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二部式着物とは?着方は?洗濯は?よくある疑問Q&A

二部式着物とは

着やすく便利な二部式着物は、着物ビギナーにとっても頼れる存在ですし、業務用としてもよく目にしますね。最近では車いす用の二部式着物、シニアの方向けの二部式着物等も注目されるようになりました。当店『きものサロン創夢』でも、車椅子の方に向けた二部式(セパレートタイプ)の振袖レンタルサービス等を行っており、お問い合わせをよくいただいています。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。今回はこの二部式着物について、お客様からよくいただく質問・疑問をまとめてみました。着物初心者の方にもできるだけわかりやすく解説していきますので、参考にしてみてくださいね。

二部式着物とはどんなものですか?

セパレート着物
二部式着物とは、着物の上部と下部を主にウエストのあたりで分割したタイプの着物です。最近では「セパレート着物」「セパレートタイプの着物」とも呼ばれます。

【上半身用パーツ】
丈は胸下~ウエストあたりまでの長さになっています(製品によってはおはしょりが上半身パーツに付くものもあり様々です)通常の着物と同じように、右前に衿合わせをしてカシュクールのように着る形になっています。数カ所を製品についている紐で縛って固定する製品もありますが、より簡易的にマジックテープで張り合わせるものもあります。

【下半身用パーツ】
布をくるりと体に巻き付けて止める、洋服でいうと「ラップスカート」のような形になっています。こちらも付属している紐で固定するものが多いですが、中にはマジックテープ固定、ホック固定などのより簡易的な着付けがでいる製品もあります。

上のように「上パーツ」「下パーツ」が分かれているものは、総合して「二部式着物」と呼ばれます。しかしこれ以外については、構造が様々に異なるため注意が必要です。例えば「おはしょり」についてだけでも、次のような違いがあります。

【おはしょりのタイプ】

  • 上半身パーツにおはしょりが簡易的に付属している
  • 帯に簡易おはしょりが付属している
  • おはしょりが省略されている
  • 上部または下部パーツのおはしょりで丈調整も可能 等

最近では「おはしょりっぽく見えるものが付属している」というパターンが多いですが、お仕立ての方法によっては、一部式の通常の着物のようにリアルなおはしょりができる(丈調整等も可能である)ものもあります。これはあくまでも特例なのですが、このような存在もあることは知っておくと良いでしょう。

二部式着物の着方は?

二部式着物の着方はとてもカンタンで、慣れれば2~3分で着ることができます。着物が初めての方でも、説明を読めば15分程度で着られることでしょう。二部式着物には様々なタイプがあるので「この着方が絶対」というものは無いのですが、ここでは業務用(ユニフォーム用)の二部式着物の着方の一例をご紹介します。

事前準備

  • 最初に足袋を履いておきます。
  • 着物を着る前にヘアセットを済ませておきましょう。
  1. 二部式の場合、着物の半襟(半衿)を簡易的に着脱できるタイプも多いです。この場合には、着用する前に衿をつけておきます。製品にもよりますが、マジックテープやホック等が主流。半衿の中心と着物の衿の中心を重ねて合わせてから両端をつけると、歪みが少なくキレイに着けることができます。
  2. 先に肌襦袢を着用するタイプの場合は、裾除け(下側のインナー)を巻き付けてから、肌襦袢を身に着けます。両方とも右前(着る人の右手がスムーズに入れられるような重ね方)に重ねます。
  3. 二部式着物の下パーツを着用していきます。まずは上前の端を右腰骨部にあわせ、体の横のラインにぴったりと沿うようにして場所を決めます。ここでしっかり場所を決めておくのがポイントです。
  4. 左右の端を合わせて、下前を巻いていきます。巻き切る前に少し斜め上に引き上げると、動きやすく、着崩れしにくくなります。
  5. 紐を引いて腰部に巻き付け、両手で紐を持って後ろに回し、蝶々結び等にして止めます。紐先を捻って中に入れておくとスッキリと着られます。(製品によっては紐での固定ではなく、マジックテープやホックの場合もあります)
  6. 二部式着物の上パーツを着用していきます。上着を羽織るように上パーツを着たら、両手で下部を持って軽く後ろ側にひっぱり、襟足部分にゆとりができるように下げます。
  7. 簡易半襟があるタイプの場合には、ここで半衿の位置を決めて、マジックテープやホック等で貼り合わせます。
  8. 着物の前合わせを作っていきます。衿と同じように右前(着る人の右手が胸元にスムーズに入る合わせ方)で、「V」の形の中心部が顔の中心とズレないようにするのがポイントです。
  9. きれいに襟元が作れたら、手で軽く襟元を抑えつつ、反対の手で後ろの紐を持ってきて、前で紐を結びます。襟元を抑えるのになれない時には、クリップ等で仮押さえをしても良いでしょう。
  10. 余計なシワ等ができていないか、左右の端が体に合っているか確認します。
  11. 簡易式帯を巻きつけるか、上着を重ねて完成です。

二部式着物は業務用なのですか?

業務用製品(ユニフォーム用)の二部式着物は多いですが、必ずしも業務用だけとは限りません。個人向けの二部式着物や、シニアの方向けに仕立てた二部式着物、車椅子の方向けのもの等、様々なものがあります。ご自分で着物を二部式に仕立てる方も多いです。

二部式着物の種類の例

  • 業務用/ユニフォーム用
  • レンタル用の簡易版二部式着物
  • 個人の方が仕立てた二部式着物
  • シニア向け二部式着物
  • 車椅子の方向けの着物 等

業務用の二部式着物とは

業務用(ユニフォーム用)の二部式着物とは、旅館や和食レストラン等、日本風文化の施設等でスタッフが着用するために作られた着物です。

  • マジックテープ等で着脱がしやすい
  • ポリエステル等で洗濯がカンタン
  • シワになりにくい織り方
  • 動きやすい構造
  • 小紋などで控えめな柄行が多い

上のような点を重視した製品が多い傾向にあります。おはしょりや帯等を省いて上着を重ねるだけのごく簡易的なものから、一見すると本格的な着物に見えるようなものまで、タイプは様々。お揃いのユニフォームとしての需要が多いため、一着数千円程度~2,3万円程度等、安価な製品が多い傾向です。

レンタル用簡易版二部式着物

着付けができない方のためのレンタル着物サービスや、お茶会体験教室、着物でのお習字体験教室等で着物に気軽にチャレンジしていただくために作られた二部式の着物です。

  • マジックテープ等で着脱しやすい
  • ポリエステル素材製品が多い
  • 訪問着風、振袖風等、華やかな柄の製品も多い

最近では海外旅行客(インバウンド対応)の需要によって、このような二部式着物の人気も高まっています。

個人で仕立てた二部式着物

年齢を重ねて着やすい着物が欲しくなった方等が、ご自分の着物を二部式に仕立てるパターンです。

  • 小紋や茶会向け等の比較的気軽な着物が多いが種類は多彩
  • 紐で止める仕立てが多い
  • おはしょりでのサイズ調整可能等の本格的なものも

個人で二部式に仕立てた着物の場合、そもそも「着物が着られない」というわけではなく「ラクに着たい」という需要がほとんど。そのため着付け方法は、業務用二部式等に比べるとかなり難易度が高いことも多いです。(着物中級者~上級者の方がラクするために着る着物、という品物が多い傾向です)

車椅子の方向けの二部式着物

車椅子の方向けの二部式着物車椅子の方向けの二部式着物
車椅子の方でもカンタンに着付けられ、座った状態でも疲れにくいセパレートタイプの着物です。製品によっては、お手洗い等も行いやすいよう、下パーツの形に工夫がされているものもあります。

  • 振袖・留袖等、フォーマル向けの製品が比較的多い
  • 短時間での着脱が可能
  • トイレ等のための特殊形状をしている製品も多い

当店『きものサロン創夢』でも、車椅子の方向けの二部式着物(振袖、留袖、訪問着等)のレンタルサービスを行っています。当店の製品の場合、元々は通常の礼装用の反物から仕立てているため、見た目にもとても華やかで本格的です。また取り外し可能な作り帯を前にも付けられるデザインにする等、座っている時間が長くても疲れないデザインに配慮しています。

4.二部式着物はフォーマルには着られない?

二部式着物をフォーマルで着られるかどうかは、その着物の「種類(格)」によります。「二部式だからダメ」ではなく、フォーマル向けに作られているかどうかが問題です。「訪問着」「留袖」「振袖」等として作られている着物なら、原則としては二部式でもフォーマル着用は可能です。

着物の種類

女性用の着物の場合、おおまかに次のような種類と格の違いがあります。

  • 振袖(ふりそで):未婚女性向けの最高格の着物。フォーマル。結婚式、成人式、その他に着用可。袖が他の着物に比べてとても長いのが主な特徴です。
  • 留袖(とめそで):既婚女性向けの最高格の着物。フォーマル。主に結婚式、位の高い式典等に着用。下半身(裾の方)にしか柄がありません。
  • 訪問着(ほうもんぎ):未婚・既婚着用。準フォーマル。柄にもよるが、入学式卒業式等の式典、七五三等にも着用可能。上半身にも柄があるが、一続きになっています。フォーマル向けの場合、淡く上品な色合いが求められます。
  • 色無地(いろむじ):柄なしの着物。紋付きだと準フォーマルとして着られます。紋無しはフォーマル不可。茶会等にお使いになる人も多いです。
  • 小紋(こもん):続き柄ではない柄行が全体にある着物。品格としてカジュアルであり、気楽なお食事やデート、お買い物等の街着向けの着物です。フォーマルには着られません。
  • 紬(つむぎ):紬糸などを使った先染め織物で作られた着物。高級品も多いのですが、品格としては完全カジュアルであり、フォーマルには着られません。着物好きな人のための洒脱なおしゃれ着という存在です。

たとえ二部式であっても、その着物が振袖であれば、お友達の結婚式にだって堂々と着ていくことは可能です。反対に通常の一部式の着物であっても、種類が小紋であれば、フォーマルに着ることはできません。というのが「着物の基本的な考え方とマナー」です。

二部式にフォーマル製品は少ない

二部式であってもフォーマル着物なら着られる!というのが基本的な考え方であると上で解説しましたが…実際に流通・販売されている製品だと、二部式でフォーマルに適した着物はとても少ないのが現状です。

まず業務用(ユニフォーム用)の製品はほぼ全てNGです。上でも触れた「車椅子の方向け振袖」や、個人の方が仕立てた着物等を除くと、フォーマル向けの二部式はなかなか手に入れにくいでしょう。

ポリ着物はフォーマルには不向き

体験用等で作られた訪問着風の二部式着物等もありますが、購入時には素材に十分に注意しましょう。二部式の既成品着物ですと気軽なポリエステル製品が多いですが、フォーマル向けにはあまりおすすめができません。

いくら柄行が訪問着でも、素材がポリエステルだと「カジュアル感」が出やすいのです。特に結婚式や式典だと、周囲は正絹の着物の方がほとんど。ポリ着物の風合いが悪目立ちしてしまいやすいです。

5.二部式着物は家で洗濯できますか?

二部式着物がご自宅で洗えるかどうかは、素材とウォッシャブル対応によります。「二部だから洗える/洗えない」という切り分けはできません。

業務用やポリ着物はほぼ洗える

業務用(ユニフォーム用)の二部式着物はお手入れがしやすく、ほぼご自宅等での水洗いが可能です。製品にもよりますが洗濯機洗い対応のものもあります。作りや特殊加工の有無にもよりますが、ポリエステル製品であれば洗える可能性は高いです。(ただし製品の洗濯表示はかならず確認をしましょう。ポリ着物でも色落ちする場合等があります)

個人仕立てや礼装用には注意

個人で仕立てた二部式着物、フォーマルにも対応可能な二部式着物等の場合には、取り扱いには注意が必要です。正絹(シルク)やウール等、ご自宅では水洗いができないもの、濡れると大幅に縮む素材等もあります。

正絹着物(シルクの着物)などはお手入れは原則すべて専門のクリーニング店となります。必ず素材や取り扱いの注意を確認しましょう。

おわりに

二部式の着物と一口に言っても、実に様々なものがあります。和食レストランのスタッフのための丈夫で気軽な二部式と、着物好きな方が普段着向けに仕立てた二部式では、着方も素材も取り扱い方も大きく違ってくるわけです。「二部式(セパレート着物)」という言葉ばかりが前に出てしまって、「二部にも色々あります」という点が着物初心者の方になかなか伝わりにくいのが難しいところと言えるでしょう。

今後、着脱のカンタンさや疲れにくさ等から、二部式着物はさらに人気が高まるのではないかと予測されています。今はまだ少ないですが、フォーマル向け二部式等の選択肢も増えてくることも期待できますね。

なお当店の車椅子向けの二部式着物は、礼装用からちょっとしたお出かけ用まで、様々なものをご用意しています。「車椅子でも着物のおしゃれを楽しみたい」とお考えのとき、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。

車椅子ユーザー向け(セパレート式)

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