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シミの対処方法

3人中2人が間違えてる?着物の泥ハネの落とし方

留袖 泥汚れ

着物の泥ハネ・泥汚れは、気をつけていたつもりでも付きやすい汚れですね。「雨の日の成人式で振袖に泥ハネがついた」「雨の翌日に出かけたら訪問着の裾に泥汚れが…」等等、大切な着物の泥ハネに困っている人も多いのではないでしょうか。

この「着物の泥ハネ・泥汚れ」は、応急処置やシミ抜き等の対処法が普通のシミとは違います。食べこぼしや飲み物のシミのようなつもりで着物の泥ハネをシミ抜きしても、泥の汚れは落ちません。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 京都きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。着物の泥ハネの落とし方の正解を知っている人は、実に30%以下なのだとか。ここではそんな「着物の泥ハネ」のシミ抜きや対策でよくある間違いと、正しい対処法について紹介していきます。

着物の泥ハネの落とし方でよくある4つの間違い

まずは着物の泥ハネの落とし方で多くの人が間違っているポイントで、代表的なものを4つご紹介していきます。

1.着物の泥ハネはすぐに応急処置する → ×

食べこぼしや飲み物のシミ等だと、サッとハンカチやタオルで拭いたりして応急処置をする人が多いことでしょう。ところが着物の泥ハネには、すぐに応急処置をしてはいけません。

着物の泥ハネが付いた直後は、雨水と泥(砂)が混じり合っているベチャッとした状態です。これをいくら拭いても砂は取り切ることができませんし、かえって繊維の奥に泥を押し込んでしまいます。

2.着物の泥ハネは洗剤で落とせる → ×

着物についた飲み物等のシミを、中性洗剤を含ませた布で叩いてシミ抜きしている人もいるのでは?水溶性のシミであれば、このような方法でのシミ抜きが有効となることもあります。

ところが「泥」の元になっている「砂」は、水や洗剤で溶けることがありません。ポリエステル着物等で全体をしっかり水洗いできる場合は別ですが、水や洗剤を含ませるだけでは泥ハネをシミ抜きすることはできないのです。

3.着物の泥ハネはベンジンでしみ抜きできる → ×

着物を水で濡らさずにシミ抜きできる「ベンジン」は、着物の汚れを取るのに役立つお手入れアイテムですよね。

しかしベンジンで落とせるのは油に溶ける「油溶性のシミ」です。例えばファンデーションや食べこぼし等ですね。泥ハネの元の「砂」は不溶性で、油にも水にも一切溶けません。つまりベンジンでも溶かせないので、シミが残ってしまいます。

泥ハネにベンジンを使うと、かえって汚れを広げてしまうことも多いのです。

4.着物の泥ハネは着物丸洗いに出せば落ちる → ×

着物の泥ハネは、一般的な着物クリーニングである「きもの丸洗い」では落とすことができません。着物の泥ハネの汚れ落としをプロにお願いする場合には、手作業で着物の「シミ抜き」ができる悉皆屋(しっかいや)等の専門店を選びましょう。

自分でできる着物の泥ハネのシミ抜き方法は?

振袖や訪問着等の着物に泥ハネがついたら、どのように対処をすれば良いのでしょうか。

出先で付いた着物の泥ハネの応急処置

出先で着物に泥ハネが付いた時には、基本的には触らないのが一番です。小さな泥ハネであれば、他の場所に泥が移らないように気をつけつつ、そのまま乾燥させるようにしましょう。

「雨をたっぷり含んだ泥ハネで着物が濡れてしまった……」という場合には、乾いたハンカチ等で軽く水分だけを取ります。このときも「着物を乾かす」ことを目的にして、泥をムリに取ろうとしない方が良いです!濡れている泥汚れを拭くと、後で取れにくくなってしまいますよ。

自宅で行う着物の泥ハネの落とし方

着物の泥ハネの元である「砂」は、上の項目でも解説したように「水」にも「油」にも溶けません。範囲が小さな泥ハネであれば、ブラシを使って砂を落とすことでシミを目立たなくすることができます。

きものブラシか洋服用ブラシ・歯ブラシを用意

着物の泥ハネのお手入れには、着物専用のブラシを使うのが一番です。
きもの用(和装用)のブラシがない場合には、コート・ジャケット等に使う洋服用のブラシでも代用できます。ただし馬毛や豚毛でできている洋服ブラシで、毛の質がやわらかいものを使いましょう。

「洋服ブラシは使わない」という時は、毛質が特別やわらかい歯ブラシを使います。ただし雑菌をうつしたくないので、古い歯ブラシではなく新品を使ってください。

※エチケットブラシは摩擦で布にダメージを与える恐れがあるので、着物の泥ハネ取りにはおすすめしません。
※「コロコロ」等の粘着テープ型のクリーナーは使用できません。

着物の泥ハネを落とす手順

  1. 着物をベランダや庭の直射日光にあたらない場所に干すか、室内に和装ハンガーにかけて干します。
  2. 室内に干す場合には、下に新聞紙やビニールシート等を敷いておきます。
  3. 着物を全体的にチェックして、汚れがある場所を確認します。
  4. 泥ハネのある場所にブラシをあてて、一方向にやさしく動かします。
  5. 泥ハネがある部分の裏側から指で布を軽く弾いて、内側に入り込んだ砂を叩き出します。
  6. ブラッシングと叩きを繰り返して、砂を落としていきます。

ブラッシングは手でスナップをきかせるようにして、軽く行うのがコツです。強くこすったり、ゴシゴシ往復させて着物を傷めないように気をつけましょう。

プロがシミ抜きした方が良い着物の泥ハネとは

留袖の泥汚れ留袖の泥汚れ【ビフォー】
留袖の泥汚れ落とし留袖の泥汚れ【アフター】

泥ハネの状態や着物の種類によっては、自分でシミ抜きをできないことがあります。特に次のような場合は、自宅では着物の泥ハネをキレイに落とすのが難しいです。

車が多い道でできた着物の泥ハネ

車道の水たまりには、排気ガスやミッションオイル等の落としにくい油汚れが多く含まれています。そのため駐車場や車道の水たまり等でできた着物の泥ハネは、ブラッシングで砂を取るだけではキレイにすることができません。

雨水で濡れた場合の泥ジミ・泥汚れ

少量の泥がハネただけではなく、着物が大雨で濡れたり雪で湿ったりしていませんか?正絹やウール等の水濡れに弱い着物は、雨・雪等で濡れると雨ジミができたり、激しく縮んでしまうことがあります。

「泥ハネに加えて着物を濡らしてしまった」という時には、すぐに着物の扱いに強い専門店に相談をしましょう。

大きな泥ハネ

大きな泥ハネになるほど、砂をキレイに取りきるのは難しくなります。また泥以外の汚れや水シミも起きやすいです。具体的には直径2センチを超える泥ハネができていたら、プロにおまかせをしたほうが良いでしょう。

古い泥ハネ・泥のシミ

着物の汚れは、付いてから時間が経つほど繊維に定着し、落ちにくい汚れに変化していきます。「泥ハネが付いたのがいつなのかわからない」といった古いシミについては、残念ながら自己処理でシミ抜きをするのは難しいです。

「思い当たる点が多い」という場合には、着物の汚れ取りを自分でムリには行わず、早めに専門店に相談をしましょう。

おわりに

着物の泥ハネの応急処置や落とし方についての情報はお役に立ちましたか?泥ハネはなかなか避けるのが難しいものです。着物でのお出かけが多い方は、お天気が悪い日の当日や翌日用に、東レ「シルック(R)」等の洗濯機で洗える着物を準備してみるのもおすすめですよ。

また「泥ハネが怖いけど、正絹の着物が着たい!」という場合は、水や泥がつきにくい撥水加工(ガード加工)をすることもできます。悉皆屋(しっかいや)等の着物のお手入れ専門店では、クリーニング・シミ抜きだけでなくこのような撥水加工の相談も可能です。泥ハネ等でお困りのことがあったら、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

他店で断られたシミ承ります!

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