振袖の柄の意味や注意ポイント
成人式やお見合いなど、大切な時に着る着物である「振袖」。この振袖の柄にはさまざまなものがありますが、振袖の柄に意味が込められていることは知っていましたか?
振袖の柄にはおめでたい意味がある
振袖の柄には、大きく分けて「古典柄」と「モダン柄」の2種類があります。古典柄とは、古くは平安時代から受け継がれてきた、日本の伝統的な柄のことです。
この古典柄の振袖には、さまざまなおめでたい意味が込められています。振袖は元々、ご両親やご家族が娘様に贈るものでした。「晴れの日に着る大切な礼服だからこそ、たくさんの良い縁起を込めた服を着て、幸せになってほしい」・・・振袖には、そんな願いが込められているのです。
松の振袖は「長寿」「安寧」
松の木は移りゆく四季の中で、常に変わらぬ緑の葉を讃えている植物です。そのため日本では松は「長く不変であるものの象徴」として捉えられ、そこから転じて「長寿」のイメージが確立しました。
現在でも「健康に長生きをする」というイメージだけでなく「良い状態が長く続く」というおめでたい意味がよく知られており、お祝いの席でとても喜ばれる柄の一つとされています。
梅の振袖は「心願成就」「子孫繁栄」
梅の花は、まだ寒さ厳しい2月頃から花をつけるため「春を呼んでくる初春の花」とされています。寒さという厳しい逆境に負けない強さのある花であることから「心願成就の花」ともされ、こちらも大変におめでたい柄行です。
また「うめ」が「産む」という響きに近いことから、子孫繁栄のイメージも定着しました。この他、学業の神様である菅原道真公が梅を好んだことから、「学業成就」などの知的な意味合いが込められることもあります。
牡丹の振袖は「高貴」「富裕」
牡丹の花は古来では中国より伝えられ、身分の高い人達の間で好まれたことから「雅やかさ」「高貴の花」として定着しました。美しい人の例えに「座れば牡丹」といった言葉もありますが、ボタンの花には「貴族の姫様のように美しく高貴な人になってほしい」という意味合いも込められていたのでしょう。
また、その豪奢な大輪の花を咲かせるにあたって丁寧な手入れが必要であることから「富を必要とする花=富裕」という印象も定着しています。お金に困らず、豊かに暮らせますように・・・牡丹の花には、そんな願いも込められているのです。
扇の振袖は「明るい未来」「発展」
扇(おうぎ)・扇子(せんす)の面は、パタパタと広げると中心の要(かなめ)の部分から150°くらいの角度で広がっていく形をしていますよね。
中心から先が広がっていく様子は「末広がり(すえひろがり)」と呼ばれ、今から先、つまり未来が広がっている明るい様子を示すものとして古来より好まれてきました。現在でも結婚式に着用する留袖などには扇を帯に挿しておきますが、この「末広(すえひろ)」も明るい未来のための大事な縁起物です。
扇は未来の幸福、明るい明日を感じさせるものとして、ハレの日に大変喜ばれるおめでたい柄(吉祥紋様)の一つとされています。
亀甲模様の振袖は「長寿」や「長い幸福」
亀甲(きっこう)とは、正六角形をベースとした紋様のこと。亀(カメ)の甲羅のように見えるので「亀甲文様」と呼ばれます。シンプルな柄である分、亀甲文様単体の柄行という振袖は少なく、花などのその他の紋様と組み合わされることが多いです。
「鶴は千年、亀は万年」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?鶴も亀も、日本では古来より長生きの動物として知られてきました。一万年も生きるかどうかは怪しいところではありますが、「長く元気に生きる動物」である亀の甲羅を振袖に描くことで、いつまでも元気で健康でいてほしいという願いを込めていたのです。
また亀の甲羅の硬く変わらない様子から、亀甲には「喜ばしいこと、おめでたい状態が末長く続く」という意味も込められています。
御所車・花車の振袖は「高貴」「典雅」
御所車(ごしょくるま)とは、平安時代に貴族が乗っていた牛車(ぎっしゃ)という移動手段のこと。美しい花々をたっぷりと共に描いた御所車のことは「花車」とも呼ばれます。
御所車や花車などの身分の高い貴族が使うもの、身につける物などを描くことは「高貴さ」「雅やかさ」の証とされました。また「このような美しいものに囲まれた典雅な人生を送ってほしい」という意味も込められています。
貝桶の振袖は「良縁」「夫婦円満」
貝桶(かいおけ)とは、同じ形(絵)の貝を当てて遊ぶ「貝合わせ」の貝をしまっておくケースのことを言います。現代の私たちが遊ぶゲームで言えば「神経衰弱」みたいなものです。
ゲームに使う二枚貝はピッタリと形が合うことから、「夫婦が円満であること」を印象付けました。そこから転じて「良縁」を願う柄行としても知られています。お見合いや結婚式などにも喜ばれるおめでたい柄行というわけですね。
また貝合わせは平安時代の貴族の遊びから生まれたものであるため、前述した「御所車」と同様、貴族のような雅やかで美しい人生を送ってほしいという意味も込められています。
雪輪の振袖は「豊かさ」「繁栄」
「雪輪(ゆきわ)」とは、雪の結晶を紋様化させた柄行のことを言います。現在の雪の結晶というとリアルな雪柄ですが、よりデザイン的であり、正六角形を円形に近づけていくような独特の形です。
こちらも亀甲文様と同じく、雪輪のみで成立させる振袖は少なく、花などと組み合わせた柄行が多く見られます。
雪輪には雪ならではの白く清らかなイメージがあるとともに、雪解けの水による豊作をもたらすことから「豊穣」の証として好まれてきました。平安時代にも初春の雪が喜ばれるなど、雪は吉兆とされてきたのです。
なお「雪=冬の柄では」と心配される方も多いのですが、大丈夫!雪輪は抽象的にデザイン化された柄なので、四季を通じていつでも着ることができますよ。
四君子(竹・梅・蘭・菊)の振袖は「縁起の良さ」
四君子(しくんし)とは、竹・梅・蘭・菊の4つの植物を組み合わせた柄行のことを言います。
梅が大変におめでたい柄であることは、すでに上で述べましたね。さらに竹には、まっすぐにすくすく伸びる大らかさ、健康さがあります。さらに菊には「長寿」という意味があり、蘭は王となるものが好む香りであるとされています。
ちなみに「君子(くんし)」は古代中国で大変に人徳に優れた素晴らしい人を表す言葉です。竹・梅・蘭・菊が揃った姿は、そのような君子が四人揃ったように素晴らしいものであるとして「四君子」と名付けられたのです。
いずれも古代中国から伝わったこの縁起物が江戸時代頃に日本でも好まれるようになり、振袖などの晴れ着の柄にも使われるようになりました。一つだけでも縁起の良いものを四つも揃えた!というところが豪華でもあり、元々は文人などが好んだことからセンスの良さもアピールできる柄でもあります。
おわりに
今回は振袖の柄の意味について解説しましたが、お役に立ったでしょうか?振袖は独身女性が着る最高ランクの晴れ着であり、現在では成人式というイメージが強いですが、その他にもお見合いであったり、結婚式への参列であったりと、おめでたく改まった時に身につけるフォーマルな着物でもあります。
人生の「ここぞ!」という晴れ舞台や、キチンとするべきフォーマルな場であるからこそ、良い意味のある柄の振袖を身につけて、そのパワーも取り込みたいですね。