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【対策がムダに?】ポリエステル着物の静電気が悪化する4つの理由

ポリエステル着物生地

気楽に着られるポリエステル着物は、街着として楽しむのはもちろん、着物の練習着として着用する人も多いですね。でも「ポリエステル着物は静電気が酷いからキライ!」という人も少なくないようです。

最近ではポリエステル着物の静電気を抑えるスプレー等の対策アイテムも色々登場するようになりましたが、それでも静電気が起きる…これ実は、コーディネートやポリエステル着物のお手入れに原因があるかもって知っていましたか?

ポリエステル着物の着方によっては、どんなにスプレー等の静電気対策をしてもバチバチしてしまうことがあるんです。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 京都きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。ここではポリエステル着物の静電気対策の一環として、「静電気が悪化する理由」を4つピックアップしていきます。

シルクの長襦袢で静電気が悪化!

特に着物を着始めた頃は、「長襦袢を1~2枚で着回している」という方も多いはず。最初に着た晴れ着用の長襦袢が便利だから、そのまま使っている……なんて人もいるのでは?でもポリエステル着物を着る時には、この方法が良くないこともあるんです。長襦袢の素材、チェックしていますか?

ポリエステル着物の内側に正絹(シルク)の長襦袢を重ねると、ポリエステル着物の静電気の発生率は大幅に上がってしまいます。

特に「来てすぐに起こる」というのではなく、歩きはじめてから静電気が発生しやすいのが困りものです。

「+」の電気と「-」の電気で静電気が発生

繊維にはそれぞれ、電気を帯びやすい性質のものと、そうでないものがあります。また電気の種類にも「+(プラス)」のものと「-(マイナス)」のものがあるのです。プラスとマイナスの電気が組み合わさると、静電気がたくさん発生しやすくなります。

ポリエステル着物は基本的に「-(マイナス)の電気」を帯びやすい素材です。反対に正絹(シルク)の長襦袢は「+(プラス)の電気」を帯びる性質を持っています。2つの素材がこすれあうと「プラス」と「マイナス」がぶつかりあって、バチバチ静電気の原因になってしまうのです。

シルク混紡で起こることも

着物と長襦袢は触れている面積が大きい分だけ、長襦袢の素材は静電気に影響を与えやすいです。シルク100%の「正絹」だけでなく、「シルク混紡」でも静電気が悪化する恐れがあります。

アンティーク長襦袢をお召しの方だと「素材がわからない」というケースがありますが、正絹またはシルク混紡である可能性が高いと考えておいた方が良いでしょう。

ポリ着物にはポリ長襦袢がベスト

ポリエステル着物に合わせる長襦袢は、同じ「ポリエステル」の素材のものが理想的。お値段も比較的リーズナブルなので、手に入れやすいのも魅力です。ポリ100%はちょっと肌触りが苦手…という時には、アセテートで柔らかさを出したものもおすすめですよ。

ナイロン混のインナーで静電気バチバチ!

寒い時期にポリエステル着物を着る時には、インナーで暖かさ対策をしておきたいですよね。最近では肌襦袢の下に長袖インナーを重ねたり、レギンスやタイツもしっかり履いておく!という人が多いようです。でもこれらのインナーを着ることが、ポリエステル着物の静電気を激しく悪化させていることがあります。

ナイロン×ポリエステルは相性最悪?

ナイロンは、実は上で解説した正絹(シルク)よりもたくさんのプラスの電気を帯びます。そのため「プラスのナイロン×マイナスのポリエステル」の相性は最悪で、少し歩いただけでも静電気だらけになってしまうことも多いのです。

ナイロンのストッキングやタイツを履いた時、ポリエステルのスカートが足にまとわりついて大変…という経験がある人もたくさん居るはず。ナイロン入りのインナーとポリエステル着物では、同じことが起こっています。

綿インナーを取り入れて

化繊混紡のインナーだと、どうしても+に帯電する素材が混じりやすいのが問題。防寒のためのインナーとしては、電気を帯びにくい綿(コットン)を使うのが安心です。

普段遣いのポリエステル着物の中に着るのならば、襟ぐりのしっかり開いた洋服用のインナーでも大丈夫。またレギンス類もコットンの配合率が多いものが安心です。近年では無印良品やベルメゾン等でもコットンの防寒インナーを幅広く展開していますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

ウールのコートやポンチョで静電気が?

着物 防寒着
ポリエステル着物は正直言って、防寒性はあまり優れない着物です。そのため冬にはコートやポンチョ、ショール、マフラー、スヌード等で防寒対策をする方も多いことでしょう。

ところがこれらの防寒着の素材も、ポリエステル着物の静電気を悪化させる一因となっています。

ウールやカシミヤは避けるべき

暖かさに優れるウール(羊毛)やカシミヤ素材の防寒着ですが、残念ながらポリエステル着物との相性はよくありません。これらも「+(プラス)の電気」を帯びやすい素材なので、ポリエステル着物の静電気発生率を上げ、バチバチするトラブルを増やします。

混紡の場合でも、毛(ウール)やカシミヤの混紡率が高いものは避けましょう。

ポリやアクリル素材がベスト

ポリエステル着物の静電気対策をする…という意味では、防寒着や同等のポリエステルの配合率が多いもの、またはアクリル素材のもの等が理想的です。

ただ、アクリルの混紡率が高くなるほど、ウールに比べると保温性が下がってしまう…というのが実情です。寒がりさんはカイロ等も合わせて防寒対策されることをおすすめします。

草履やブーツが静電気の原因?

ポリエステル着物の静電気は、「足元」で悪化していることも多いです。ポリ着物の静電気対策として草履等の履物を見直してみましょう。

ゴム底草履で静電気が逃げない

丈夫なゴム底やラテックス系の草履は、歩きやすいし滑りにくいのが魅力。でもこれらは「絶縁体」と言って、電気を通さない性質があります。

「電気を通さないなら良いんじゃない?」と思われそうなのですが…実は靴底がこういうタイプだと、一度起こった静電気を地面に逃すことができないので、体の中に静電気が溜まりやすくなってしまうのです。

ゴム底ブーツは絶対やめよう

さらにポリエステル着物の静電気を悪化させる履物としては、ゴム底・ラテックス底の「ブーツ」があります。草履と違って足が外に出ている部分が無いので、さらに静電気が溜まりやすいです。

最近ではパッと見て革ブーツに見えるような長靴(雨靴)も出回るようになり、それらをポリエステル着物に合わせる方も増えました。でもこの長靴も、やはりポリエステル着物の静電気を逃してはくれず、体の中に溜め込み続けます。

おわりに

最近ではポリエステル着物の静電気を抑える対策用スプレー等の種類も増えたせいか、「スプレーをすれば静電気が起きない」という誤解をお持ちになる人も増えました。

しかしスプレーでの静電気対策には限界があります。いくらポリエステル着物の静電気対策をしていても、静電気が悪化するコーディネートをしていたり、静電気が逃げないような履物をしていることで症状が悪化してしまう…こんなケースがとても多いのです。

もちろん体質や肌質によって、静電気の帯電をしにくい人・しやすい人という差もあります。「静電気でのトラブルが起きやすい」「ポリエステル着物を着ると確実に静電気で肌にまとわりつくという人は、ぜひ上の悪化の原因をチェックして、対策をしてみてくださいね。

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