長襦袢の読み方・呼び方・種類・選び方を徹底解説!
着物を着る場合、絶対に必要になるのが「長襦袢(ながじゅばん)」です。長襦袢とは、着物の中に着るインナーのようなもの。でも完全に中に着込むだけでなく、袖や裾からチラリと見せる「オシャレのためのインナー」でもあります。
フォーマル着物の場合だと、着物の種類や着る場面で、合わせる長襦袢が決まっていることも!自分で好きなように長襦袢を選べばいいというわけではないんですね。これから長襦袢を選ぶ方、長襦袢を増やしていこうと思う人は、長襦袢についての知識をしっかり持っておいた方が安心です。
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長襦袢とは?読み方・呼び方
長襦袢の読み方は「ながじゅばん」です。「襦袢(じゅばん)」というのが和装の下着(インナー)を表す言葉で、一番内側に着るのが「肌襦袢(はだじゅばん)」その上に着るのが「長襦袢」となります。
長襦袢は「長ジバン」とも読む?
長襦袢の呼び方は「ながじゅばん」ですが「長ジバン」でも間違いではありません。もともと、着物のインナーは「ジバン」と呼ばれていたと考えられています。その当て字として「襦袢」という字が選ばれ、漢字の読み方に引っ張られて「じゅばん」に変化していった…と言うのが一説です。
「ながじゅばん」「ながじばん」どちらでも正解と考えて良いでしょう。地方によって「じゅばん」「ジバン」のどちらで読む人が多いかも違います。
長襦袢の役割は?肌襦袢との違い
襦袢にも「肌襦袢」「長襦袢」があるので、初めての人だと混乱してしまいますよね。肌襦袢と長襦袢の違い、それぞれの役割を知っておきましょう。ちなみに着る順番は次のようになります。
襦袢と着物の順番
(内側) 肌襦袢 長襦袢 長着(着物)(外側)
肌襦袢(はだじゅばん)
もっとも内側に着る襦袢です。上下に分かれたセパレートタイプのものや、ワンピースのようなタイプ等もあります。袖は半袖程度の長さになっています。色は白やピンク等。肌当たりの良い素材が多いです。
肌襦袢の役割は「汗取りインナー」
肌襦袢の役割は、完全に「下着・肌着」です。着物を着用すると、着物の中で汗をかき、汗・皮脂がたまりますよね。肌襦袢はそれらを吸い取る役目を果たしています。
長襦袢(ながじゅばん)
肌襦袢の上に着る襦袢が「長襦袢」です。さらにその上から着物を重ねます。長さはお対丈(自分の身長丈に合わせた長さのもの)または「おはしょり」を作るタイプもあります。色、素材はバリエーションが豊かです。
【長襦袢の役割は「汚れ防止」+「調整」+「チラ見せ」】
肌襦袢が完全な「下着」なのに対して、長襦袢には3つの役割があります。
1)汚れの防止
長襦袢には腕や足等が着物に直接触れることを防ぎ、着物の内側が汚れることを防止する役割があります。これは一般的な下着と同じですね。
2)着物との調整
長襦袢は下着と着物の間に挟まって、摩擦等を適切に調節する役割も持っています。着物と長襦袢が合っていると、着崩れもしにくいですし、着物で歩く時の裾捌き(すそさばき)も良くなります。
スムーズに動けて歩きやすく、着物の痛みも防げるのです。
3)オシャレのためのチラ見せ
最後に忘れてはいけないのが、オシャレのための「チラ見せ」です。
長襦袢は、着物の「袖口(そでぐち)」部分からどのような長襦袢を身に着けているのかが見えます。また歩いている時等には、「裾(すそ)」のあわせの部分から長襦袢がちらりと見える仕組みです。
着物の世界では、長襦袢の「色」や「柄」「素材」等を変えて、ひとつの着物を様々にコーディネートさせてオシャレを楽しんできました。またフォーマルなシーンでは、どのような長襦袢を合わせるかが「マナー」にもなっています。
さらに長襦袢には「半衿(はんえり)」を付けます。これもまた、様々な色や種類があり、着物のコーディネートの幅を広げてくれます。
長襦袢の種類
一口に「長襦袢」といっても、様々な種類があります。
関東仕立て・関西仕立て
地方によって長襦袢の仕立て方が異なります。
関東仕立ての長襦袢
長襦袢の「おくみ(前身頃に縫い付ける細長い布)」の部分がなく、半幅の地衿が裾まで続くのが特徴です。胸がふくよかな方、体がしっかりされている方だと、関東仕立てが小さく感じられ、着にくいことがあります。
関西仕立ての長襦袢
長襦袢にも「おくみ」の部分があり、身幅は関東仕立てに比べて広め。前合わせにゆとりが出るので、幅広い体型の方に似合います。昔の女性は小さかったのですが、現代では細くても体がしっかりした方が多いので、関西仕立てにする人が多いです。
衿の形と仕立て方
長襦袢には上でも解説したように「半衿(はんえり)」を縫い付けますが、襦袢の仕立て方で半衿の付け方も違ってきます。
広衿
衿幅が約10センチ程度と、着物の衿のように広く取られた仕立て方です。半襟は着る時に背中心は半分に、先に行くに従って1/3程度に縫い閉じ、その内側に衿芯を通します。
縫う工程がやや難しいですが、厚みのある衿元になるのがポイント。最近では少数派になっているのですが、名古屋を中心に、東海地方では根強い人気があります。東海で着物を習った着付け教室等でも、広衿推奨ということが多いようです。
バチ衿
衿幅は「広衿」に比べて狭く、5~6センチ程度。半衿をそのまま縫い付け、衿芯を通し入れるだけで済みます。半衿の工程が少なくラクなので便利。全国的に見ると、バチ衿の方が一般的となりつつあります。
裏地の有無
単衣の長襦袢
単衣(ひとえ)の長襦袢とは、表地だけで、一枚仕立てで作られた長襦袢です。現代では最も一般的なスタイルとなっています。
袷仕立ての長襦袢
裏地がしっかりあるタイプの長襦袢です。裏地があるので、あたたかいのが特徴。ただ最近では空調設備がしっかりあるので、裏地付きの長襦袢を着る方は少なめです。
胴抜き長襦袢・うそつき長襦袢
胴抜き長襦袢(うそつき長襦袢)とは、スリップタイプ等の肌襦袢に、半衿・襦袢袖・衣紋抜きをくっつけたスタイルの長襦袢です。つまり「肌襦袢と長襦袢を一枚にしてしまった」というわけですね。
インナーの量を減らすことで体感温度を下げ、快適に着られるのがメリット。夏に着物を着用する時に向いています。ただ簡易用なので、礼装等には不向き。
長襦袢の素材
正絹(綸子・縮緬等)の長襦袢
正絹(しょうけん)とは、シルク100%ということ。正絹の着物を着る時には、同じく正絹の長襦袢を合わせた方が静電気が起きにくく、動きやすいです。
また着物からチラリと見える時にも上品な光沢感があり、フォーマルな雰囲気を高めてくれます。
ただし原則として家では洗えません。またシルクは虫害(虫食い)等も起きやすいので、キチンとメンテナンスすることが大切です。
化学繊維の長襦袢
長襦袢に使われる化学繊維としては、ポリエステルや東レのシルック(R)等があります。基本的にお手入れがしやすいのがポイントです。
東レのシルック(R)等は化繊でも高級素材で、見た目には正絹のようであるため、礼装にも合わせやすいのが魅力となっています。反対にポリエステル100%の長襦袢は基本的に安価ですが、蒸れやすく暑い、動きにくいといったデメリットもあります。
ウールの長襦袢
ウール(羊毛)を使った長襦袢です。モスリン、メリンス等と呼ばれることもあります。体温を逃さずに温めてくれるので、寒い時期の着用に向いています。
特に街着で長く外を歩く時等、防寒対策をしっかりしたい時には便利。ただし礼装(フォーマル)には使えません。
木綿の長襦袢
木綿(コットン)の長襦袢は、サラリとした風合いが魅力です。手ぬぐいのような柔らかな生地の長襦袢は肌当たりが良く、肌が弱い人や汗でかぶれやすい人にも好まれています。
ただしウールと同じくカジュアル用なので、礼装には使うことができません。
、
絽の長襦袢
絽(ろ)とは織物の種類のひとつで、風通しの良い透き通った織物のことを言います。涼しく着用できるので、6月~9月の初夏から晩夏までに向いた長襦袢です。
次に紹介する「紗(しゃ)」に比べてより品が良いものなので、夏の改まったお出かけ等にも向いています。
紗・麻の長襦袢
紗(しゃ)や麻の長襦袢は、さらに風通しが良く、7~8月の盛夏の着用に向いています。ただ絽(ろ)に比べると少しカジュアルな印象。洒脱な街着等としても人気です。
長襦袢の色・柄による違い
白い長襦袢
白い長襦袢は、もっとも格調の高い色合わせです。結婚式・葬儀・各の高い式典等、改まったフォーマルな場では必ず長襦袢の色は「白」と決まっています。
色物の長襦袢
色物(いろもの)とは、白以外の色がある長襦袢のことを言います。クリーム色や薄ピンク等の淡い色合いのことは、さらに「薄色」とまとめられます。
薄色の長襦袢は上品な印象なので、略礼装に合わせることが可能。お宮参りの訪問着や、主役として出席する成人式等であれば、薄色を使うことができます。
濃い色になるほどカジュアルになるので注意。赤や紺、紫、濃いピンク等のハッキリした色は「街着」であり、式典等には身につけることができません。
柄物の長襦袢
原則として、柄が入っていて見た目に目立つほどカジュアルな印象になります。柄物長襦袢は、おしゃれ着という扱いです。フォーマル向けの場合は無地を選びます。
長襦袢の選び方
1)どのシーンで着ますか?
長襦袢を選ぶ場合、まず何が重要かと言うと「フォーマルで着るのか、遊び着として着るのか」という点です。
- 結婚式や式典等、フォーマルな場を含む場で着物を着たい
- 長襦袢をこれから買う(一枚しか持つ予定がない)
上のような場合であれば、フォーマル(最も格の高い正装)に使える長襦袢が絶対!ということになります。
【純フォーマル対応の長襦袢】
- 色は白
- 素材は正絹が理想的
- サイズ感が重要(特に袖の長さ、丈の長さ)
反対に「遊び着・街着」として長襦袢を買う場合には、色物・柄物でも構いませんし、素材も気軽に選べます。選び方がまったく違うので、まず「用途」をしっかり定めることが大切です。
2)どの地域で着ますか?(仕立て編)
長襦袢は関西仕立てで良いのか、広衿なのかバチ衿で良いのか…
これは地域によってかなり扱いが違います。
例えば関東圏だと「長襦袢は基本はバチ衿、フォーマルでもバチ衿OK」といった扱いが多いですが、これが別地域になると「フォーマルは絶対に広衿」といったところもあるのです。
特に礼装(結婚式の黒留袖、喪服着物)などのための長襦袢を選ぶ場合には、地域の皆様の習慣を確認することをオススメします。地域の習慣はどうでもいい!ということであれば、半衿のつけ外しがラクなのはバチ衿です。
3)サイズは大丈夫ですか?
長襦袢は体に合ったサイズで、なおかつ着物に合ったサイズであることが重要です。
着丈(きたけ)
着物の場合、多少は丈の長さが合わなくても、着付けの際に「おはしょり」を作るので調整がききます。ところが対丈(ついたけ:おはしょりを作らない)の長襦袢の場合、着丈の長さがそのまま反映されてしまいます。着付けでの調整ができません。
着丈が短すぎると、足首と着物が直に触れてしまい、裾捌きが悪くなります。また裾の内側が見えた時の見栄えもよくありません。着物の内側数センチ程度短い丈に納めるのが理想的です。
裄丈(ゆきたけ)
裄丈は、首の付根から手首までの長さのことを言います。着物の裄丈より長襦袢の裄丈が長いと、着物から襦袢がはみ出てしまいます。
合わせる予定の着物の裄丈と、長襦袢の裄丈が合っているか、必ず確認しましょう。特にアンティーク着物をお召しになる場合、裄丈がとても短いことがあるので注意が必要です。
袖丈(そでたけ)
袖のタテの長さです。例えば振袖の場合には、振袖の長い袖に合わせた長襦袢が必要になります。袖丈があまり長すぎると中でもたついてしまうので、適度なゆとりのある長さを選びましょう。
4)素材はシーンと使い勝手で選ぶ
長襦袢の素材は、初めて選ぶのであれば正絹または化繊になるケースがほとんどでしょう。
フォーマルならば正絹が一番。またはシルック(R)等のシルク見えしてなおかつ使いやすい上質な化学繊維を選んでください。よく着物を着る予定があるなら、ご自宅で洗えるシルック等が良いでしょう。
なおフォーマル用にポリエステルはすすめません。正絹着物とポリエステル長襦袢の相性は最悪で動きにくいですし、蒸れて暑い思いをします。
おわりに
長襦袢の読み方や呼び方、種類、そして選び方のポイントはお役に立ちましたか?同じ着物でも、長襦袢を変えることで「純フォーマル服」として着ることもできれば、少しだけくだけた雰囲気で「観劇のための着物」として着用することもできます。
長襦袢の地域性の違いやマナーをしっかり知って、着物のオシャレを楽しんでみてくださいね。