失敗しない!着物の血液汚れの応急処置とシミ抜き対処法
着物に付きやすい汚れのひとつに「血液のシミ」が挙げられます。気をつけていても生理やちょっとした切り傷等で着物に血のシミは付いてしまうもの。ところが、着物の血液シミは応急処置やシミ抜き等を失敗しやすい難しいシミなのです。
応急処置・シミ抜き前の6つのチェックポイント
着物の血液シミを応急処置やシミ抜きできるかどうかは、シミの状態や着物の種類で変わってきます。場合によっては着物に血液シミがついても、一切の応急処置ができないことも。焦らず、シミの状態や着物について確認しましょう。
1.血液シミの大きさを確認
着物に付いた血液シミの大きさは何センチ位ですか?
- 直径1センチ以下:他の項目もチェックし問題なければ、応急処置も自宅でのシミ抜きもできます。
- 直径1センチ以上:血液の量が多く、外出先の応急処置では汚れが取り切れない可能性が高いです。ムリに応急処置するより、ショール等で隠して帰宅し自宅でシミ抜きするか、専門店にそのまま持ち込むことをおすすめします。
- 直径5センチ以上:応急処置で汚れを取るのはムリです。また自宅でのシミ抜きも失敗する可能性が高く、輪染み等が残りやすくなります。
2.血液シミの染み出し方を確認
着物の血液汚れの状態を確認してみましょう。
- 表地に軽く付いている:他の項目がOKなら応急処置も自宅でのシミ抜きもできます。
- 裏地だけに軽く付いている:着付けを崩さないで済む程度なら、応急処置も可能です。
- 汚れが付いた裏側の布まで染みこんでいる:応急処置では汚れが取り切れない可能性が高いです。早めに自宅でシミ抜きするか、お店に持っていきましょう。
3.着物の血液シミは新しい?
着物についた血液の汚れは、乾燥すると一気に取れにくくなります。着物の血液シミがついたのはいつ頃でしょうか。
- 2~3時間以内についたシミ:他の項目がOKなら、応急処置で目立たなくできる可能性が高いです。
- 当日、24時間以内についたシミ:シミが乾いてしまっていたら、出先での応急処置は難しいかもしれません。自宅でのシミ抜きは間に合います。
- 3日以上経過している:シミが乾いており、自宅でのシミ抜きは失敗する可能性が高くなります。
- いつ付いたかわからない古いシミ:自宅ではシミ抜きができません。
4.着物の素材をチェック
血液のシミ・汚れを取るには、着物を濡らす工程が必要です。着物の素材によっては水濡れに極端に弱く、応急処置もシミ抜きもできない場合があります。
水濡れに強い着物
- ポリエステル
- ウォッシャブルウール
- 洗える木綿着物
上の種類の着物は応急処置・自宅でのシミ抜きを行うことができます。
水濡れに弱い着物
- 正絹
- ウール
- ウールと化繊の混紡
これらの着物は基本的に応急処置も自宅でのシミ抜きもNGです。特に正絹着物は水濡れに弱いので、応急処置もしない方が良いでしょう。着物の血液汚れが取れても、水を含んだ部分が縮んでしまう「ウォータースポット(水シミ)」というトラブルが起きやすくなります。
「着物の素材がわからない」というときも、ムリに応急処置はしない方が無難です。
5.血液シミがついた部分をチェック
着物の血液汚れが付いた部分はどこですか?
- 縫い目をまたいでシミがついている
- 刺繍(ししゅう)の部分(糸で柄が表現されている)
- ビーズやスパンコール等が縫い付けてある部分
- 模様がキラキラ輝いている部分(箔押し加工がされている)
- レースが付いている部分
- 帯、帯締め等の小物の部分
上のような「縫い目にかかるシミ」や、特殊加工がされている部分についた血液のシミには応急処置や自宅でのシミ抜きをしない方が良いです。加工が取れたり、加工部分だけが縮んだりする恐れがあります。
「着物の血がついた」と気づいたら、お友達等に手伝ってもらって血液シミが他にも付いていないかよく確認しましょう。
出先で着物についた血液汚れの応急処置
お出かけ先で着物に血液シミが付いてしまったら、まずは上の項目のチェックポイントをすべて確認しましょう。応急処置をしても問題が無いようであれば、作業に入ります。
血液シミの応急処置で使うもの
- ポケットティッシュ
- ミニタオルかハンカチ
※飲食店のおしぼりは応急処置には向いていません。おしぼりの香料・消毒成分等で、着物の生地が傷んでしまうことがあります。
※除菌ウェットティッシュも使わないことをおすすめします。アルコール成分等が着物に残ると、変色等が起きる可能性があります。
着物の血液汚れの応急処置手順
- 着物の血液汚れが付いた部分を、ポケットティッシュで優しく表面だけ拭います。強くこすったり押さえつけないのがポイントです。
- タオルかハンカチを水道水で濡らしてから、ギュッとよく絞ります。お湯は血液汚れを固めてしまうので使わないでください。
- 固く絞ったタオルで、軽くシミの部分を叩くようにして汚れを取り除いていきます。
- 汚れが目立たなくなったら、乾いたタオルかティッシュで最後に表面を軽く叩いて、残った水分を取ります。
なお応急処置はあくまでも「その場で着物の血液シミが目立たなくなった」ということであり、血液シミの成分が全部取れたわけではありません。
応急処置だけで血液汚れの対処を終わらせてしまうと、後から変色したシミになってしまうことがあります。必ず帰宅後には自宅でのシミ抜きを行うか、専門店にシミ抜きを依頼しましょう。
着物の血液汚れ・自宅で行うシミ抜き方法
上のチェックポイントで「自宅でシミ抜きができる」と確認できた場合には、帰宅後すみやかに着物の血液汚れのシミ抜きを行います。
着物の血液汚れのシミ抜きで使うもの
- 中性洗剤(おしゃれ着洗い用のもの)
- 汚れても良いタオル 4~5枚
- 洗面器
- 和装ハンガーまたは物干し
着物の血液汚れの落とし方
- 洗面器に水を入れてから、中性洗剤を少し垂らして溶かしておきます。
- 乾いたタオルを敷いた上に着物を広げます。
- 中性洗剤を溶かした水に別のタオルを漬けて、固く絞ります。
- 固く絞ったタオルで、シミの部分を軽く叩いていきます。
- 血の汚れがタオルに移るので、着物にあてるところを動かして、タオルのキレイな部分で汚れを吸い取るようにします。
- 着物の血の汚れが取れたら、別のタオルを水で濡らして固く絞ります。
- 濡らして絞ったタオルでシミを軽く叩いて、中性洗剤の成分を取ります。8)中性洗剤を使って全体を洗います。洗濯機が使える着物の場合はネット洗いをしてもOKです。
- 和装用のハンガーまたは物干しにかけて形を整え、直射日光のあたらない場所で陰干しします。
※作業にはぬるま湯・お湯を使わないでください。血液に含まれるタンパク質成分が固まってしまい、取れないシミになってしまいます。
※色落ちが心配な場合には、事前のテストを行いましょう。裏地等の目立たない箇所に中性洗剤原液を少量つけて5分置き、白い布をあてて色が取れるか確認します。
シミ抜きできないときは早めに専門店へ!
- 水洗いできない着物の血液汚れ
- 時間が経った血液汚れ
- 広い範囲の血液汚れ 等
上のような自宅での対処が難しい着物の血液汚れは、「着物専門」のクリーニングやお手入れのお店に相談しましょう。
着物の血液汚れは「きもの丸洗い」ではダメ?
着物の血液汚れは、一般的な着物クリーニングである「着物丸洗い」ではキレイに落とすことができません。着物をプロに依頼する時には、手作業での「着物のシミ抜き」ができる悉皆屋(しっかいや)や着物専門クリーニング店を選ぶことが大切です。
おわりに
着物の血液の汚れは、時間が経てば経つほど取れにくいシミに変化してしまいます!着物の血液シミを自分でシミ抜きする場合でも、悉皆屋等の専門店に依頼する場合でも、早め早めに行動することを心がけましょう。