それダメ!木綿着物のシミ抜きでやってはいけない5つのポイント
最近は街で木綿きもののおしゃれを楽しむ方を見ることが増えました。木綿きものはお手入れがラクなものも多いので、普段着感覚で日常的に木綿着物を着たり、初めて挑戦する着物として木綿着物を選ぶ方も多いのでしょう。
その分、木綿着物のシミ抜き方法について知りたい!という方も増えているようです。木綿着物のシミ抜き方法はネット上に様々な情報が溢れていますが、意外とやってはいけないポイントについては案内がされていません。「シミ抜き等のお手入れがしやすい」という印象がある木綿着物ですが、実はやってはいけないポイントもあるんですよ。
原因を確認せず木綿着物のシミ抜きを始める
木綿着物はザブザブと気軽に洗えるものも多いので、シミに気がついた時に「すぐにシミ抜きしよう!」と支度を始める人も多いことでしょう。でもちょっと待ってください!その木綿着物のシミ、シミ抜きで落ちるものなのでしょうか?
木綿着物につく汚れには、様々な原因があります。原因によっては汚れが落ちにくかったり、症状を酷くしてしまうこともあるのです。
不溶性のシミは落ちない
不溶性のシミとは、水にも油にも溶けない汚れのこと。とても細かな砂や炭等、溶けることのない成分が含まれています。
不溶性汚れの例
- 墨や墨汁の汚れ
- ジェルボールインクのシミ
- ウォータープルーフマスカラの汚れ 等
変色(黄変)によるシミもNG
黄変とは、汚れが酸化したことによって起こる黄ばみや、茶色くなった変色シミのこと。主に汗等のシミ・汚れをそのままにしていると、時間が経って少しずつ黄ばみやシミが浮いてきます。
このような変色シミは、ご家庭では取り除くことができません。専門店での黄変抜き等の対処が必要です。
カビによるシミも取れない
黒カビや青カビによるシミ、白カビが時間経過したことでできたオレンジ・茶色のシミ等も、ご家庭ではシミ抜きをすることができません。
「着物がかび臭くて、原因不明のシミがある」という場合も、カビが原因であることも多いです。オゾン消毒等、専門店でのカビ取りが必要になります。
上のようなシミにムリに自分でお手入れをすると、大切な着物がダメになってしまうことも!木綿着物のシミ抜きをする前には、必ず汚れの原因をしっかり特定してから始めましょう。
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洗ってはいけない木綿きものを水洗い
「木綿着物はなんでもザブザブ洗える!」と思っていませんか?着物の種類や使うシーン等によっては、木綿着物のシミ抜きで水が使えないこともあります。
袷の着物
袷(あわせ)とは、裏地がある着物のことです。木綿着物は一般的に一枚仕立ての単(ひとえ)が多いですが、中には裏地があるものも。裏がウォッシャブル素材でない場合、ムリに洗うと裏地が縮み、着物全体が丸まってしまいます。
絹・ウール等との混紡・交織素材
一見して手触りが木綿着物でも、木綿100%ではないことも。絹やウールなどとの混紡・交織素材の場合、ご家庭では水洗いができません。
縮むと困る着物
木綿着物は洗うたびにある程度は縮みます。素材によっては初めての水通しで8%位縮んでしまうことも。おはしょりを作るのがギリギリ…といった着物の場合は、洗わない方が良いかもしれません。
色あせすると困る着物
伝統工芸品等で、草木染や先染等をしている場合、水洗いすることで風合いは変わります。それもまた味になるわけですが、新品状態の色合いを保ちたい場合には水洗いは避けた方が良いです。
特殊な加工がある着物
刺繍(ししゅう)や縫い付け、金箔等の箔押し、レース等、特殊加工がある着物は水洗いができません。その部分が色落ちしたり、縮んでシワになってしまうことがあるためです。
詳しくは製品の洗濯表示でよく確認をしましょう。水洗いできない木綿着物については、ベンジン等でお手入れを。ただし落とせる汚れは油溶性汚れのみとなるので注意が必要です。
木綿着物のシミ抜きにアルカリ洗剤
「木綿の着物」というと「木綿のTシャツ」のような感覚でシミ抜きやお洗濯がタフにできると考える方も多いようです。しかし木綿の着物はTシャツや一般的なシャツとは違って、合成アルカリ洗剤でガンガン洗うことはできません。
これはなぜか?というと、上でも少し触れましたが、洗濯による「縮み」が激しくなってしまうため。また藍(インディゴ)等の天然染色を行っている木綿着物は、アルカリ洗剤だと色落ちしたり、色あせが早くなってしまいます。
木綿着物のシミ抜きや洗濯に使える洗剤は「中性タイプの洗濯洗剤」、いわゆるおしゃれ着洗い用の洗剤のみです。
中性洗剤だけだと油汚れ等が落ちきらない…という場合には、事前にベンジンで軽く叩いて油脂系の汚れを溶かし出しておき、後から中性洗剤で水洗いをして仕上げます。
数日置いてからシミ抜きをする
木綿の着物にシミや汚れを見つけた時、シミ抜きにとりかかるのはいつでしょうか?「今は忙しいから」「洗うのが面倒だから」と、木綿着物のシミ抜きを先送りにしていませんか?
木綿着物についた汚れは、時間が経過すればするだけ木綿の繊維にしっかりと定着していきます。木綿着物のシミ抜きでは、上でも解説したように「アルカリ洗剤」等の強力な洗剤は使えないので、こうなってしまうと自分では対処ができなくなってしまうのです。
木綿着物のシミ抜きは、遅くとも汚れが付いた翌日までには取り掛かるようにしましょう。また次のようなシミは特に手強いので、シミがついた当日にできるだけ早く行うことが大切です。
定着しやすいシミ・汚れの例
- 血液のシミ
- ワインのシミ
- 果汁のシミ(100%ジュース等)
- コーヒー・紅茶のシミ
- ケチャップのシミ 等
なお「いつ付けたかわからない」といった木綿着物の古いシミについては、残念ながら自分ではシミ抜きができません。早めに専門店に相談をしましょう。
木綿着物に直接アイロンをかける
木綿着物のシミ抜きを行った後には型崩れを整えるためにアイロン掛けを行います。このときには、次の2つの点に注意が必要です。
汚れ落ちをよく確認してからアイロンを
アイロン前にはシミ抜きをした箇所を全体的にしっかり確認しましょう。汚れはキチンと落ちきっていますか?汚れが半端に残っている状態でアイロンによる熱を加えると、汚れが定着して取れなくなってしまいます。
必ず「あて布」をすること
木綿着物はアイロンの熱による「テカリ」が目立ちやすいです。一度アイロンでテカテカにさせてしまうと、残念ながら元に戻すことができません。
木綿着物の風合いを保つためにも、アイロンの際には必ず「あて布」をすることが大切ですよ。
おわりに
木綿着物のシミ抜きについて、やってはいけないポイントはおわかりいただけたでしょうか?木綿着物は「着物の中ではタフで扱いやすい衣類」ですが、私達の日常着である一般的なTシャツ等に比べるとデリケートな部分も多いです。
「この木綿着物はどうお手入れしたらいいんだろう?」「自分でシミ抜きをしたけどうまくいかない…」そんな時には、ムリにお手入れを自分で続けずに、早めに専門店に相談してくださいね。当店でも木綿着物についてのご質問を受付けていますので、お気軽にご相談ください。