着物に付いたスパゲッティ・パスタの汚れをシミ抜きする方法は?
スパゲッティにタリアテッレ、ペンネ、ラザニア……今では日本ではイタリア料理はすっかり定着し、様々なパスタ料理を食べる機会が増えましたね。日常ではもちろん、結婚式やパーティーでもスパゲッティ等のパスタ料理が出るコースもよく見かけるようになりました。
その分だけ「着物にスパゲッティやパスタの汚れを付けてしまった」というトラブルも増えているようです。スパゲッティ等のパスタ料理の汚れは、なかなか落とすのが大変!スパゲッティの汚れに適当にシミ抜き等の対処をすると後から油シミが浮いてくることもあるので、正しい対処をしていくことが大切です。
着物のスパゲッティ・パスタ汚れの応急処置対策は?
まずは出先でスパゲッティやパスタの汚れを着物に付けた時の応急処置について解説します。応急処置の方法は、以下の2つまででOKです。
- 麺や具等の固形物をすべて取り除きます。
- ティッシュペーパー(または紙ナフキン)で優しく抑えて、水分を吸い取っておきます。
「え?それだけ?」と思うかもしれませんが、正解はここまで。出先で水で濡らしたり、濡れタオル等で叩いたりするのは良くありません。これには2つの理由があります。
「水シミ」を作らないことが大切
着物に付いたスパゲッティ・パスタのシミを取ろうと濡らしたタオル等で繰り返し叩くと、布が水分を吸っていきます。すると正絹(シルク)などの水濡れに弱い素材の場合、その部分が縮んで「水シミ」になってしまう恐れがあるのです。
油が多いシミは濡らすと広がる!
スパゲッティ(パスタ)料理には、オリーブオイル等の「油」が多く含まれています。この汚れは水では分解できず、濡らせば濡らすほど汚れが水に乗って広がっていきます。
後からシミ抜きする際の作業が大変になってしまったり、専門店でシミ抜きする場合の料金が上がってしまう可能性が高いのです。
出先でのスパゲッティ(パスタ)のシミの応急処置は「水分を取っておく」というところまで。その部分にあまり触れないようにして、帰宅しましょう。
着物についたスパゲッティ汚れのシミ抜き方法は?
着物についたスパゲッティ(パスタ)の汚れは、水性汚れと油性汚れの両方の性質を含む「混合性」の汚れです。Tシャツ等の普段着であれば、洗浄力の強いアルカリ系合成洗剤を使って洗うだけでもパスタ汚れを落とせることでしょう。
しかしデリケートな着物の場合、全体をアルカリ系洗剤で洗うことはできません。そのため油分の汚れは「ベンジン」という石油系の溶剤を使って分解し、その後で中性洗剤を使って水性の汚れを落とす「2段階のシミ抜き」を行います。
事前に確認しましょう!!
着物に付いたスパゲッティ・パスタの汚れをご家庭で落とすには「水洗い」の工程が必要です。ご家庭で水洗いができない着物は、ご自分でのスパゲッティ・パスタのシミ抜きができません。お持ちの着物の洗濯表示や素材・染料等をよくご確認の上、シミ抜き処理は自己責任で行ってください。
用意するもの
- ベンジン
- 柔らかい布
- タオル(汚れても良いもの)
- バスタオル2枚
- 中性タイプの洗濯洗剤(おしゃれ着洗い用のもの)
- 洗面器等の容器
- 柔軟剤
- 洗濯用ネット(本畳みした着物が平らに入るサイズ)
- 着物専用ハンガー(物干しでも代用OK)
- アイロン、アイロン台
下準備
※窓を開けて換気します。ベンジンは揮発性で刺激が有るので、作業中や乾燥中は換気を必ず行います。
※ベンジンは引火性です。ストーブ・ライター等の火器類の使用はすべて中止します。
※襟元が崩れやすい着物の場合、安全ピン等で仮止めをするか、ざっくりと縫い止めておきます。
シミ抜きの手順
- 汚れても良いタオルを広げてから、上に着物を置きます。
- 柔らかい布にベンジンをビショビショになる程度に染み込ませます。
- シミがある部分を柔らかい布で軽く叩き、油汚れを溶かして下に落としていきます。
- タオルや布が汚れるので、少しずつ動かしてキレイな面が当たるようにしながら作業を続けます。
- 十分に汚れが落ちたら、もう一度ベンジンで布を濡らしてシミの周辺を叩き、境目をぼかしておきます。
- シミがある部分に35℃前後のぬるま湯をかけて、濡らします。
- 洗面器等の容器にぬるま湯を少し入れて、中性洗剤を溶かして薄めておきます。
- 薄めた洗剤液をシミがある部分に付けて、指でよくなじませます。
- 汚れが落ちたら、ぬるま湯でよくすすいでおきます。
- バスタブや洗面ボウルにぬるま湯を入れて、中性洗剤を適量溶かします。使用量は製品裏の説明書を見て「手洗い」の量を参照しましょう。
- 着物を本畳みしてからネットに入れて、作っておいた洗剤液に全体的に漬け込みます。両手で優しく押して、全体を押し洗いしましょう。
- ぬるま湯を2回入れ替えて、すすぎを行います。
- ネットのまま洗濯機の脱水機能を使い、30秒程度軽く脱水させます。型崩れが不安な場合には省略してかまいません。
- バスタオル2枚で着物を挟んで軽く叩き、優しく水分を吸い取ります。
- 専用ハンガーに着物をかけて、形をよく整え、直射日光を避けて自然乾燥させます。
- シミの状態をよく確認してから、素材に合わせて温めたアイロンでシワをよく伸ばし、形を整えます。
注意点
※クリーム系パスタ、卵を使ったパスタの場合、シミ抜き・洗濯で「ぬるま湯」を使うのはやめて冷水を使いましょう。お湯を使うと汚れのタンパク質が固まって、取れにくい汚れになります。
※ベンジンを含ませた布で強く擦ったり叩いたりするのはNGです。表面が白っぽく毛羽立つ「スレ」が起こると、元に戻せなくなります。
※シミ抜き・乾燥後に万一汚れが残っている場合には、アイロンがけは中止して、専門店に相談しましょう。シミがが残った状態でアイロンをあてると汚れが固まり、取れにくい汚れになります。
家では落ちないスパゲッティ・パスタの汚れもある?
着物の種類やスパゲッティ・パスタのシミの状態によっては、自分ではシミ抜きができないこともあります。
自宅では対処できない着物・シミの例
水洗いできない着物
時間が経って乾いたシミ
洗った後で浮いてきた油シミ
洗った垰で薄く残っている色汚れ
変色したシミ
広範囲のシミ(直径3センチ以上)
縫い目をまたいでいるシミ(着物の縫い糸に汚れが染み込んでいる場合)
スパゲッティ・パスタの汚れの場合、トマトソース等の野菜類の構成が多いため、着物に汚れが早く定着しやすい傾向があります。自宅で着物のシミ抜きの対処ができるのは、汚れを付けた当日~2日程度までと考えた方が良いでしょう。
家で落とせない汚れは専門店へ
着物が家で洗えない場合や、自宅でのシミ抜きでは落とせなそうな場合には、早めに専門店に相談をしましょう。なおパスタ・スパゲッティのシミは「丸洗い(全体的なドライクリーニング)だけでは落とせません。必ず汚れの原因をつたて、部分的な「シミ抜き」を行ってもらうことが大切です。
おわりに
着物に付いたスパゲッティ・パスタの汚れは、ほんの少しのハネということも多いものです。「この程度なら…」と甘く見ていると、後から汚れが取れなくなってしまったり、思わぬ変色シミとなってしまうことがよくあります。
パスタ汚れはスピード勝負。ご家庭でシミ抜きをする場合でも、専門店に持ち込む場合でも、早め早めに対処をすることが最も良い対策と言えるでしょう。