紙自体がカビていたり、変色が始まっていることも。また紙魚(しみ)という紙をエサにする虫が集っていることもあります。
タトウ紙が劣化すればするほど、防虫・防カビ等の保護力は下がっていきます。着物をキレイに保管するためにも、2~3年に1回程度のペースでタトウ紙を交換するのが理想的です。
タトウ紙じゃなくて保管袋に入れてもいい?
最近では着物用の保管袋(不織布などでできたもの)が登場していますね。いくつかの条件が合えば、タトウ紙以外にこのような保管袋を使っても問題ありません。
- 着物専用・着物使用向けと明記されていること
- 着物を畳んだ状態で平らにまっすぐに入るサイズであること
- 吊り下げタイプではなく平置き型であること
なお不織布自体には吸湿効果は無いので、別途除湿剤等を入れる対策をしておきましょう。
また不織布も紙と同様に劣化していくものです。10年も20年も同じ不織布の保管袋を使っていくわけにはいきません。こちらも数年を目処に交換をしましょう。
おわりに
たとう紙の読み方や文庫紙等の別の呼称についてのQ&Aはお役に立ちましたか?着物の保管に昔から使われてきた「タトウ紙」は、今後も着物には欠かせないアイテムとして受け継がれていくことでしょう。
当店『京都 きもの創夢』は着物のクリーニングやお直しなど、お手入れ全般を扱う専門店ですが、このような着物にまつわるご質問やご相談等にも積極的に対応してまいります。着物について何かわからないことがあったら、お気軽にご相談ください!