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シミの対処方法

着物の水溶性汚れに絶対やってはいけない3つのシミ抜き対策とは?

水溶性のシミ

着物の水溶性汚れとは、お茶やジュース、お酒のシミ、汗の汚れ等、油分をほとんど含まない水分だらけの水性汚れのことを言います。Tシャツ等の一般的な洋服であれば、水溶性汚れは「すぐに洗えば落ちる」というカンタンな汚れですよね。

ところが「着物」に付いた水溶性の汚れだと、思ってもみない手強いシミとなることも。特に自分で行う着物のシミ抜きに失敗すると、大変な結果となってしまうこともあるんです。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 京都きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。ここでは着物の水溶性汚れで絶対にやってはいけない3つの対策について、また着物に水溶性汚れが付いた場合の手順等を紹介していきます。

正絹着物を濡れタオルで拭くのはNG

着物の水溶性汚れでついついやってしまいがちなNG行動。その代表的なひとつが「濡れタオルで応急処置をする」というものです。しっかり濡らしてから拭けば、汚れが取れるのでは…そう思う方も多いのではないでしょうか?

ところが着物の素材や染料によっては、これでシミ被害が広がってしまうことがあります。特に気をつけてほしいのが、正絹(シルク)等の水濡れに弱い着物です。シルクは水を含むと、その部分だけが縮んでしまいます。汚れが取れても、今度はその部分だけが縮んで色がおかしく見える「水シミ」になってしまった……こんな失敗例がとても多いのです。

  • 正絹の着物である
  • 素材がわからない
  • 染料がよくわからない
  • 天然染料染だと思う

特に上のような場合、応急処置ではできるだけ水を避けましょう。基本は乾いたタオルで汚れを吸い取るだけでOK。ほんの小さな汚れなら、固く絞ったタオルで処置ができることもあります。しかし1センチになるようなシミの場合、それ以上の応急処置はしない方が賢明です。

水溶性汚れにベンジンは無意味

今度はご自宅に帰って、自分で行うシミ抜きでのNG行動です。「シミの原因が水溶性汚れだけど、とりあえずいつものようにベンジンでシミ抜きしてみようかな…」これは絶対にやってはいけません!

そもそもベンジンとは「揮発油」であり、油汚れを溶かすためのものです。水ベースの水溶性汚れに対しては、ベンジンでシミ抜きをしてもまったく意味がありません。「汚れが落ちないから」と何度もベンジンで叩いたり擦ったりした結果、着物の表面が白っぽく毛羽立つ「スレ」ができてしまった…こんな失敗例も多く見られます。

水溶性シミに「丸洗い」は意味無し!

着物に付いた水溶性シミをクリーニングで落とそう…ということで、いつもの感覚で「丸洗い」を選んでいませんか?これも実は上のベンジンと同じで、意味の無い行動です。

着物の丸洗いとは、洋服で言うとドライクリーニング。石油系の溶剤を使って、着物を全体的に機械で洗浄しています。「セキユケイ」という言葉、ご覧になったことが有る方も多いことでしょう。

さて石油系の溶剤ということは…?そう、石油を使ったドライクリーニングで落ちるのは、基本的に「油溶性の汚れ(油性の汚れ)」だけなんです。例えば皮脂汚れとか、軽いファンデーション汚れといったものですね。

反対に水溶性の汚れは、石油系溶剤では溶けませんから、着物に残りっぱなしになってしまいます。丸洗いを頼んだお金がまるっきりムダ!になってしまうんです。

洗える着物はすぐにシミ抜きを

水溶性汚れが着物に付いた場合、どのようにシミ抜き等の対処をしたら良いのでしょうか?ご自宅で水洗い可能な着物の場合には、とにかく早くシミ抜きと全体的な水洗いをしましょう!水溶性汚れはスピードが命。いつシミ抜きするかで結果が決まります。

用意するもの

  • 中性タイプの洗濯洗剤(エマール等)
  • 洗濯用ネット(洗濯機使用の場合)
  • 着物用ハンガー
  • 柔軟剤(無香料のもの)
  • バスタオル2枚
  • アイロン、アイロン台、霧吹き

※必ず素材や洗濯表示を見て、自宅で水洗いができるものであると確認してください。
※型崩れ防止のため、衿元をざっくり縫い止めるか、安全ピン等で仮止めすることをおすすめします。

シミ抜きの手順

  1. ぬるま湯または水で、シミがある箇所を濡らします。
  2. 中性洗剤を水で少し薄めてからシミ部分に付けて、よく馴染ませます。
  3. ぬるま湯か水でよくすすいで、シミの状態を確認します。
  4. 汚れが落ちていたら、全体洗いを行います。洗濯機洗いが可能な着物の場合には、洗濯用ネットに着物を入れて、中性洗剤と柔軟剤をセットし、ソフトコース等で洗ってください。脱水は30秒~40秒程度、短めに設定しましょう。
  5. 手洗いの場合、バスタブや洗面ボウル等にぬるま湯をためて、中性洗剤を適量溶かしておきましょう。
  6. 着物を畳んでから洗剤液に漬けて、両手で全体を優しく押し洗いします。
  7. 水で2回程度すすぎを行います。
  8. 最後のすすぎで柔軟剤を少量入れて、全体に行き渡らせます。
  9. バスタオル2枚で着物をはさみ、ポンポンと叩いて水分を取ります。
  10. 着物用ハンガー、または物干しに着物をかけて、直射日光をあてないようにして自然乾燥させます。
  11. アイロンで仕上げ、形を整えます。

※タンパク質の多いシミの場合には、ぬるま湯を使わず真水にしましょう。温度でシミが固まってしまうことがあります。

なお、上の方法で着物についた水溶性シミに対処できるのは、汚れが付いた当日~翌日程度までが限度です。付いてから乾いてしまったシミは繊維に定着しているため、ご自宅でのシミ抜きでは落とすことができません。

洗えない着物は「着物専門のお手入れ店」へ

では時間が経って落ちないシミや、浮いてきた古いシミ、家では洗えない着物等はどうしたら良いのでしょうか?

小さいシミは「シミ抜き」を

比較的小さなシミの場合、専門の職人による手作業の「シミ抜き」で汚れが落ちる可能性があります。「着物のシミ抜き」ができるお店かどうか確認をしてから、依頼をしてみましょう。この時、ジュースのシミなのかお酒のシミなのか、汚れの原因を言い添えておくと良いですよ。

大きな汚れは「洗い張り」

  • シミの範囲が広い
  • シミがあちこちにある
  • シミが縫い目をまたいでいる

着物に付いた水溶性汚れが上のような場合には、シミ抜きではもう対処ができない…ということも。この場合、着物を一度ほどいて洗う「洗い張り(あらいはり)」が必要となることもあります。

「洗い張り」ができるのは専門の業者のみです。一般的なクリーニング店だと洗い張りはできないので「汚れが落ちない」と断られてしまうことがあります。悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れ全般を扱う専門業者)のような、着物の扱いに強い専門店に相談することをおすすめします。

おわりに

着物に付いた水溶性のシミの中には、お酒や汗といった「無色」のものも多いものです。これらの汚れは乾いてしまうと目に見えなくなりますが、汚れの成分が消えたわけではありません。数年の時を経て、後から「変色シミ」として浮き上がってくる…ということになります。

変色シミ(黄変)が起きてしまうと、専門店でもそれ以上の対処ができないことがあります。「水溶性の汚れを着物に付けてしまった」という時には、目には見えない汚れでも、できるだけ早くお店に相談をしてくださいね。

当店『きもの創夢』も悉皆屋ですから、もちろん水溶性汚れのシミ抜きのご相談も受け付けています!お困りのことがあったら、お気軽にご相談ください。

他店で断られたシミ承ります!

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