着物のシワ取り方法は?4つの対策を解説
着物についたシワ、どうしていますか?洋服のシワならスチームアイロンやシワ取り用の柔軟剤といった対策がありますが、着物のシワ対策はそれとはちょっと違います。いつもの感覚で着物のシワ取りをすると「大失敗!」ということもあるので、適した対策を知っておくことが大切です。
着物と洋服の「シワ」の違いを知っておこう
着物のシワ取り方法について知る前に、まず「着物と洋服ではシワに対する感覚が違う」ということを知っておきましょう。
畳んでいたクセは必ず付いているものです
着物は洋服と違って、必ず平らに畳んだ状態で保管します。ですからどの着物にも「折りたたんだクセ」が付いているのは当然です。これは着用前に吊るしたりして目立たなくさせますが、洋服のように「キッチリと折りクセを取り切る」という必要はありません。
ワイシャツのようにガンガンと頻繁にアイロンをあてて、せっかくの着物の風合いをダメにしてしまった…というケースも見られていますので、ご注意ください。
着付けの時のシワは繰り返し付きます
女性向けの着物では「おはしょり」を作りますから、その部分には着用後にシワが寄ります。しかし「おはしょり」部分のシワは、次回着用の時にもほぼ同じ部分にまた付きます。
多少はシワが残っていても問題ありません。むしろ「お尻」の周辺や「ヒザの裏」のシワ等に目を配りましょう。
着物シワ取りの基本は「陰干し+手アイロン」
- 畳んで保管していた着物のシワ(畳みクセ)を目立たなくする
- 一度きた着物をしまう
- 着付けの際のシワを目立たなくする
着物のシワ取りの基本は、意外と思われるかもしれませんがアイロンではなく「吊るすこと」です。着物は普段は吊るして保管しないため、吊るして数日置くだけでも繊維の状態が戻り、シワが目立たなくなります。
ここに「手アイロン」を加えると、よりシワが取りやすくなります。手アイロンとは手で丁寧にシワを伸ばしていく方法のこと。着物にダメージがつきにくいので、もっとも大切にしてほしいシワのばしの方法です。
手アイロンの方法
- 着物を平らに広げます。
- 着物と手の間にガーゼハンカチ等を置くか、綿手袋をつけます。
- シワが気になる部分を両手で優しく伸ばしていきます。
※着用後のシワがひどい場合は、陰干しの前によく手アイロンをしておきます。
※素手で着物に触れないようにしましょう。手垢が酸化シミの原因になります。
綿手袋は現在100円均一ショップでも売っています。手アイロンの他、着物の出し入れをする時に着物を守る便利なアイテムなので、ぜひ用意することをおすすめします。
陰干しの方法
- 着物専用のハンガーに着物をかける(洋服用は型崩れするのでNGです)
- 直射日光があたらない場所で着物を干す
- 着用前なら3日~5日程度、着用後も2~3日程度吊るしておく
※着用後のシワがひどい場合、扇風機やドライヤー等で一気に風をあてないこと。繊維がシワがついた状態で固まり、シワが取れにくくなります。
※礼服(留袖、振袖等)は一週間以上吊るしてしっかり伸ばすのがおすすめです。
着物シワ取りのレスキュー「シワ取りスプレー」
- 陰干しする時間が無かった時に
- アイロンやプレスをする時間が無い時に
- お尻やヒザ裏周辺等のシワがとても目立つ時に
着物専用のシワ取りスプレーは、繊維の縮みをゆるませて、シワを目立たなくさせる効果を持っています。毎回使うのはNGですが、「今すぐシワをなんとかしなくては」という時の対策には使えます。
着物専用のシワ取りースプレーにも色々ありますが、価格はだいたい1,500円~2,000円前後です。なお洋服用シワ取りスプレーは絶対に使わないでください。水分が含まれているので、正絹着物等は取れない輪ジミになります。
シワ取りスプレーの使い方
- 着物専用のハンガーに着物をかける
- シワが気になる部分にシワ取りスプレーする
- しっとりする程度までスプレー
- 布地を軽く引っ張っり、繊維の歪みを直す
- そのまま自然乾燥させる(風をあてないこと)
※ここで案内する方法は一般的なスプレーの利用法です。製品によっては使用方法が異なりますので、パッケージや説明書の使用法をよく読んで従いましょう。
注意点
- 縮緬、絞り等、凹凸のある素材にはシワ取りスプレーは利用できません。
- 刺繍や箔押し等の特殊加工がある部分にも使用不可です。
- 染料によっては輪ジミや色落ちの可能性があります。必ず目立たない箇所で事前テストを行いましょう。
- スプレーのかけすぎに注意しましょう。縮みや変質の原因になります。
シワ取りスプレーは『最後の手段』
シワ取りスプレーは便利なのでついつい使ってしまう人が多いですが、毎回のように使うのはおすすめできません。その部分にだけスプレー成分がたっぷりと吸着して後からシミが浮いてきたり、変色の原因になることがあります。毎回の使用は避けて、困った時だけに使うようにしましょう。
着物シワ取り上級者向け「自宅でアイロン」
- 着物のお手入れを練習したい
- 吊るすだけだとシワが取れない
着物のアイロンのかけ方は、一般的な洋服(綿のシャツ等)に比べるとやや難易度が高いです。普段着向けの着物等で十分に練習を積むようにしましょう。
着物のアイロンのかけ方
※アイロンがご自宅でかけられないタイプの着物もあります。下の注意点まですべて読んでから作業をしてください。
用意するもの
- アイロン
- アイロン台
- 霧吹き
- あて布(白の木綿さらし、または着物の共布)
- 着物専用ハンガー
アイロンの手順
- アイロンを素材に合わせた温度に温めます。特に化繊は高温に弱いので注意しましょう。アイロンはドライ設定にしておきます。
- 着物は裏返し、アイロン台にシワが気になる部分を広げます。
- あて布を全体的にかけます。
- 霧吹きで軽く水を吹きかけます。
- アイロンを素早く動かしながら当てていきます。ギュッと押し付けたり力を入れないのがポイントです。
- シワの状態をチェックしつつ、方向を変えながらアイロンをかけていきます。素早く、なめらかにアイロンを動かしましょう。
- シワが目立たなくなったら着物専用ハンガーにかけます。
- そのまま数日干しておきます。
※洋服用のアイロンスプレーは使用しないでください。
※霧吹きの水しぶきが着物に直接かからないように注意しましょう。
※アイロンを強く押すと風合いが失われます。
※アイロンは着物全体にかけず、シワが気になる部分のみにかけましょう。
アイロンをかけられない着物もある?
次のような着物はご家庭でアイロンをかけられません。
- 箔加工(金箔・銀箔)がある
- 縮緬(ちりめん)や絞りの着物である
- 刺繍、縫い付け等の特殊加工がある
- 素材が不明(アイロン温度がわからない)
正絹着物のアイロンに注意!
正絹(シルク)はとても水で縮みやすい素材です。霧吹きの水滴で水シミができたり、アイロンで失敗して変質(縮み)が起きた、縫い目の風合いをダメにした…という失敗例が多く見られます。
- 振袖、留袖等のフォーマル着物
- 大切な訪問着
- 喪服着物
- お借りになった着物
上のような正絹着物に「初めて着物にアイロンをかける人」がいきなりアイロンをかけない方が良いです。ハイブランドの高価なドレスに初心者がアイロンをあてるようなものです。普段着着物でまず練習しましょう。
スチーマーは使える?
「着物のシワ取りにスチーマー」という方が居ますが、これも着物に慣れた人のお手入れ方法です。着物に水分を含ませすぎたり熱しすぎて着物を縮ませてしまい、元に戻らない!という失敗例が多く見られます。
木綿きもの等の普段着着物であれば、スチーマーでもお手入れ可能でしょう。ただいきなり礼装用の着物にスチーマーをあてるのは厳禁です。
着物のシワをしっかり取るなら「専門店でプレス」
- しばらく着ないのでシワをしっかり取りたい
- 家でアイロンするのが不安
- 深いシワが付いてしまった
- 着物がしわくちゃになってしまった
- 全体的にシワを取りたい
着物のシワをきっちりと取り、なおかつフンワリと縫い目の目立たない「着物らしい風合い」を大切にしたい…そんな時にはやはり専門店でプレス(アイロン)をしてもらうのが一番です。
悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れの総合的な業者)や着物専門のクリーニング店の中には、アイロンのみ(プレスのみ)を受け付けてくれるところもたくさんあります。「着物の汚れは気にならないけど、シワが気になる」という時には、プレスをお願いしてみましょう。
おわりに
着物のシワ取りしようと自分でアイロンをかけたらテカテカになってしまった、縫い目が目立つようになってしまった…着物のシワ取り事例では、このような失敗例がとても多く見られます。
アイロン(熱加工)で失敗した布は、ひどいヤケドを負った状態と同じです。専門店でも残念ながら元に戻せない…というケースも多いので、十分に気をつけてお手入れをしてくださいね。
着物は「いきなりアイロン」より、吊るしたり手で伸ばしたりしながら、ゆっくりと形を整えていった方が失敗が少ないです。また襟元や肩周辺の型崩れや吊るしシワを防止するためにも、キチンと「着物専用のハンガー」で肩をまっすぐ整えるようにしましょう!