【正解は?】着物のワイン汚れの応急処置・シミ抜き失敗例5つ
「着物にワインの汚れが付いた!」こんな時、どのように応急処置やシミ抜きの対処をするべきか知っていますか?一般的な洋服と同じつもりで着物のワインのシミに対処すると、思わぬトラブルになってしまうこともあります。
「こんなつもりではなかった」と後悔することが無いように、着物のワイン汚れについての正しい対処法を知っておきましょう。
【NG例1】着物のワイン汚れを濡れタオルで拭いた
外出先で着物にワインの汚れが付いた時に「応急処置を早くすれば汚れが完全に取れるかも」と焦ってしまう人は多いです。しかしワインのシミの場合、応急処置が適切でないと被害を広げてしまうことがあります。
濡れタオルで拭く
おしぼりで拭く
ウェットティッシュで拭く
絹の着物に水はNG
フォーマルな場で着る正絹(シルク)の着物や一部のウール着物は、水で濡らすほど収縮しやすく、その部分がウォータースポット(水シミ)になります。
シミ抜き料金が高くなる?
ワインのシミは、濡れタオル等で応急処置をするほど汚れの範囲を広げてしまいやすいです。
着物クリーニングのお店によっては、シミ抜きの料金を「シミの大きさ」で決めることもあります。例えば最初が1センチ程度のシミだったのに、応急処置で3センチ以上に汚れを広げた場合、シミの料金が2~3倍くらいに上がってしまう可能性もあるんです。
また、おしぼりやウェットティッシュに含まれるアルコール成分等が着物の染料を変色させて、元に戻すのが難しくなるケースも見られます。
「乾いた布で水分を取る」が正解
着物にワインのシミが付いたら、応急処置は「乾いたハンカチ・ナフキン」等で軽く水分を吸い取るだけにするのがもっとも理想的です。
「シミの色を応急処置で取りたい!」と焦らないことが大切!帰宅してからキチンと対処をしましょう。
【NG例2】「白ワインだから」と応急処置だけで済ませた
着物についた白ワインのシミは、乾くと見た目にはよくわからなくなるケースも多いものです。でも「応急処置はしたから」「目立たないから」と放置すると、後から大きなトラブルになってしまいます。
変色シミやカビの原因に
ワインに含まれるアルコールやぶどう果汁の成分は、時間が経つ毎に少しずつ着物の繊維に定着し、酸化して「変色ジミ」に進化していきます。
汚れた着物をシミ抜き等せずに保管すると、半年~1年以上が経ってから、薄い黄色や茶色等の取れにくいシミとして浮き上がってくるのです。
また、栄養分の高いワインのシミは着物にカビが生える温床にもなります。一度着物にカビが生えると、専門的なカビ取りをしなくては菌を除去できません。
白でも赤でも「シミ抜き」が正解
赤・白・ロゼとワインの色に関わらず、ワインのシミが付いたらきちんとシミ抜きのお手入れをしましょう。
ご家庭で洗える着物の場合には、中性洗剤で早めにお手入れを。水洗いができない着物については、悉皆屋や着物クリーニング専門店等に持ち込みます。
【NG例3】「洗える着物だから」と何日も放置した
ポリエステルや水洗い対応ウール等のご自宅で洗える着物の場合、早い段階でシミ抜きのお手入れをすれば、着物に付いたワインの汚れは落とすことができます。
普段のお洗濯に使っている洗濯用の中性洗剤(オシャレ着用のもの)を使い、汚れた部分を特に丁寧に手洗いすればOKです。
しかしシミ抜きのお手入れを後回しにしてしまうと、「洗える着物」でもご自宅ではワインのシミが取れなくなってしまいます。
定着すると取れないシミになる
ワインには「アントシアニン」という植物由来の色素成分が含まれています。着物にワインの汚れが付いてから乾くと、少しずつ生地にこのアントシアニンが定着し、染み込んでしまいます。
カンタンに言うと「染まった状態」になってしまうのです。染まってしまったシミは漂白等の対処が必要に。しかし、ご自宅では着物に対して作用の強い漂白剤の使用や浸け置き洗いができません。
- ワインのシミがすっかり乾いている
- シミの色が変色している
- いつ付けたシミかよくわからない
上のような場合には、「洗える着物」でもムリにご自宅でお手入れをせず、早めに専門店に相談しましょう。
【NG例4】安い料金なので「着物丸洗い」を選んだ
最近では宅配型で、とても安い料金で着物をクリーニングするお店も増えました。しかし気をつけたいのが「丸洗い(機械洗い)」しかできない激安系のお店にワインのシミを任せてしまうことです。
一般的な着物のクリーニングである「丸洗い(きもの丸洗い)」とは、洋服のドライクリーニングと同じで、石油系の溶剤を使って機械で着物を洗う方法です。
丸洗いでは軽い皮脂汚れ等の油性の汚れは落とせますが、ワイン等の「水性の汚れ」は落とすことができません。
繊維にワイン汚れの成分が残ります。時間が経って「変色シミ」「カビ」等のトラブルが後から起こる可能性は非常に高いです。
「シミ抜き」「洗い張り」等の対応を確認
着物に付いたワインのシミを落とすには、次のような専門的な対処が必要になります。
- シミ抜き:職人による手作業のシミ抜き。シミの範囲が小さい場合等に行います。
- 洗い張り:着物を一度ほどいて、水洗いをしてから布を貼り直す方法。汚れの程度が酷い場合等に行います。
- 染色補正:ワインのシミに漂白が必要な場合や、古いワインのシミを取り切るのが難しい場合等に行います。
着物にワインのシミが付いた場合には、職人さんがきちんとお手入れをしてくれる専門的なお店を選ぶことをおすすめします。
【NG例5】着物クリーニングの弁償金を先に受け取った
結婚式やパーティ等のお祝いの席で、相手のミスで着物にワインをこぼされた……このようなトラブルもありますよね。相手が飲食店等の場合ですと「お店側がクリーニング代(原状復帰の実費)を負担」となるケースも多いもの。しかし一方的に加害者側からお金を渡されて話を終了させるのは避けた方が良いです。
というのも、着物についたワインのシミは、その汚れの程度によって現状復帰させるための料金に大きく差がつくからです。
ほんの少しのワインのハネといった程度であれば、すぐに専門店に持ち込めば数千円といった料金で着物をキレイにできることもあります。しかしこれが「広範囲に多量のワインが染みた」といった場合ですと、着物をほどいて洗わなくてはなりません。料金はその手間の分だけ高くなります。
さらに最悪の場合、着物の加工や染色によっては、専門の業者でも修復が難しく、着物を元に戻せないことも考えられます。着物のシミ抜き料金の見積もりが取れ次第、あらためて料金を相手にお知らせすることをおすすめします。
レンタル着物でもワインのシミは別料金
レンタル着物のお店では、一般的な着物の汚れ(ファンデーションの汚れが衿に付いた等)はクリーニング代をレンタル料金込みとしていることが多いです。
ところが着物についた「ワインの汚れ」については別扱いに。「過度や過失の汚れ」ということで、別途の保障料金(クリーニング代)が必要となるお店がほとんどとなっています。
特に広い範囲のワイン染みは、「修復が難しく柄行に支障をきたす可能性も高い」ということで、レンタル着物でも5万~10万といった保障料金を求められることがあります。
それだけワインの染みはガンコで、対応が難しい染みなのです。着物をレンタルする際には、まず「商品の汚れや破損についての規則」をしっかりと読んでおきましょう。ワイン系の汚れには特に厳しいレンタル店さんが多いので、「レンタル着物を着る時にはワインを飲むのは避けた方が良い」とも言えそうです。
おわりに
着物についたワインのシミについて、「考えていたのとは随分違った」と驚いている人も多いのではないでしょうか。数ある着物のシミの中でも、ワインのアントシアニンはガンコで難しいシミと言われています。
専門店に持っていく場合でも、速さが勝負です!できるだけ早くお店に相談することで、着物が元に戻る可能性も高くなりますよ。