「白カビ?」着物のカビの種類と見分け方「茶色?」

日本は湿度が高いので、食品も衣類もカビが生えやすいですよね。特に「着物」は、カビが発生しやすい物のひとつです。着物は布地にハリを出すための糊(のり)を使っているので、少しの湿気でも糊が腐食しやすくなっています。洋服に比べると、着物は遥かにカビが生えやすいのです。
ただ同じ「着物のカビ」と言っても、その種類や症状によって対策方法は少しずつ異なります。

着物のカビの種類と見分け方
着物の白いカビ
- 白いポツポツとした斑点がある
- 白いフワフワしたカビが表面に生えている
- うっすらとカビ臭い
着物に白い斑点(はんてん:まだらにポツポツとある点のこと)が見えたり、白いフワフワとしたカビがある……これは「白カビ」が生えた初期症状です。
地色の濃い着物の場合、この白カビの第一段階で気づくことができる人が多いですが、白い着物・薄色の着物だと、初期に気づくことができない場合もよくあります。
着物の白いカビの対処法
近々に着用する予定がある場合には、表面の白カビを屋外で布等を使って払い落とし、1週間~2週間以上は陰干しをしてカビの臭いを飛ばします。
着用後には、専門店で「カビ取り」を依頼しましょう。初期段階であれば、部分的なシミ抜きや、着物をほどかないオゾン消毒等で対処ができる場合も多いです。
なお「きもの丸洗い」だけではカビは根絶できません。後述する「着物のカビを見つけた時の注意点」も参照して、キチンとカビに対処できるお店を選びましょう。
着物の緑・青・黒のカビ
- 着物に黒いポツポツがある
- 着物に緑~青い斑点がある
- フワフワとはしていない
- 布の奥の方に黒く見えることもある
- 着物がカビ臭い
着物に緑~青、もしくは黒のポツッとしたシミが見えたら、「青カビ」または「黒カビ」の発生である可能性が非常に高いです。
青・黒のカビは当初ごく小さな斑点として現れます。地厚な布の場合、繊維の奥にうっすらと黒っぽいポツポツが見えることも。放っておくと徐々に斑点の数が増え、クッキリとしたシミになってしまいます。
着物の青カビ・黒カビの対処法
黒カビ・青カビについては、白カビのような自宅での応急処置やシミ抜きができません。カビを見つけ次第、早急に専門店に相談をしましょう。
カビの進行の程度によって、部分的なカビの除去や漂白・消毒で済む場合と、全体的な水洗い(洗い張り)が必要になる場合があります。
着物の黄色いカビ(シミ)
- 白・薄色の地色に黄色い斑点が見える
- 広範囲が黄色くなることもある
- カビの臭いがハッキリする
着物の黄色いシミは、元々白カビが生えていたものが、時間が経って酸化して黄色くなったものです。時間が経てば経つほど黄色い色は濃くなっていき、オレンジ~褐色へと変化していきます。
白カビが発生してから3年~5年程度が経過すると、カビは黄色いシミになります。濃いめの地色の着物等で白カビの初期症状(白いフワフワ)に気づかなかったり、陰干し等のお手入れをしていないと、この段階でカビに気づくケースも多いです。
黄色いシミ(カビ)の対処法
白カビが黄色以上に進行してしまった場合は、残念ですが家庭では一時的な応急処置等を行えません。
専門店で、着物をほどいて水洗いする「洗い張り(あらいはり)」等のお手入れをしてカビを除去するのが一般的です。ただ特殊な加工が多かったり、デリケートな作りになっている着物の場合には、ドライ洗いと手作業でのシミ抜き・漂白でカビを除去することもあります。
「洗い張り」を含む、幅広い着物のお手入れに対応可能なお店を選ぶことが大切です。
着物の茶色のカビ(シミ)
- 着物に茶色いシミがある
- 黒い着物(喪服着物)に茶色い斑点がある
- 着物の地色や柄が変色している
- カビのにおいはほとんどしないことも
着物に茶色いシミがある場合、白カビの酸化が進んでしまった状態であることが多いです。白カビが生えてからの時間は7年~10年程度が経過しており、カビ菌による臭いはほとんどしないこともあります。
カビの進行程度によっては、着物の地色や柄の染料が変色してしまっているケースもよく見られます。喪服着物が茶色く変色したり、紺色の着物がところどころ薄く色抜けする……といった症状も、カビの進行によるトラブルでは珍しくありません。
茶色いシミ(カビ)の対処法
茶色にまで進行したカビの場合、職人の手作業による漂白作業が必要になります。またカビの進行程度によっては着物自体が色抜け・変色を起こしているため「染色補正(せんしょくほせい)」が必要となるケースも多いです。
染色補正とは、カビの進行や漂白作業で色が抜けたところに色を補足して、元通りに復元する技術のことです。一般的なクリーニング店では取り扱わない高度な技術ですが、着物を専門に扱う悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れの専門業のこと)等ではプロの染色補正士を擁しており、このような難しい着物のカビのトラブルにも対処できます。
着物の焦げ茶色のカビ(シミ)
- 着物に焦げたようなシミがある
- 20年以上前の古い着物である
- 着物に変色がある
黄色や茶色になった白カビがさらに進行して20年以上が経過すると、焼け焦げたような濃い茶色のシミになってしまいます。こうなると染料があちこち破壊されているので、着物の変色も激しいです。
また布地の繊維の脆化(もろくなること・弱くなること)が始まっています。脆化は布だけでなく糸にも起こるので、ほとんど着ていない着物でも破れる・ほつれるといったトラブルが増えます。
焦げ茶色のシミ(カビ)の対処法
焦げ茶色まで白カビが進行してしまうと、洗い張りはもちろん、漂白や染色補正といった対処もできなくなる可能性が考えられます。
洗う・漂白するといった作業に弱った布地が耐えることができず、布地が破れるといった恐れがあるためです。
とは言え進行程度によってカビ対処ができるかどうかは変わります。幅広い対処ができる専門店に着物の現物を見てもらって、相談することをおすすめします。
着物のカビを見つけた時の注意点
「着物にカビが生えているかも」という症状を見つけたら、カビの種類や程度によらず、次のような点に気をつけましょう。
着物・和装品は全部確認を
一枚の着物にカビの症状を見つけたら、そのタンスやクローゼットの中にはたくさんのカビ菌がはびこっている可能性が高いです。すべての着物や和装品を出して、カビの症状が出ていないか、明るい場所でしっかり確認してみましょう。
カビの着物をそのままにしない
カビ菌は放っておくとどんどん増えて、症状を広げていきます。また上でも解説したように、白カビの進行が進むと、着物自体が壊れるほどの被害になってしまいます。着物のカビを見つけたら、そのままにせずに早めに対処をしましょう。
丸洗いはNG!手作業ができる専門店へ
着物のカビは「きもの丸洗い」では落とすことができません。きもの丸洗いとは、一般的なドライクリーニングと同じで、有機溶剤を使って機械で全体を洗うクリーニングの方法です。
着物のカビを落とすには、手作業での消毒や漂白、洗い張り(水洗い)等の作業が必要になります。また程度によっては、染色補正が必要になることも。次のようなキチンと対処ができる専門店を選びましょう。
- 悉皆屋(しっかいや):着物のお手入れを全般的に扱う専門店です。最近では宅配型等で、全国対応ができるお店も増えています。
- 着物専門のクリーニング店:店舗によっては機械洗いにしか対応しないことがあるので、メニューをよく確認しましょう。
- 呉服屋・百貨店(購入店舗):着物を買ったお店に相談すれば、悉皆屋に紹介してくれます。ただし紹介手数料がかかることもあるので、注意してください。
年に2回は陰干しでお手入れを
着物のカビを防止するには、湿気を繊維に溜め込まないことが大切です。年に2回は着物を陰干しして風にあて、カビ菌が生息しにくい環境を作りましょう。
おわりに
着物に生えたカビの種類や見分け方の情報はお役に立ちそうでしょうか?カビ菌の進行の程度やカビの種類で様々な症状がありますが、いずれの場合も同じなのは、「少しでも早く専門店に持っていった方が、対処が軽く済む」ということです。
カビの臭いがする、白っぽい小さな斑点が見られる等、ちょっと気になる点があったら早めに専門店に相談をしましょう!