浴衣に汚れやシミ!応急処置は?対処法は?プロが徹底解説
花火やお祭り等、夏のレジャーには欠かすことができない浴衣。「ふだんは着物はあまり着ないけれど、浴衣なら」という人も多いのではないでしょうか。
この浴衣、汚れやシミが付いた時の応急処置やシミ抜き等の対処法はご存知ですか?正しい対処をしないと、来年浴衣が着られない…なんてこともあるんです。
浴衣の汚れ・シミの応急処置
出先で浴衣に汚れやシミがついた時には、次のように対処をしましょう。
- ティッシュペーパー等で表面の汚れを取り除きます。汚れの水分が多い場合は、タオルやハンカチで吸い取ります。
- 水で濡らしてから絞ったタオルで軽く叩きます。
- 乾いたキレイなタオルで軽く押さえて、水分を吸い取っておきます。
※絹紅梅や特殊加工がある浴衣の場合は、濡れタオルを使わずに乾いたティッシュで表面の汚れを取るだけにしましょう。
おしぼりやウェットティッシュはNG
浴衣の汚れの応急処置に、飲食店のおしぼりやウェットティッシュ類は使わないようにしましょう。これらの製品にはアルコールや香料の他、近年では様々な除菌成分等も加えられています。藍等の天然染料がよく使われる浴衣の場合、色落ちや変色をしてしまうことがあるのです。
濡らしすぎないことが大切
「応急処置で汚れを取りきろう」と、濡らしすぎてしまうのはNG。汚れの原因が油溶性の場合、水で濡らしても汚れは分解されず、かえって汚れが広がってしまうことがあります。
帰宅したらすぐに浴衣のシミ抜きを
浴衣にシミや汚れが付いたら、応急処置だけで終わらせるのはNGです。帰宅したら必ず自分でシミ抜きをするか、専門店でシミ抜きを依頼しましょう。
浴衣のシミ抜き・洗い方
浴衣でお出かけをして帰宅したら、できるだけ早く浴衣のシミ抜き・洗濯にとりかかります。汚れ・シミがついた浴衣のシミ抜き方法や洗い方を見ていきましょう。
1.油溶性汚れをベンジンで落とす
油溶性の汚れとは、油で分解される汚れのこと。油分が多く、水では分解しきることができません。浴衣を通常通りに洗うだけでは油汚れが残り、油染みができてしまうことがあります。
油溶性の汚れの例
- オリーブオイルのシミ
- バターのシミ
- 皮脂のシミ
- 口紅のシミ
- ファンデーションのシミ
混合性汚れの油脂成分
普段着の衣類であれば油性汚れも一発で落とす強い合成洗剤も使えるのですが、縮みや色落ちしやすいので浴衣には不向き。そのため、この油溶性の汚れには「ベンジン」という石油から生まれた溶剤で対処します。
準備するもの
- ベンジン:薬局やドラッグストアで買えます。価格は500円~1,000円位です。
- バスタオル等の大きめタオル:汚れて捨てても良いものが理想的。
- ガーゼや柔らかい布:こちらも汚れて良いものを準備します。色落ちを避けるため、薄い色か白のものを準備してください。
シミ抜きの手順
- 大きめのタオルを敷いて、その上に浴衣を広げます。
- ガーゼか布にベンジンを染み込ませます。少量ずつではなくたっぷり使った方が良いです。
- 浴衣のシミの部分をガーゼか布で軽くポンポンと叩きます。
- ベンジンで汚れが溶け出し、タオルに汚れが落ちていきます。常にガーゼか布のきれいな場所が浴衣に触れるように、ガーゼを動かします。
- 汚れが落ちたら、ガーゼにもう一度ベンジンを染み込ませます。
- ベンジンで濡れた場所と乾いている場所の境目を叩きながら、境目(輪郭)がわからなくなるようにぼかしこんでいきます。
- すぐに次の「2.水洗い」の手順に移ります。
注意点
- ベンジン使用中は必ず換気をしましょう。密閉した部屋での作業は危険です。
- ライターやコンロ・マッチ・ストーブ等の火器類は、ベンジン使用中には使えません。引火性なので家事の原因になります。
- ベンジンでも色落ち・変色が起こることがあります。裏地・共布等を使って変色テストをすることをおすすめします。
- ベンジンを含ませたガーゼ・布で、シミの部分をゴシゴシこすったり強く叩くのはやめましょう。色ハゲやスレの原因になります。
2.水溶性汚れを水洗いで落とす
水溶性の汚れとは、水に溶けやすい汚れのこと。水と油の両方を含む「混合性の汚れ」の場合、先に上のベンジンのシミ抜きで油汚れを取り除いておき、それからこのプロセスで水性汚れを落とします。
水溶性のシミの例
混合性汚れの水性成分
水溶性汚れは水に溶けやすいことから、シミ抜きでは水洗いを行います。デリケートな浴衣への副作用が少ない中性洗剤を使いましょう。
準備するもの
- 中性の洗濯用洗剤:おしゃれ着洗い用のもの(エマール、アクロン等)
- 洗濯用ネット:浴衣を畳んだ状態で平らに入るサイズ、四角い形のもの
- 和装ハンガー:着物専用のもの。物干しを使ってもOK。洋服用ハンガーは型崩れの原因になるので不向きです。
- アイロン:スチームアイロンは不可
※水洗いした浴衣はかなり型くずれします。アイロンで形を整えるプロセスが必要です。アイロンが無いご家庭の場合には、専門店に浴衣を持ち込むことをおすすめします。
シミ抜きの手順
- 浴衣はシミがある部分が一番外に出るようにして畳んでおきます。
- 洗面ボウルや浴槽に水またはぬるま湯をためて、中性洗剤を溶かし、溶液を作っておきます。
- 浴衣を軽く水で濡らしてから、シミのある場所に少量の中性洗剤の原液を付けて、指でやさしく撫でるように洗います。
- 洗濯用ネットに浴衣を入れます。
- 作っておいた溶液(洗濯液)に全体的に漬けて、優しく両手で押し洗いをします。
- シミ汚れが取れたら、2回水を取り替えてすすぎます。
- 洗濯ネットのまま洗濯機に入れて、30秒程度、軽く脱水させます。
- 着物用のハンガーか物干しにかけて、引っ張ってシワを取り、よく形を整えておきます。
- 直射日光を避け、風通しの良い場所で乾かします。部屋干しの場合は扇風機等で風をあてましょう。
- シミが取れているかよく確認してから、アイロンで形を整えます。
注意点
- 浴衣についたシミが「卵を含むシミ」「乳を含むシミ」「血液シミ」の場合、洗濯にはぬるま湯を使用せず、水を使いましょう。お湯を使うとタンパク質が固まってしまい、取れないシミになってしまいます。
- シワがつきやすい素材の場合には、半乾きの状態でアイロンをかけることをおすすめします。
- 浸け置き洗いは縮む原因になるのでしないでください。
- 長い脱水は深いシワの原因となるのでNGです。
家で洗えない浴衣・落ちないシミもある?
浴衣の種類によっては、自宅で洗うことができないものもあります。素材や加工だけでなく、洗濯表示もよく確認しましょう。
洗えない浴衣の例
- 絹紅梅等の絹を使っている浴衣
- しぼりの浴衣
- 金箔・銀箔等の箔押し加工がある浴衣
- 刺繍(ししゅう)がある浴衣
- ビーズ・スパンコール等の縫い付けがある浴衣
- レース加工がある浴衣
- 浴衣の帯 等
また、次のような浴衣のシミ・汚れは家では落とすことができません。
落ちない汚れの例
- 時間が経った古いシミ(数日~1ヶ月以上経過している)
- 黄ばみ・黒ずみ(酸化してた変色シミ)
- 古い茶色いシミ(昔の汚れが酸化してできた黄変)
- カビによるシミ(カビ菌の繁殖によるもの、カビ臭さ等)
- 色素の強いシミ(ワインのシミ等で繊維が染まっている)
「浴衣が家で洗えない」「汚れが家では落とせない」「アイロンが無くて家で洗うのが不安」といった場合には、できるだけ早く専門店にシミ抜きを依頼しましょう。
おわりに
洋服クリーニングのお店では、浴衣の難易度の高いシミ抜きはできないこともあります。浴衣についたシミ・汚れをしっかり落としたい!という時には、悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れを総合して行う専門業者のこと)等、着物を専門に扱うお店に相談することをおすすめします。