七五三の着物の柄の種類は?どんな意味?詳しく解説
七五三は、お子様のこれからの健やかな成長を願って行われる大切な行事です。その時に身に纏う七五三の着物(一つ身、三つ身、四つ身等)の柄にも、実はお子様を華やかに見せるだけでなく、お子様への様々な願いが込められていることはご存知でしょうか。
現在では着物文化が一般的でなくなったことから、着物の柄の意味がよくわからない…という人が少なくありません。
花の文様
女の子の着物の柄ですと、もっとも多い柄行といえるのが花の文様です。柄行が美しいというだけでなく、「花のように美しく、優しく、華やかな女性に育って欲しい」という願いを持つ方が多いのも関係をしているのでしょう。それぞれの花の柄の意味合いについて説明していきます。
牡丹:豊かで華やかな人生を
牡丹(ぼたん)は中国からやってきた花で、見た目がとても華やかなのがポイントです。日本でも古来からその見た目が愛され、「百花の王」とも呼ばれてきました。なお牡丹は野花ではなく、ていねいな手入れによって咲き誇る花であり、主に王族や貴族等に好まれた花です。そのため「冨」や「豊かさ」の象徴であるともされています。
「豊かな人生を送ってほしい」「鮮やかで華やかな人になってほしい」といった願いが込められた花柄と言えるでしょう。
橘:長寿や健康・繁栄を
橘(たちばな)は柑橘類の一種です。みかんの木等に似た、白くて小さな花をつけます。その愛らしさは古来より日本で好まれ、平安時代の和歌等にも度々読まれてきました。常緑樹で常に緑の葉を生き生きとはやす姿から「常世の国(不老不死の理想郷)に生える植物」とも昔は考えられ、現在でも長寿や健康を意味する花として好まれています。
四君子:四季それぞれの気品と強さを
四君子(しくんし)とは、蘭と竹、そして菊と梅をあわせた花柄のことを言います。蘭が春を、竹が夏を、菊が秋を、梅が冬をそれぞれ表す「四季の花」の柄行です。どんな季節にも来られるフォーシーズン仕様という点が、昔から好まれてきました。
四君子は古代中国で偉人や立派な人を表す言葉であり、現在でも蘭のような気品、竹のようなまっすぐさ、菊のような鮮やかさ、梅のような凛とした強さが意味として込められています。四季を通じてどんな時にも強く美しくあってほしい–そんな柄行と言えるでしょう。
吉祥文様
吉祥文様(きっしょうもんよう)とは、特に縁起が良いとされる動物や植物、物品等を描いた文様のことを言います。縁起の良い柄行を身に纏うことで、着用する人にも良いことが起こることが願われています。
鶴:長寿と健康・上品で気高く
鶴は「千年生きる」と言われるほどに長寿であるとされてきた鳥です。日本では万葉集にも登場するほど古くから人々に好まれてきました。現在でも鶴の文様は「元気で長く生きてほしい」「健康であってほしい」といった願いを込めた七五三の定番柄となっています。
そのスラリとして神秘的な姿も、鶴の人気のポイントです。鶴が飛ぶ姿のように、上品で気高く、凛とした生き方をしてほしいーー鶴文様を選ぶご家族には、そんな願いを持つ方も多いのではないでしょうか。
亀甲:長寿・繁栄・成功・上昇
鶴が「千年生きる」動物なら、更に長生きとされたのが「万年生きる」と言われた亀です。亀甲柄(きっこうがら)はこの亀の甲羅をシンボルとし、デザインした柄となっています。亀のように一万年ほども元気で長生きをしてほしい…そんな願いが込められた柄なのです。
ちなみに亀甲柄の歴史はとても古く、聖徳太子が活躍した飛鳥時代には既に衣装に使われていたことがわかっています。千年以上も「良い柄」とされてきた実績ある吉祥文様と言えるでしょう。鶴の文様と亀甲の地紋を合わせた「鶴亀柄」も人気があります。
松竹梅:長寿繁栄・成長・喜び・強さ
松竹梅は松・竹・梅の3つの植物を組み合わせた柄です。この3つの植物はいずれも非常におめでたい柄であるとされており、現在も七五三はもちろん、結婚式や式典等、おめでたい席では必ず使われる「定番の吉祥文様」とされています。
松はいつでも豊かな緑を見せる常緑樹であることから「変わらぬ長寿」を、竹のまっすぐな姿は「すくすくとした成長」を、そして雪解けを割るようにして咲く梅は「凛とした強さ、気高さ」を意味する柄です。松、竹、梅とも単体でも用いられる柄ですが、3つを組み合わせた柄は特におめでたい柄として人気があります。
宝尽くし:良いことがたくさんあるように
「宝尽くし(たからづくし)」とは、吉祥文様をたくさん描いた柄行のことを言います。上に揚げた鶴亀や松竹梅等に加えて、宝珠、軍配、だるま、打ち出の小槌、金嚢(きんのう)、丁字等おめでたい柄ばかりを集めた可愛らしく華やかな柄が特徴です。
「長生きもしてほしいし、お金持ちにもなってほしい、健康でもあってほし、強く生きて欲しい…」といったご家族の様々な願いを全部ひとまとめにした柄行と言えそうですね。宝尽くしは小さめの柄を散りばめたデザインにもしやすいので、三歳の七五三のお祝いにも好まれる柄です。
ちなみに「宝尽くし」は地域によってどんな「宝」が入るかが少しずつ違います。中には「鯛」がはいったり「狛犬」等が描かれる地域もあるんですよ。地元に密着した「宝尽くし」を選ぶのも魅力と言えそうです。
勇壮な柄
勇壮な柄行は、男児の七五三の着物に用いられることが多い柄行です。3歳のお祝いですと柄が少々映えにくいので、五歳のお祝いの際に柄行の大きなものを選ばれる方が多いです。
兜:成功・大成・才人
兜(かぶと)の柄は男児の七五三着物の定番柄の一つです。兜は武将が戦う時にかぶる武具であり、その勇ましさ、強さを感じさせるデザインが昔から好まれてきました。近年では武将が「トップに立つ人」であることから、人の上に立てるような立派な人になるように、成功をするようにといった意味も大きく込められるようになっています。
軍配:統率・成長・決断
軍配(ぐんばい)とは、武将が手に持って戦の時に采配をふるうために使った「うちわ」のような形のものです。近年ですと、大相撲の行司さんが勝負判定の際に使うもの、というとおわかりになる人もいるのではないでしょうか。
軍配は兵を動かす時に使うものなので「統率力がある人間になってほしい」「リーダーになれる人間になってほしい」といった願いが込められています。また「良い決断ができるように」「物事を自分で決められる人間になれるように」といった意味合いでも好まれる柄です。
鷹:強靭・勇壮・幸運
鷹(たか)はその勇壮な姿から戦国武将にも好まれ、愛されてきた鳥です。現在でもその「勇壮さ」「強靭さ」が良しとされ、「強く生きて欲しい」という願いを込めた柄行として好まれています。
また鷹は狩りが得意で遠くの獲物を見つける目の良さもあることから、「幸運を掴む」「広い視野を持つ」といった意味もある柄と言えます。
おわりに
七五三ははるか昔から続けられてきた伝統のある行事です。今も昔も、親が子どもに願うのは「健やかであってほしい」ということ。着物の柄には、そんな願いが強く込められています。
七五三の着物を選ぶ時には、見た目の美しさももちろんですが、柄にどんな意味があるのかも知っておくと良いですね。ぜひ素敵な柄の着物で、七五三をお迎えください。