七五三の子ども用着物にシミ!汚れの取り方は?対処法の正解を解説
お子様の成長を祝う「七五三」では、振袖や羽織袴を身につけたかわいらしい姿を見られるのが嬉しい時期です。でも小さなお子さんですから、七五三着物にシミや汚れを付けてしまう…というトラブルも多いですよね。
さて七五三着物にシミや汚れが付いたら、自分でシミ抜きや汚れとりはできるのでしょうか?
七五三着物に付いた汚れの原因を確認
七五三着物に付いた汚れをシミ抜きできるか?家で対処できるかどうか?は、まず「汚れの原因が何か」で決まります。汚した!と知った時にすぐに原因特定をしましょう。例えばお料理の食べこぼし等であれば、どんなお料理だったか、素材や調味料は何か…といった細かい点までできるだけ確認してください。
油溶性のシミ・汚れ
油分または脂性の成分がほとんどで、水分が少ないシミ。油に溶けやすく、反対に水には溶けにくいという性質を持っています。対処としてはベンジン等の油分を主とした溶剤を使用します。
水溶性のシミ・汚れ
水(水分)が多くを構成していて、油分は含まないシミ。油溶性のシミの反対で、水を使わないと溶けません。日本酒のように一見すると無色のものから、ジュース(果汁)のような色素成分が濃いものもあります。
混合性のシミ・汚れ
混合性のシミは、水分と油分の両方の汚れ成分が混じっているシミです。牛乳のような脂肪分の高い飲み物も「混合性汚れ」に含みます。
- 母乳・牛乳・生クリームのシミ
- 焼き肉のタレのシミ
- ドレッシングのシミ
- アイスクリームのシミ 等
不溶性のシミ・汚れ
不溶性シミは、水にも油にも溶けません。金属等の一切溶けない細かな粒子が含まれているのです。
- サビによる汚れ
- 墨汁・炭の汚れ
- 一部のリキッドアイライナーの汚れ
- マスカラの汚れ
- 絵の具の汚れ
- ペンキ汚れ
- ジェルインクボールペンのシミ 等
※不溶性シミはご家庭ではシミ抜き対処が一切できません。ベンジン等を使っても汚れが広がるばかりです。早めに着物に強い専門店に相談しましょう。
原因不明の場合には
シミ原因がわからない場合は、すぐにクリーニング店等の専門店に持ち込みましょう。適当に対処すると汚れを広げたり、取れなくなってしまうことがあります。
七五三着物の素材やシミの状態を確認
一口に「七五三の着物」と言っても、その素材や洗濯対応には違いがあります。またシミの状態によっては、家でシミ抜きしても落ちないことがあります。お手持ちの着物の素材や洗濯表示、シミの状態を確認しましょう。
ウォッシャブル素材、ポリエステル着物等の場合
原則としてご家庭での水洗いが可能な着物です。
- 油溶性シミ → 新しく小さいシミなら家庭でシミ抜き可
- 水溶性シミ → 新しいシミなら家庭でシミ抜き可
- 混合性シミ → 新しいシミなら家庭でシミ抜き可
- 不溶性シミ → ご家庭ではシミ抜きできません
正絹・シルク素材、ウール着物等の場合
正絹(シルク100%)やウール等、ご家庭では水洗いができないタイプの着物です。水を使った全体洗いだけでなく、水を多少使ってシミ抜きでも色落ち・縮み等の変質が起きる可能性が高いため、ご家庭では水使用ができません。
- 油溶性シミ → 新しく小さいシミなら汚れとりできることもある
- 水溶性シミ → ご家庭ではシミ抜きできません
- 混合性シミ → ご家庭ではシミ抜きできません
- 不溶性シミ → ご家庭ではシミ抜きできません
古い汚れ・大きな汚れは家では落ちない?
次のようなシミ・汚れは家では落とせません。
時間が経っているシミ
- 汚れが付いて数日以上が経過し乾いたシミ
- 後から浮き上がってきたシミ
- タンスから出したら見つけた黄ばみや古いシミ
大きなシミ・汚れ
- 直径2~3センチを超える油溶性汚れ
- 縫い目をまたいでシミ・汚れがある(縫い目に汚れが染みている)
染色力の強い汚れ
- ワインの汚れ
- ぶどうジュースの汚れ
- 抹茶(お薄)の汚れ
- インドカレーの汚れ 等
上のような染み・汚れについては、できるだけ早く専門店に相談しましょう。
七五三着物のシミ抜き
上の記事を確認したら、いよいよシミ抜き作業です。
七五三着物の油溶性汚れのシミ抜き
油溶性汚れには、家庭用の溶剤であるベンジンを使います。
用意するもの
- ベンジン
- 柔らかい布またはガーゼ
- タオル(汚れて捨てても構わないもの)
- 着物用のハンガー(物干しでも代用できます。洋服用ハンガーは型崩れしやすいのでNG)
作業前の準備
※窓を開けるか換気扇を回し、作業中は常に換気し続けます。ベンジンは揮発性が高く、吸い込むと刺激の強い危険な物質です。作業中、小さなお子様やペットは同室を避けることをおすすめします。
※ベンジンは引火性です。作業中はライターやストーブ、コンロ等の火器類の使用は絶対に使わないでください。
※素材・染料によっては、色落ち・変色・色褪せが起きます。目立たない箇所や共布での変色テストをおすすめします。
シミ抜き手順
- 下にタオルを敷き、七五三着物のシミがある箇所を広げます。
- 柔らかい布がしっかり濡れるくらいに、たっぷりとベンジンを浸します。
- 上の布で、シミがある部分をトントンと軽く叩いていきます。汚れが少しずつ布や下のタオルに移ります。少しずつ布・タオルを動かし、常にキレイな面が当たるように作業を続けます。
- 七五三着物のシミが取れたら、もう一度ベンジンで布を濡らします。
- 濡れている箇所と乾いている箇所の輪郭(りんかく)がよくわからなくなるように、ベンジンを塗り拡げてぼかします。小さなパーツの場合、縫い目の部分まで全体をを濡らすと輪ジミを防ぎやすいです。
- 着物用のハンガーにかけて乾かします。
※ベンジンで濡らした布で着物を強く擦ったり叩いてはいけません。表面が白く毛羽立つ「スレ」が起きやすいです。この現象が起きると、専門店でも着物を元に戻せません。
※「ぼかし」の工程を省くと、乾いたあとで「輪ジミ」になります。十分にぼかしを入れましょう。
※水洗い可能な着物の場合、作業後にすぐに全体を濡らし、次に案内する「水性洗い」の工程も行うことをおすすめします。その方が「輪ジミ」での失敗が少ないです。
七五三着物の水溶性汚れをシミ抜き
七五三着物の汚れが水溶性の場合には、作用が穏やかな中性洗剤を使って水洗いします。
事前に確認しましょう
家で水洗いができる素材かどうか、洗濯表示等を必ず事前に確認してください。木綿・麻等の「一見洗える素材」も、着物では激しい色落ち・色褪せが起こるためご家庭で水洗い不可ということがあります
用意するもの
- 中性タイプの洗濯洗剤(エマール等)
- 洗面器等の容器
- 洗濯用ネット(畳んだ七五三着物が平らに入るサイズ)
- バスタオル2枚
- 着物用ハンガー(物干しでも代用できます、洋服用は型崩れの原因になるので避けましょう)
- アイロン、アイロン台、霧吹き、あて布
下準備
※水を使ったシミ抜きでは、洗う工程で着物が型くずれすることがあります。特に型くずれをしやすい衿元は安全ピン等で仮止めをするか、カンタンに大きめのぐし縫い等で縫い止めておきましょう。
※長襦袢を洗う場合には、必ず半衿を外してください。
シミ抜きの手順
- 洗面器等にぬるま湯(または水。シミによって異なる)を少し入れて、中性洗剤を垂らし、よく溶かして薄めておきます。
- シミがある部分を、ぬるま湯(または水)で濡らします。3)作っておいた薄めた洗剤液をシミ部分につけて、指でやさしく馴染ませます。
- ぬるま湯か水でよくすすぎ、シミを確認します。
- 汚れが目立たなくなったら、七五三着物を畳んで洗濯ネットに平らに入れます。
- 全体を仕上げ洗いします。バスタブまたは洗面ボウル等にぬるま湯または水をはり、中性洗剤を適量入れます。使用量は製品パッケージ裏の説明書「手洗い」の量を参照しましょう。
- 洗濯ネットごと、洗剤液に七五三着物を沈めます。両手で優しく押し洗いしてください。
- ぬるま湯(または水)を取り替えて、2~3回、丁寧にすすぎます。
- ネットのままで洗濯機に入れ、脱水機能で30秒くらい脱水します。シワになりやすい着物、型崩れが不安な七五三着物の場合は省略して構いません。
- 着物をネットから取り出し、バスタオル2枚で挟みます。タオルの上からポンポンと軽く叩いて、優しく水分を吸い取ります。
- ハンガーに七五三着物をかけ、直射日光にあてずに風通しの良い場所で自然乾燥させます。ドライヤー等の熱風、乾燥機等は使用しないでください。
- シミの状態をよく確認してから、アイロンがけで仕上げます。(製品によってはアイロン不要のものもあります)
※シミがタンパク質系(母乳、卵、血液、牛乳等)の場合は、シミ抜き・洗濯にぬるま湯を使わないようにしましょう。温かいお湯を使うとタンパク質が固まって、ご家庭では取れない汚れになってしまいます。
※シミ抜きしても汚れが取れない場合は、汚れた部分にはアイロンNGです。高熱で乾くと汚れが取れにくくなります。できるだけ早めに専門店でシミ抜きしましょう。
おわりに
七五三着物のシミ抜きについての情報はお役に立ちましたか?なお七五三着物がレンタルの場合には、ご家庭ではシミ抜き等の対処はしないことが一番。シミ抜きに失敗すると「お買取り」となってしまうことがありますので、早めに正直にレンタル業者さんに相談しましょう。小さなシミならレンタル料金内で保証してくれるお店もありますよ。
また「七五三着物は大切な思い出の品」「下の子にも着せたいからシミ抜き失敗は困る」という人も多いことでしょう。正直なところ、「初めての着物のシミ抜き」がフォーマル向けの着物なのはかなりハードルが高いです。普段着向けの着物と違って、失敗した時の対処が難しいところがあります。
当店『きもの創夢』では、小さなシミから古いシミまで、七五三着物の様々なシミ抜きを承っています。「自分では難しいかも」と思ったら、一度お気軽にご相談ください。