浴衣にカビ!応急処置は?家で落ちる?対処法をプロが解説
浴衣は基本的に夏に着るもの。秋にしまった浴衣を次の夏に出すまで、取り出さずにしまっておきっぱなしだった…という人も多いのではないでしょうか。保管の状態によっては、長期保管していた浴衣にカビが生えてしまっていることもあります。
このような浴衣のカビ、すぐに来たい場合の応急処置を知らない人も居るはず。また、家で浴衣のカビは取れるのか知りたい!という人もいることでしょう。
浴衣のカビの応急処置
「近々に着る予定がある浴衣にカビを見つけてしまった」「浴衣がなんだかカビ臭い」こんな時には、とりあえずの応急処置をしてみましょう。
浴衣の表面のカビを取る
浴衣に生えているカビがフワフワとした「白カビ」の場合には、比較的カンタンに応急処置ができます。
用意するもの
- 捨てても良い布(起毛の布だと理想的)
- マスク(吸い込み防止)
カビを取る手順
- 庭やベランダなど、屋外の物干しに浴衣をかけます。
- カビがある部分を布で優しく払います。
※どうしても室内でしか作業ができない場合には、すべての窓を開けて、長時間換気をしましょう。また浴衣の下に新聞紙等を敷いて、作業後にはすぐに破棄してください。カビ菌が飛び散ってしまいます。
※ブラシ等で細かくカビを取るのはおすすめできません。カビを繊維の奥に押し込んでしまうことが多いです。
※着物が濃色の場合や、白カビの範囲が非常に広い場合には、応急処置では対処がしきれないことがあります。
※濡れタオル等は絶対に使わないでください。
なお青カビ・黒カビによるシミについては、残念ながら応急処置を行うことができません。
浴衣のカビくさい匂いを取る
浴衣のカビくさい匂いが気になる場合には、早めに消臭対策をしましょう。
1.陰干しする
もっともシンプルなのは陰干しをして、繊維の奥の匂いを飛ばす方法です。特に長期間保管されていた浴衣は、繊維の中に空気がこもっていて、カビ臭い匂いが目立ちやすくなっています。
風にあてて布の内側までしっかりと乾かすことで、こもった匂いの分子が外に出て、カビ臭い匂いが目立たたくなります。
用意するもの
- 着物用ハンガー(物干しでも代用できます)
- 扇風機(室内で干す場合)
陰干しする手順
- 浴衣をハンガーにかけるか、物干しにかけて形を整えます。
- 直射日光を避けて、風通しの良い場所で干し続けます。
- 室内の場合には、窓を開け、扇風機やサーキュレーター等で風をあてます。
- 一週間~二週間程度、陰干しを続けます。屋外で干す場合は、夜間は取り込んでください。
2.置型消臭剤を使う
一時的な消臭対策ですが、陰干しでも取り切れないカビ臭い匂いが目立たなくなりやすい方法です。
用意するもの
- 置型タイプの消臭剤(無香料のもの)
- ビニール袋(ゴミ袋等、大きなサイズのもの)
消臭対策の手順
- 浴衣は畳んで、ビニール袋に平らに入れます。
- 袋の端に消臭剤を置いておきます。浴衣に直接触れないように気をつけましょう。
- 袋の口をしめて、一週間程度放置します。
- 匂いが目立たなくなったら、湿気取りのために数日は陰干ししておきます。
こんな浴衣の消臭対策はNG!
浴衣のカビくさい匂いが気になっても、次のような応急処置は行わないようにしましょう。浴衣をダメにしてしまうこともあります。
消臭スプレーを使う
リセッシュ・ファブリーズ等を使うのはNGです。成分によって、浴衣の変色や色あせ等が起きる可能性があります。
スチームアイロンを使う
スチームアイロンの蒸気で、カビ菌に「暖かな熱」と「水分」が与えられてしまい、カビの活動が活発になってしまうリスクがあります。
浴衣のカビの対処法
上でご紹介した浴衣のカビの応急処置は、あくまでも次の着用に間に合わせるための「臨時の対策」です。カビ菌を除去できているわけではありません。
応急処置のままで浴衣をまた保管すると、カビの被害がどんどん酷くなってしまいます。早めに本格的な対策を取りましょう。
自分ではカビは落とせないの?
結論から言うと、浴衣のカビは自分で処理することができません。これには2つの理由があります。
カビ菌を死滅させられない
ご家庭で行う洗濯(水洗いやアイロン等)では、カビ菌を死滅させることはできません。表面のカビを取ることができても、カビ菌の「根」は繊維の奥にまではびこってしまっています。
食べ物のシミ等であれば「ベンジン」で汚れを分解することもできますし、お茶の汚れ等ならば洗えばシミ抜きができますよね。しかしカビ菌によるシミ等に対しては、ご家庭の「シミ抜き」では効果が出ないのです。
浴衣の強力な漂白ができない
浴衣のカビは、放置していると酸化して、徐々に「オレンジ」や「茶色」のシミになっていきます。これを「黄変(おうへん)」と言います。黄変によるシミや黒カビ等は、強力な漂白処理をして落とすしかありません。
しかし、ご家庭で黄変やカビを落とせるような強力な漂白処理をすれば、浴衣の染料までもが抜けたり、流れ出してしまいます。「カビは取れたけれど、色が抜けて変色した」これでは意味がありませんよね。
浴衣のカビはドライクリーニングだけじゃダメ?
一般的な浴衣のクリーニングですと、ご近所のクリーニング店等で「ドライクリーニング」を依頼する…という人も多いのではないでしょうか。しかし、ドライクリーニングだけではカビは落とすことができません。
一般的なドライクリーニングでは、浴衣を石油系の溶剤で機械洗浄します。皮脂汚れ等の油溶性汚れはこの方法で落とすことができますが、カビは死滅しませんし、カビによるシミも落とすことはできないのです。
「クリーニングに出した浴衣なのに、翌年になったらまたカビ臭くなった」「キレイにしたはずなのに、あとから茶色いシミになってしまった」…このようなトラブルも珍しくありません。
着物専門店での「カビ取り」を
浴衣にカビの症状を見つけた場合には、早めに着物のクリーニングやお手入れを行う専門店で「カビ取り」をしてもらいましょう。
「カビ取り」では、職人が手作業でひとつひとつカビによるシミを取り除き、オゾン消毒等を行ってカビ菌を死滅させます。カビ臭い匂い等も気にならなくなり、スッキリと気持ちよく浴衣を着ることができます。
「カビ取り」は、悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れ全般を扱う専門的な業者のこと)や、職人さんがきちんと居る着物専門クリーニングのお店等であれば、受付をしてくれるでしょう。
もちろん当店『京都きもの創夢』でも浴衣のカビ症状のトラブルのご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。
おわりに
浴衣のカビの応急処置方法やカビ取りの対処法等についての情報はお役に立ちそうでしょうか?
浴衣はカビ以外にも、保管から取り出した時に思わぬトラブルが起きていることがあります。夏が始まる頃には早めにクローゼットやタンスから浴衣を出して、一度トラブルが起きていないかしっかり確認をしておくと良いですよ。
また湿気の多い日本では、カビの予防対策が何より大切です!タンスの除湿剤はしっかり置く、定期的に陰干しをする等、カビを防ぐ対策も忘れないようにしましょう。