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着物「丸洗い」と「洗い張り」8つの違いがすぐわかる!

着物手作業洗い

着物をクリーニングに出そうとしたら「丸洗い」と「洗い張り」という2種類の方法があって、どちらを選べば良いのかわからない…そんな人も多いのではないでしょうか?着物の「丸洗い」と「洗い張り」はどちらも着物の洗浄方法ですが、そこには大きな違いがあります。

着物を適切にキレイにするには、ピッタリのクリーニング方法を選ぶことが大切です!ですから着物の「丸洗い」と「洗い張り」の違いをキチンと知っておきましょう。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 京都きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。ここでは着物の「丸洗い」と「洗い張り」の違いを8つのポイントから解説していきます。またどちらを選べばよいのかの考え方も紹介しますよ。

着物の丸洗いと洗い張りの概略

まず着物のの丸洗いと洗い張りについて、それぞれの歴史と仕組みを簡単に説明します。

丸洗い

着物の丸洗い(まるあらい)は、昭和以降に一般的となった比較的新しい着物の洗浄方法です。洗浄には石油系の溶剤を使い、着物を丸ごと洗います。ざっくり言えば洋服の「ドライクリーニング」とほぼ同じ仕組みです。

洗い張り

着物の洗い張り(あらいはり)は、平安時代からあると言われる伝統的な着物の洗浄方法です。着物を反物の状態に戻してから水洗いし、ピンと張り直します。現在でも昔ながらの方法で、洗い張りの職人たちが手作業で仕事を行っています。

でもこの説明だけだと、丸洗いと洗い張りの何がどう違いがあるのか、ちょっとピンと来ないですよね。では8つの視点から、それぞれの違いを詳しくみていきましょう。

丸洗いと洗い張りは「着物をほどくか」が違う

丸洗いは着物をほどかない

着物の「丸洗い」は、名前のとおり、着物を丸のまま全体的に洗浄します。もちろん洗浄時に一枚ずつネットに入れるといった対応はしますが、それ以上の特別な工程はありません。一般的な洋服のクリーニングと同じです。

洗い張りは着物を布にする!?

ところが着物の「洗い張り」では、洗う前に一度着物を全部ほどいてしまいます。パーツごとにバラバラになった着物を縫い合わせて、反物(たんもの)、つまり一枚の布のような状態に戻し、そこから布を洗うのです。

「縮み」を戻すために必要な工程

なぜ着物をほどいてから洗わないといけないのか?その理由は、着物の「縮みやすさ」にあります。礼装用の着物等は正絹(シルク100%)ですから、水で洗うとガッツリと縮んでしまいます。着物を仕立てた状態で縮んでしまったら、元に戻すことはできません。

しかし布の状態で縮んだ場合であれば、「張り直し」という布を引き伸ばし繊維を元に戻す工程を加えることができます。着物の汚れをしっかり取り除きつつ、布の変質を戻せる洗浄方法なのです。

丸洗いと洗い張りは「水の使用」が違う

丸洗いはセキユ系クリーニング

着物の丸洗いでは、石油系のクリーニング溶剤を使って着物を洗います。使用するのは着物向けの特殊な溶剤ですが、仕組みは洋服の「ドライクリーニング」と同じです。洗濯表示で「ドライ・セキユ系」という表示を見たことがある人も居ることでしょう。あれと同じです。

つまり着物丸洗いでは、水は一切使っていないことになります。丸のままで水を使うと着物が縮んでしまうので、「ウェットクリーニング」はできないんです。

洗い張りは水洗い+水性洗剤

着物の洗い張りでは、水を使って反物の状態に戻した着物をていねいに洗っていきます。もちろん汚れの状態に合わせて、水性の洗浄剤(洗剤)やソープ等も使い、汚れを根本からスッキリと洗い上げていきます。

洗い張りでは上でも書いたように「縮んだ布を元に戻す」という工程があるので、縮みやすい正絹(シルク)でも水洗いをすることができるのです。

丸洗いと洗い張りは「落ちる汚れ」が違う

丸洗いで落ちるのは「軽い油性の汚れ」

着物丸洗いで使うセキユ系溶剤では、油溶性の汚れしか落とすことができません。汗の汚れや飲み物の汚れといった水性の汚れ、水分を含む混合性の汚れは落ちず、繊維に残ります。

また大きな洗濯機のようなものを使った機械洗浄なので、ピンポイントの酷い汚れを落とすのもニガテです。

丸洗いで落ちる汚れ

  • 付いたばかりの皮脂の汚れ
  • 狭い範囲のファンデ汚れ
  • チリ、ホコリ 等

基本的に「着用数回で付いた、日常的な軽い汚れ」を落とすための洗浄方法と言えます。例えば数回着用して、シーズンが終わり保管をする前に「丸洗い」で汚れを取っておく…といった使い方です。

洗い張りは「水性汚れ」や「カビ」「酷い汚れ」も落ちる

洗い張りでは、水性の汚れはもちろん、水と混じった混合性の汚れや、範囲の広いシミといった対応が難しい汚れも落とすことができます。またカビ除去のためにも洗い張りが有効です。

洗い張りで落ちる汚れ

  • 水性の汚れやシミ
  • 混合性の汚れやシミ
  • カビによる汚れ
  • その他範囲の広いシミ

基本的には「程度の酷い汚れ」「広範囲の汚れ」等、一般的な丸洗いやシミ抜き等ではリカバリーができない汚れに対応するのが洗い張りと言えます。日常的なお手入れというよりは、困った時の「特別な洗浄」ですね。

「着物の汚れが酷い」「部分的なシミ抜きでは対応できない」といった場合の「しっかりキレイにする洗い方」と覚えておくと良いでしょう。

丸洗いと洗い張りは「風合再生」が違う

丸洗いの仕上がり

「丸洗い」の仕上がりは、一般的な洋服のドライクリーニングと同じ位です。もちろん汚れが落ちているのでキレイになりますし、縫い目を見せないふんわりとしたプレスで仕上げますから、見た目はキレイ。でも「新品同様!」となるかどうかは、着物によっても違います。

洗い張りの仕上がり

着物の布には表面に薄く糊(のり)が引いてあります。洗い張りでは古くなった布を全部取り除いてキレイに洗い、さらに新たに糊をかけて張りなおします。

そのため絹の布地は、完全な新品のような光沢感やピンとした風合いを取り戻します。昔の着物が「新品同様」になるので驚かれる人も多いです。

丸洗いと洗い張りは「リフォーム」が違う

丸洗いは原則「お直し」は無し

きもの丸洗いは一般的なドライクリーニングと同じような扱いなので、原則としてはリフォーム(お直し)を一緒に行うことはありません。
(ただし希望がある場合、着丈などの一部だけのサイズ変更や、胴裏交換等の一部のリフォームができる専門業者もあります)

洗い張りなら「サイズ変更」や「リフォーム」可能

「洗い張り」では一度着物をほどいて布の状態に戻しているため、着物として着るためにはもう一度縫い直す作業(仕立直し)を行います。この時に、サイズ変更やその他のリフォームを行うことも可能です。

サイズ変更の例

  • 身丈を伸ばす
  • 身幅を縮める
  • 裄丈を伸ばす
  • 袖丈を縮める 等

着物の場合、サイズを小さくするだけでなく、大きく仕立て直すこともできます。これは着物が「縫込み(ぬいこみ)」という、残りの部分を余らせて仕立てる方法を取っているためです。

特に現代の女性は、昔の女性に比べて体が大きめです。昔の着物を改めて着る場合、現代の女性の体に合わせて仕立て直しをするケースが増えています。

リフォームの例

  • 裏地なしの単衣にする
  • 振袖の袖を落として訪問着にする
  • 留袖を比翼仕立てにする 等

「洗い張り」の後には布の段階から着物を仕立て直しますから、今までとは違う仕立ての方法を選ぶこともできます。例えば裏地の無い仕立てにしてスッキリと着ることもできますし、振袖の長い袖を切って訪問着に仕立て直す地域もあります。

丸洗いと洗い張りは「かかる時間」が違う

丸洗いの納期は原則10日~14日前後

「きもの丸洗い」にかかる時間は、基本的にコートやドレス等、おしゃれ着をドライクリーニングに出す場合と同程度と考えて良いでしょう。ただ洋服と違って着物を扱える工場が少ないので、洋服クリーニングに比べると移動等の時間もかかります。

きもの丸洗いの納期はお店によって違いますが、最速で10日~14前後と考えておくと良さそうです。

洗い張りの納期は3ヶ月~4ヶ月以上

「洗い張り」をした着物をもう一度着るには、「着物をほどく → 洗う → 布を張る → 着物を仕立て直す」という工程が必要になります。さらに、工程の多くが「手作業」です。メインの洗浄を機械で行う洗い張りとは大きな違いとなります。

また洗い張りをする職人さんと着物を縫う職人さんは別なので、それぞれの工房に着物を移動する時間もかかります。

「洗い張り」でキレイになった着物を着るには、最速でも2~3ヶ月以上は時間を見た方が良いでしょう。業者によっては注文が立て込んでおり、4ヶ月~6ヶ月以上となるケースも見られます。

【繁忙期にはご注意を】
着物のクリーニングやリフォームでは、「成人式」の前後がとても混み合います。成人式前の10月~12月、そして着用後の1月以降…この頃は、どこの業者さんもたくさんの注文を抱えている時期です。

そのため急に着物の依頼をしても、納期がとても先になってしまうことも。早め早めに依頼をすることが大切ですよ。

丸洗いと洗い張りは「クリーニング料金」が違う

きもの丸洗いの料金相場

きもの丸洗いの料金相場は、1枚あたり8,000円~15,000円前後(小袖の場合)となっています。おおむね、小袖 → 色無地 → 訪問着 → 留袖 → 振袖と、着物がフォーマルになったり布地の量が増えるほど料金は上がるシステムです。

中には一枚5,000円!といった激安店もありますが、あまり安すぎるお店には要注意です。キチンとしたお店の場合、機械洗浄をする前の下洗い(手作業による手首や衿などの汚れ落とし)を行ったり、一度に機械で洗う枚数を抑える等、着物のダメージを最小限にしつつ、キレイにするための工夫を行っています。

しかし激安店の場合だと、最初から機械に放り込んでおしまい!ということも。これでは汚れやすい部分の汚れがスッキリ落ちません。また、機械洗しかでいず、「シミ抜き」(手作業の部分洗い)ができない激安店も見られます。

きもの洗い張りの料金相場

着物の洗い張りの料金相場は、一枚あたり12,000円~20,000円前後(小袖の場合)となっています。丸洗いと同じく、洗い張りもフォーマル着物の方が料金が高くなります。

なおこの料金は、「着物をほどいて洗って張るまで」なので要注意。洗った布を再度着物として着る場合、別途「仕立て」の料金が必要になります。こちらも着物の種類で変動しますが、25,000円~50,000円位は見た方が良いでしょう。

つまり「洗い張り+再仕立て」の総額の料金相場は安くても40,000円前後、着物によっては70,000円位かかることもあります。

丸洗いと洗い張りは「できる職人と店」が違う

「丸洗い」は一般クリーニング店も受付

きもの丸洗いは、洋服を扱うクリーニング店舗でもメニューとして置いてあり、受付をしているところが多いです。とは言え、そのお店で着物を丸洗いするわけではなくて、着物専門の業者に回しているのですが… それでも、「きもの丸洗い」ができる業者(工場)はまだ結構多い、ということですね。

近所のお店で「きもの丸洗い」をオーダーすることもできますし、着物専門のお店を頼ることもできます。受け入れ先の幅が広いです。

「丸洗い」を頼めるお店

  • 洋服クリーニング店(チェーン系のお店)
  • 着物クリーニング店全般
  • 悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れ全般を扱う専門業者)
  • 着物販売店(仲介手数料あり)
  • 百貨店(仲介手数料あり)等

「洗い張り」の工房は数が少ない

現在、着物の「洗い張り」ができる工房の数は激減しています。一般的な洋服クリーニングのお店では、ほぼ「洗い張り」はオーダーできません。また、「着物クリーニング専門店」と銘打っていても、実際は着物丸洗いしかできなくて、洗い張りは受け付けていないというところもたくさんあります。

「洗い張り」を視野に入れてクリーニングを考えているならば、次のようなお店を選んだ方が良いでしょう。

「洗い張り」を頼めるお店

  • 悉皆屋(しっかいや:着物のクリーニングやリフォーム等のお手入れ全般を扱う専門業者)
  • 職人が居る着物クリーニング店(ホームページ等で洗い張りのメニューや価格が明示されているか要確認)
  • 着物販売店(仲介手数料あり)
  • 百貨店(仲介手数料あり)

販売店の「手数料」に注意

呉服店や百貨店等の「着物を売るお店」でも、洗い張り等の着物のお手入れの申し込みは受け付けています。ただし結局、その販売店から悉皆屋さんに外注をするので、その分の「手数料」がかかるのです。

高級百貨店等で「洗い張り」の相談をすると、上で案内した「洗い張り」の相場料金からプラス1万円以上!となってしまうことも。洗い張りのコストを抑えたい方は、お手入れ専門の業者(悉皆屋)に直接依頼をした方がオトクですよ。

おわりに

着物の「丸洗い」と「洗い張り」の違い、意外とたくさんありましたね!2つの違いをザックリとまとめると、次のようになります。

丸洗い:軽い汚れを落とすクリーニング。定期的なケアや、長期保管前のお手入れ等に向いています。
洗い張り:ひどい汚れや水性汚れ等、丸洗いや一般的なシミ抜きでは対応できない着物のための根本的なクリーニング。着物を再生させたい時や、子ども・孫に着物を受け継がせたい時等にも向いています。

どちらにも長所・短所がありますので、現在の着物の状態等を見ながら、最適なメニューをオーダーしていきましょう。

なお当店『きもの創夢』は着物お手入れ全般を扱う悉皆屋(しっかいや)なので、「丸洗い」も「洗い張り」も両方できます。「どちらにしたら良いのかわからない」というご相談ももちろんOK!最適なプランをご案内しますから、お気軽にご相談くださいね。

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