着物にガムが付いた時の応急処置・対処法を徹底解説!
チューインガムやオーラルケア用ガム等、様々なガムが出回っている昨今、「着物にガムが付いてしまった」というトラブルも時々見かけるようになっています。特に小さなお子さんが着る七五三用の着物等だと、お口が寂しい時に食べていたガムがベットリ……といったトラブルが多いようです。
ガムは粘着力が強いですし、一般的なシミとはシミ・汚れの対処法が違ってきます。着物に付いたガムの汚れの応急処置を間違えると、かえって取れにくい汚れになってしまうこともあるのです。正しい対処法を知って、大切な着物を守りましょう!
着物にガム!出先での応急処置はNG?
着物にガムがベットリとつくと、焦って早く取りたくなる人が多いはず。出先でティッシュで細かくガムを摘み取ったり、何度も応急処置を繰り返す…と答えたくなる人もいるのではないでしょうか。しかし着物に付いたガムの場合、「早くガムを取ろう」と頑張りすぎるのは実はNGなんです。
× 早くガムを取ろうとする
× 細かい部分まで取りきろうと爪を立てる
× ティッシュ等で叩いたり擦ったりする
ガムは温度によって粘度(ベタベタ度、柔らかさ)が変わります。お口の中に入って噛んでいる状態が一番柔らかく、着物に付いた時にはまだその柔らかさが残っている状態です。無理矢理に取ろうとすると繊維の中にガムが細かく残ってしまいやすいくなります。
特に水洗いができない正絹の着物(フォーマル着物)の場合、ここで対処を間違えると専門店でのシミ抜きが難しくなることもあるんです。
ガムの汚れに付いては、できるだけ「付けたまま」の状態で残っている方が後からの処理がしやすく理想的と言えます。大きく盛り上がっている部分が気になる場合には軽くティッシュで摘み取ってもOKですが、表面のガムを全部取ろうとしたり、応急処置で完全に処理をしようとはしない方が良いです。
着物に付いたガムは保冷剤で取れる?
着物にツイがガムは、温度を下げて「冷やす」ことで元の固形の状態に戻りやすくなります。ベタベタ感が減って繊維から剥がれやすくなるので、処理をするのがグッとラクになりますし、一時的にはガムのシミを目立たなくすることも可能です。
ただし、一般的な洋服に付いたガムのシミの対処法のように「氷」を当てるのは良くありません。着物の素材が正絹(シルク)等の場合だと、水濡れにとても弱いです。氷が溶けて着物が濡れれば、今度は「水シミ」ができる恐れがあります。そのため、ここでは水シミのトラブルを避けやすい「保冷剤」を使った方法をご案内します。
用意するもの
- 保冷剤(2~3個あると理想的)
- ガーゼ(薄いハンカチ等でもOK)
汚れ取りの手順
- 保冷剤をガーゼで包んでおきます。
- 包んでおいた保冷剤をガム汚れの部分に当てて、ガムを少しずつ冷やしていきます。
- 保冷剤が溶けて着物に水滴がつかないように、どんどん新しい保冷剤に取り替えながら処理をしていきます。
- ガムがカチカチに固まったら、優しく摘んでガムを取ります。
※凹凸の多い織物の場合、この方法ではガムの固形汚れが取り切れないことがあります。
なおこの方法で取れるのはガムの固形汚れ部分までです。唾液の汚れ、ガムの着色料等の汚れは残りますので、このまま放っておくと取れないシミになってしまいます。
あくまでも「一時的な対策」としておき、早めに下で案内するシミ抜き対策も行いましょう。
着物のガム汚れはオイルでシミ抜きできる?
洋服のガムのシミ・汚れの場合だと「クレンジングオイル」を使ったシミ抜き方法が定番人気です。確かにガムは油脂を加えることで粘着力がなくなり溶け出すので、汚れを残さずに取り除くことができます。
ただし着物の場合ですと、クレンジングオイルを使ったシミ抜きをできる着物にはいくつかの「条件」が付きます。
シミ抜きできる着物の条件
- 家で水洗い(洗濯機洗い)ができること
- ポリエステル等の化学繊維であること
- 洗濯機表示に「中性洗剤」の指定が無いこと
- 天然染料(藍染等)ではないこと
- 変色テストでの色落ち・変色が無いこと
上のすべての条件を満たしていることが重要です。しっかり洗える着物でないと、クレンジングオイルの油脂成分が残ってしまい、今度は「油ジミ」ができてしまいます。また木綿や麻等の天然繊維の着物や、藍染等の天然染料の場合、クレンジングオイルで変色・色落ちする可能性が高いです。
下に案内するシミ抜き方法については、お持ちの着物が条件を満たすかどうかよく確認をしてから、自己責任で処理をしてください。
用意するもの
- クレンジングオイル
- 台所用洗剤
- 洗濯用洗剤
- 洗濯ネット
- 着物用ハンガー(物干しでも代用可)
- アイロン、アイロン台(必要な場合)
※クレンジングオイルや台所用洗剤の使用で変色・褪色等が起きる可能性があります。事前に目立たない場所や共布等でテストをしておくことをおすすめします。
シミ抜きの手順
- 上の2.で案内した方法で、ガムの固形物の汚れを取り除いておきます。
- 乾いた状態のガムの汚れに、クレンジングオイルを少量たらしてから、優しくなじませます。(最初に濡らさないことが大切です)
- 十分に汚れをなじませて溶かしてから、35℃前後のぬるま湯で濡らし、オイルが白っぽくなるまで乳化させます。
- 台所用洗剤を少量垂らして、指で優しくなじませます。
- 35℃前後のぬるま湯で、十分にすすぎます。
- 着物を畳んで洗濯用ネットに入れ、「ソフトコース」「手洗いコース」等の優しい洗い方で全体を洗います。(衿等の型崩れをしやすい着物の場合には、事前に安全ピン等で衿を止めるか、ざっくりと縫い止めておきます)
- 着物用ハンガーにかけて、形をよく整えてシワを伸ばしておきます。直射日光を避け、風通しの良い場所で自然乾燥させます。
- シワ伸ばしが必要な場合には、素材に合わせた温度にあたためたアイロンで形を整えます。
着物のガムは専門店のシミ抜きで取れる
着物のガムの汚れをご家庭で完全に除去するには、3.で案内したように、かなり強い洗濯方法を行うしかありません。では「洗えない着物」はどうしたら良いのでしょう?
上でも少し解説しましたが、着物に付いたガムのシミには、口の中の「唾液」の汚れや「着色料」「香料」「糖」等の汚れが含まれています。ガムの固形物部分だけを取り除いただけで放置をすると、糖や香料等が少しずつ変化して手強いシミになったり、虫食い・カビ等の原因になってしまうのです。
難しいシミになってしまう前に、着物のガムの汚れは専門店で「シミ抜き」をしてもらうのが一番確実と言えます。ガムの汚れは油溶性なので、早い段階で「シミ抜き+ドライクリーニング」をすれば、意外とカンタンにキレイにすることができます。
この時、お店には「ガムの汚れ」ですと良い添えた方が、より適切な対処を取ってもらえますよ。
古いシミはNGのお店もある?
ガムのシミ・汚れでも、時間が経って変色をしたものだと「この汚れは落とせない」と断ってしまうお店も多いです。特に洋服クリーニングがメインのお店だと、着物のシミ抜きに対しては弱腰になることが多いです。
変色してしまった古いガムのシミの除去については、悉皆屋(しっかいや:着物の伝統的なお手入れの専門店)等、着物を専門に扱うクリーニングのお店に相談されることをおすすめします。
おわりに
着物に付いたガムの汚れは、一般的なシミとは異なり、焦って応急処置をすると「繊維のあちこちにガムの汚れが残った状態」になってしまうこともあります。
ガムの汚れに一切触らずに専門店に持ち込んだ方が、スムーズにキレイになった!ということも多いです。ベタベタ汚れが付くと焦ってしまいがちですが、お店でキチンと対処をすれば取れる汚れですから、どうぞ焦らずに対処してくださいね。