着物に鼻水の汚れ…シミ抜き方法は?注意点も徹底解説
かぜや花粉症等で鼻水が出やすい…こんな時「着物に鼻水のシミを作ってしまった」というトラブルは意外と多く見られます。また小さなお子さんと一緒に着物で外出した時、お子さんの鼻水がご両親の着物に付いてしまったというケースも珍しくないようです。
しかしよくある衣類のトラブルである割に、着物についた鼻水のシミについては意外とシミ抜き方法等の対処法が知られていません。
着物についた鼻水汚れのシミ抜き方法
着物についた鼻水のシミは、水分に溶けやすい「水溶性の汚れ」です。ただし一般的な水系のシミとは異なり、体液シミならではの「動物性タンパク質を多く含む」という特性も持っています。
上のような特性から、着物についた鼻水シミを自分で落とすには次の3点を欠かすことができません。
- 水で溶かし出す(水洗いをする)
- できるだけ早く対処をする(タンパク質汚れを乾かさない)
- 熱を加えない(タンパク質汚れを固めない)
洗濯表示・素材を確認しましょう
上で解説したとおり、着物についた鼻水の汚れをシミ抜きするには、家庭での場合、水を使った工程が必要になります。洗濯表示や素材が水洗いに対応しているかを確認しましょう。
鼻水汚れのシミの落とし方
用意するもの
- 中性の洗濯用洗剤:おしゃれ着洗い用のもの
- 歯ブラシ:毛が柔らかいもの
- 洗濯用ネット:着物が畳んで平らに入るサイズ(四角い形のもの)
- 和装ハンガー:着物専用のもの、洋服用ハンガーはNG。物干し竿でも代用可。
- バスタオル2枚
- 洗面器、洗面ボウル
- アイロン、アイロン台
※シミの状態等によっては、自分で鼻水の汚れが落とせないことがあります。このページの下の項目「家では落ちない着物の鼻水シミもある?」等も確認してから、シミ抜きの作業に入りましょう。
シミ抜きの手順
- 洗面器に冷たい水をためて、中性洗剤を適量溶かしておきます。使用量は製品パッケージ裏等の説明書を参照しましょう。
- 鼻水の汚れがついた部分を洗面器等に漬けて、10分程度つけおきにします。
- 鼻水のシミがついた部分に中性洗剤の原液を少量つけて、やさしく指で伸ばします。
- 汚れの部分を歯ブラシでごく軽くトントンと叩いていきます。ゴシゴシとこすったり、強く叩いたりはしないでください。
- 汚れが取れたら、軽く水ですすぎます。
- 着物を畳んでネットに入れます。
- 洗剤液を入れてある洗面ボウル等に、着物をネットごと全体的に漬けて、優しく押し洗いをします。
- 2回水を取り替えて、すすぎを行います。すすぎの際も、冷たい水を使ってください。
- 洗濯ネットに入れたまま、洗濯機の脱水機能で30~40秒程度脱水をします。あまり長く脱水するとシワになりますのでご注意ください。
- バスタオル2枚でやさしく挟んで、残った水分を取ります。
- 和装ハンガーにかけて、直射日光にあたらない場所で陰干しし、乾燥させます。
- シミが落ちているかよく確認してから、アイロンで形を整えます。
注意点
※着物の染料によっては、中性でも色落ち・色ハゲをすることがあります。不安な場合には、事前に目立たない場所や共布を使ってテストをしておくことをおすすめします。
※着物に鼻水のシミが付いている場合には、洗濯にお湯を使ってはいけません。鼻水のタンパク質が熱でかたまって、取れないシミになります。
※洗剤液に10分以上の浸け置きは行わないでください。素材が縮んだり、色落ちする原因になります。
※アイロン前には鼻水のシミが取れているかよく確認しましょう。鼻水の汚れが残った状態でアイロンをすると、鼻水のタンパク質が固まって取れないシミになります。
家では落ちない着物の鼻水シミもある?
着物の種類・鼻水のシミの状態等によっては、自分でシミ抜きをできないこともあります。
家で水洗いができない着物
正絹(シルク)の着物やウールの一部の着物等は、水で濡らすとはげしく縮むため、水洗いや水を使った家庭でのシミ抜きができません。
そのためシミ抜きの工程で「水」が必要になる鼻水汚れについては、ご家庭ではシミ抜き等の対処が残念ながらできないのです。
鼻水シミが乾いて白くなっている
着物についた鼻水のシミに含まれるタンパク質は、時間が経つ毎に繊維に強くこびりついて、取れないシミになります。白く固まって完全に乾いてしまったタンパク質汚れについては、残念ながら家で取り去ることができません。
Tシャツ等の洋服(普段着)であれば、タンパク質汚れを分解する酵素入り洗剤や、アルカリ洗剤を使うことができます。
しかし着物はデリケートなので、「洗える着物」でもこのような強い作用の洗剤をご家庭では使えません。着物の色が褪せてしまったり、部分的に色落ちしてしまうことがあるからです。
洗濯やアイロンを繰り返している
着物についた鼻水汚れのタンパク質は、「日光の熱」「アイロンの熱」等が加わることでどんどん固まって層のようになっていきます。
- シミ抜きをせずに洗濯機洗いだけで済ませた
- 直射日光にあてて着物を干した
- 気温が高い時に外干しをした
- 汚れが落ちきらないうちにアイロンをかけた
このようなお手入れを繰り返して「鼻水シミ」が残ってしまっている場合、シミがかなり頑固に固まっている可能性が高いです。これも残念ながら、家では落とすことができません。
着物の鼻水シミでクリーニングに出す場合の注意点
着物に鼻水の汚れがつき、クリーニングに出す場合には、次の点に注意することが大切です。
「丸洗い」では鼻水シミは落ちません
着物に付いた鼻水の汚れは、一般的な着物クリーニングである「丸洗い」では落とすことができません。「着物の丸洗い」とは石油溶剤を使ったドライクリーニング(機械での洗浄)で、油溶性の軽い汚れを落とすことはできるのですが、鼻水のような水性汚れは落とせないのです。
洋服クリーニングのチェーン店舗や、激安価格の着物クリーニング店等だと、着物の洗い方が「丸洗い」しかない場合があります。着物に鼻水の汚れが付いている場合には、このようなお店は不向きです。
職人が手作業するお店を選ぶ
着物の鼻水の汚れを落とすには、次のような作業が必要になります。
- シミ抜き:着物専門の職人が手作業で部分的な汚れを落とす方法です。シミの範囲が小さかったり、新しいシミであればシミ抜き(部分洗い)のみで汚れが落ちることもあります。
- 洗い張り:着物をほどいて反物の状態に戻し、専門の職人が水洗いをする伝統的な洗浄方法です。シミが広範囲だったり、古く固まったシミ等を除去する場合に使われます。
上のようなメニューがあるのは、着物のお手入れの専門業者である「悉皆屋(しっかいや)」や、職人が在籍している着物専門のクリーニング店等です。ホームページ等を見て、手作業でのシミ抜きや洗い張りができるかどうか確認しておくことをおすすめします。
撥水加工で鼻水汚れの予防対策
「鼻炎で鼻水のトラブルが多い」「子どもが小さいから、まだ何度も鼻水のトラブルが起こるかも…」そんな時には、着物に撥水加工(はっすい・かこう)をしてみるのも手です。
撥水加工をしておくと、軽い水性汚れを弾いてくれます。その場でさっと拭いた後、ご自宅で固く絞ったタオル等でよく叩いておけば、鼻水汚れ等も残りにくいです。
着用回数の多い着物、大切な高級着物等の予防対策として、撥水加工をしてみてはいかがでしょうか。当店でも加工を受け付けているので、お気軽にご相談ください。
おわりに
着物についた鼻水汚れに含まれるタンパク質は、カビ菌等の雑菌の好物でもあります。着物の鼻水汚れを放置すると、カビや変色シミ等、専門店でも対処が難しいシミになってしまうのです。
「着物に鼻水をつけたかも?」と思ったら、早めに対処をすることが大切ですよ。