たとう紙の役割は?交換は必要?よくある疑問Q&A
着物を包む紙である「たとう紙」ですが、この紙の役割はどういうものか知っていますか?私達が何気なく使っているたとう紙には、実は様々な役割があるんです。
たとう紙は正しく使わないと役割を果たせませんし、ある程度の期間がすぎれば劣化して役割が果たしにくくなるので、タトウ紙の交換などの対応をすることも大切なんですよ。
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たとう紙の3つの役割
タトウ紙には「ホコリ防止」「カビ防止」「シワ防止」の3つの役割があります。それぞれの役割について、詳しく見ていきましょう。
着物をチリやホコリから守る
タンスやクローゼットの中に衣類を入れていても、それだけでチリやホコリから防げるわけではありません。特に長く保管する衣類には、空気中のチリ・ホコリ等が少しずつ降り積もってしまいます。
チリやホコリがたっぷりと溜まってしまうと、イエダニ等の温床になることも。また一度ホコリまみれになってしまった着物をご家庭でキレイにするのは難しいです。
長くキレイに着物を保管しておくためにも、着物類はきちんとタトウ紙に包むことが大切なのですね。
着物をカビから守る
着物の大敵のひとつが「カビ」です。日本は湿気が多い気候なので、タンスやクローゼットに入れている衣類がカビてしまうことがよくあります。特に正絹(シルク)やウール等の動物性製品はカビ発生しやすいとも言われています。
カビは一度発生してしまうと、プロの悉皆屋等で「カビ取り」をしない限りは除去することができません。状態の酷さによってはプロでもカビ取りできなくなることもあります。しっかりと防カビ対策をすることが大切なのです。
和紙でできている「タトウ紙」には、空間中の湿気を吸い取り、着物を湿気から守る役割があります。除湿剤等とあわせて使うことで、防カビ効果が高まるのです。
着物の寄りシワを防止する
着物は平らに畳んで保管する衣類です。しかし着物を何枚も重ねて畳んでおくと衣類がお互いにずれてしまい、思いもよらない部分にシワができてしまうことがあります。着物の種類によっては、ご家庭ではアイロンがかけられないことも。着物にはできるだけ「不要なシワを作らない」という保管が大切なのです。
上質な紙でできているタトウ紙は滑りにくく、着物が中で偏るのを防いでくれます。それだけ余分なシワができにくく、次に着用する時に美しい状態をキープできるというわけでです。
たとう紙を正しく使いましょう
たとう紙は、正しく使うことで初めてきちんと役割を果たすことができます。たとう紙で着物を保管する時には、次のような点に注意しましょう。
たとう紙一枚には着物一枚まで
たとう紙に入れられる着物の枚数は、原則として一枚までです。所持している枚数が少ない場合でも「着物一枚+長襦袢一枚」までが限度であると考えてください。
着物を2枚も3枚も重ねて同じタトウ紙に入れておくと、それだけ着物の防湿効果が薄れてしまいます。暖かく湿った空気が溜まってしまえば、カビだけでなく虫害(虫食い)のトラブルも起こりやすくなるのです。
また中で着物がヨレやすくなるので、不要なシワができてしまうことも。着物一枚にタトウ紙一枚を原則に、スッキリと保管するようにしましょう。
虫干しの際にたとう紙も干す
着物のお手入れの基本「虫干し(むしぼし)」は知っているという人も多いことでしょう。虫干しとは定期的に着物を日陰で干して、着物にこもった水分を飛ばす作業です。
さてこの時「タトウ紙」も一緒に干していますか?きものを保管している間、タトウ紙にはたくさんの湿気が含まれています。いくら着物をしっかり虫干ししても、しめったタトウ紙に入れ直していては意味がなくなってしまうんです。
虫干しの際にはタトウ紙も風通しの良い場所で広げて、しっかりと湿気を飛ばす習慣をつけましょうね。
たとう紙と着物のサイズを合わせる
たとう紙には様々なサイズがあります。たまにですが、次のような「サイズが合わないタトウ紙」を使っている失敗例も見られます。
【NG例】
- サイズが合わないタトウ紙のために着物を小さく折っている
- 携帯用の四つ折りタトウ紙(小さめサイズ)で着物を長期保管している
- 大きなタトウ紙に帯を何本も入れている
「小さなタトウ紙に入れるために着物を小さく折りたたむ」というのは良くありません。小さく折るほど余計な折ジワが増えるだけでなく、湿気が中にこもりやすくてカビ・虫害リスクが高まるからです。
また「大きければよいだろう」と帯類をまとめて保管するのも避けた方が良いでしょう。帯は特に湿気が入りやすいアイテムです。一度カビるとほどいて帯芯を取り除かなくてはなりません。きちんと合うサイズのタトウ紙に一枚ずつ保管することをおすすめします。
タトウ紙は交換する?交換時期は?
たとう紙の「防カビ」等の役割は、一定の吸湿力があって初めて発揮されます。しかし紙は少しずつ劣化して吸湿力が落ちていくので、いつまでも使い続けることはできません。
たとう紙がきちんと役割を果たせるように、定期的に交換することが大切なのです。
タトウ紙の交換は3年を目安に
タトウ紙の交換は、3~4年に一度が目安です。よく「購入した店舗のタトウ紙に入れたままになっている」という人がいますが、タトウ紙は10年も20年も使い続けるものではありません。
虫干しを行う時等を目安にして、交換をすると良いでしょう。交換時に着物の種類と一緒に使用開始年月等を書いておけば、次回のタトウ紙交換のための目安にもなりますね。
タトウ紙をすぐ交換した方が良いケース
次のような場合には、すぐにでもタトウ紙を交換しましょう。
タトウ紙が変色している
タトウ紙が茶色っぽく変色していたり、シミができている場合にはすぐにタトウ紙を交換してください。
シミがあるタトウ紙をそのまま使い続けていると、薄色の着物等に色移りをすることもあります。またシミ・変色があるということは、それだけ保管環境にも問題ありということ。除湿剤等の置き方や換気の頻度等も見直しましょう。
着物にカビが生えていた・着物がカビくさい
着物にカビの諸症状が観られた場合には、クローゼットやタンスの中に入っているすべてのタトウ紙を交換することを強くおすすめします。
カビ菌は非常に繁殖力が強いです。せっかく着物をクリーニングでカビ取りしても、カビが生えていた時のタトウ紙に戻しては意味がありません。
透明の窓の部分が劣化している
中身が見えるタイプのタトウ紙だと、透明のビニール紙等が貼り付けてありますね。時間が経つとこの透明部分が劣化して、接着剤等がダレてしまうことがあります。
窓の部分が劣化している場合にはすぐにタトウ紙を交換しましょう。
おわりに
最近では洋服がカジュアルになった分、タンスやクローゼットにカンタンに服をしまっておく人も増えたと思います。吊るしておくだけ、カゴ等に入れておくだけ…という人も多いのではないでしょうか。
しかし着物については、きちんとタトウ紙でしまっておき、定期的にお手入れをすることで初めて、美しい状態を長く保つことができるのです。着物のお手入れの手始めとして、ぜひタトウ紙の役割を知り、正しくタトウ紙を使っていきましょう。
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