ラーメン等のスープが着物にハネたら?シミ抜き対処法を解説
ラーメン等のスープは、味わっていると美味しいのですが、衣服にハネると厄介なシミになってしまいますよね。洋服類のシミでも、ラーメンのスープのシミにお困りになった方は多いのではないでしょうか。
普段着の衣類よりさらにデリケートな着物の場合、ラーメン等のスープのシミができた時には対応に注意が必要です。着物のシミ抜き等の対応を間違えると、着物を傷ませてしまうこともあります。
適切な対処法を知って、大切な着物を守りましょう。
水洗いOKの着物のシミ抜き方法
ラーメン等のスープは水をベースにしていますが、そこには動物性の油脂がたくさん含まれています。つまり水に溶ける「水溶性の汚れ」と、油に溶ける「油溶性の汚れ」の両方の特性を持っているのです。
そのため自分で着物についたラーメン等のスープのシミ抜きをするには、「油脂成分を分解する」→「水で洗う」という工程が必要になります。
まずはお持ちの着物が家庭での水洗いに対応しているかどうか、洗濯表示等を確認しましょう。
キッチン洗剤やクレンジングオイルはNG!
普段着の洋服類についたラーメンのスープのシミだと、次のようなアイテムをシミ抜きに使うという方も多いかもしれません。
- キッチン用洗剤
- クレンジングオイル 等
しかし上のようなアイテムは、着物のシミ抜きにはあまりおすすめができません。製品によって香料やアルコール、界面活性剤の配合等が異なるため、思いもよらぬ成分で変色や色落ち等が起きる可能性があるためです。
またクレンジングオイル等を使用すると繊維の間に乳化しきれない油脂成分が残ってしまい、別のシミができる恐れがあります。
ベンジンと中性洗剤でシミ抜きしよう
家庭での水洗いができる着物の場合、ラーメン等のスープのシミには「ベンジンでのシミ抜き」と「中性洗剤を使った手洗い」の両方を行います。
ベンジンは油溶性の汚れを分解するのに比較的向いているお手入れのアイテム。そこに中性洗剤での水洗いを加えることで、水性の汚れもスッキリと洗い落とします。
用意するもの
- ベンジン:クリーニング用のもの
- タオル:汚しても良いものを数枚
- ガーゼか小さめのタオル:汚しても良いもの
- 中性洗剤:洗濯用の液体タイプ。おしゃれ着用洗剤
- 洗濯用ネット:畳んだ着物が入るサイズ
- 着物専用ハンガー:物干し竿でも代用可
- アイロン:シワがきちんと伸ばせるもの。スチームのみは不向き
事前準備
- 肌が弱い方は手袋で肌を保護することをおすすめします。
- 窓を開けて換気をします。
- ストーブ、コンロ、ライター等の火器類は作業中には使えません。
- 着物の素材や染料によってはベンジンによる色落ち等が起きる可能性があります。裏側等の目立たない場所にベンジンをつけて軽く叩き、変色・褪色が起きないかテストをしておきましょう。
シミ抜きの手順
- タオルを敷いてから、着物を広げて上に置きます。
- ガーゼまたは小さめのタオルに、ベンジンをたっぷりとしみこませます。
- ガーゼでシミの部分を軽く叩いていきます。
- 汚れが下に落ちていくので、常にタオルやガーゼのキレイな面が当たるようにしながら叩き続けていきます。
- 汚れが落ちたら、もう一度ベンジンをたっぷりガーゼに含ませ、濡れたところの輪郭がわからなくなるようにぼかします。
- シミがある部分を外に出すようにして、着物を畳みます。
- 浴槽や手洗い場・洗面器等に水を入れて、中性洗剤を適量溶かします。
- 着物を畳んだ状態で水に漬けて、優しく押し洗いをします。
- シミがあった部分には少量の洗剤原液を漬けて、撫でるように優しく洗います。
- 汚れが落ちたら、水をとりかえて2回すすぎを行います。
- 着物を畳んだ状態でネットに入れて、洗濯機の脱水機能で40秒程度、かるく脱水させます。
- 着物専用のハンガーに干して、直射日光のあたらない場所で自然乾燥させます。
- アイロンをかけて形を整えます。
※ベンジンで強くこすらないようにしましょう。色ハゲや毛羽立ち等の原因になります。
※脱水をしすぎるとシワが取れなくなりますので注意しましょう。
状態によっては落ちないことも
次のような場合には、洗える着物でもラーメン等のスープのシミをご家庭で取るのは難しいです。
- スープがハネてから時間が経ち、乾いてしまっている
- 大量のスープが染み込んだ状態
- 以前についたスープの油シミが浮かび上がってきている
- 特殊なスパイスや香辛料が多いスープである
上のような場合には、無理に自分でシミ抜きを続けず、早めに専門店に相談をしましょう。
洗えない着物にラーメンのスープのシミが付いたら?
上でも解説しましたが、ラーメン等のスープの汚れには「水性の汚れ」と「油性の汚れ」の両方が混じっています。そのため汚れをキチンと取るには、ご自宅でのお手入れでは「水洗い」が必要になってしまいます。
正絹・ウール等の水洗いができない着物については、残念ながらご家庭でスープのシミ抜きをすることができません。次のような点に気をつけてお店を選び、専門店で汚れを落としてもらいましょう。
「丸洗いのみ」のお店はNG
「着物をクリーニングに出す」と言うと、「きもの丸洗い」を想像する方もいるのではないでしょうか。丸洗いは最も一般的な着物のお手入れで、シーズンの終わりに着物をしまう前等に利用する方が多いです。ところがこの「丸洗い」では、着物についたスープ等のシミは落とすことができません。
「丸洗い」は石油溶剤を使った機械洗いなので、付いたばかりの皮脂汚れなど、軽い油溶性汚れを落とすことはできます。しかしラーメンのスープのような水性の汚れを落とすことは不得意です。「クリーニングに出したから大丈夫」と思っていると、汚れの成分が繊維に残っていて、変色やカビの原因となってしまうこともあります。
「シミ抜き」や「洗い張り」ができる店を選ぶ
では専門店で着物に付いたラーメン等のスープのシミを落とすには、どのような対応が必要になるのでしょうか。
必要になるお手入れの例
- シミ抜き:職人が手作業で布のシミを取り除いていく方法です。シミが小さい場合等には、シミ抜き(部分洗い)のみで対応ができることもあります。
- 洗い張り:一度着物をほどいて反物の状態に戻し、水洗いをしていく方法です。汚れの範囲が広かったり、汚れの症状が重い場合等に使われます。
- カビ取り:汚れが原因となってカビが発生している場合には、カビ菌を除去する作業が必要になります。
- 黄変抜き:汚れが付いてから長い時間が経つと、シミが酸化して「黄変」という変色した状態になります。この場合には、職人による漂白や染色補正といった対応が必要になります。
着物に付いたシミの大きさや程度、シミの古さ等によっても、必要となるお手入れの方法は変わってきます。シミ抜きや洗い張り等、幅広いお手入れの方法を案内できる専門店を選ぶことをおすすめします。
おわりに
ラーメン等のスープには、動物の骨や野菜くず等、様々なエキスが含まれています。その分だけ、着物等の布地につくと汚れを分解することが難しく、厄介なシミになってしまうのです。
着物でラーメン等を食べる時には、手ぬぐいやナフキン等で汚れからカバーする予防策をしっかりと取ることも忘れないようにしましょう。特に麺類は汁をはねさせやすいので、普段より静かに召し上がることも意識すると良いですよ。