着物にケーキの汚れ…シミの対処法は?よくある質問に答えます
生クリームたっぷりのショートケーキやチョコレートケーキ、ベリーのタルト、シュークリーム…ケーキ等を始めとしたスイーツ類は、今も昔も多くの人達に好まれています。着物でお出かけをした時にカフェでケーキをいただいたり、コースのデザートとしてケーキが出てくる…なんてこともよくありますね。
さてこのケーキを着物に落としてしまった場合、シミ・汚れの対処はどうしたら良いのでしょうか。慌ててまちがった応急処置をすると、かえって汚れを広げてしまうこともあります。また着物のケーキ汚れを放置した結果、大変な変色が起きてしまうこともあるんです。
大切な着物を守るために、着物についたケーキの汚れの応急処置やシミ抜き等の対処法を知っておきましょう。
着物のケーキの汚れ、応急処置はどうしたら?
着物についたケーキの汚れ・シミの応急処置は「表面の汚れを取るだけ」にしておきましょう。ティッシュペーパーや紙ナフキン等を使って、表面に盛り上がっている汚れを優しく取り除きます。叩いたりこすったり、繊維に入り込んだ汚れを取らないようにします。
着物についたケーキのシミに対して、焦って次のような応急処置を取るのはNGです!かえって汚れを広げてしまいます。
濡らす・水拭きはNG
ケーキの汚れは油分を多く含むので、濡らすだけでは汚れは取れません。水を与えることで余計に汚れが広がって、あとから行うシミ抜きが大変になってしまいます。水で濡らしたり、濡れたタオル等をシミ抜きに使うのはやめましょう。
おしぼり・ウェットティッシュ等もNG
着物についたケーキ汚れに対して、おしぼりやウェットティッシュ等、香料・アルコールを含むものでの応急処置をするのも厳禁です。デリケートな素材の場合、成分で変色を起こすことがあります。
応急処置で目立たなくなったけど、シミはこのままで平気?
着物についたケーキのシミは、後から「油ジミ」等になって浮き上がってきます。応急処置後に目立たなくなっても気を抜かず、かならずシミ抜きを行うようにしましょう。
振袖のケーキの汚れは自分でシミ抜きできる?
着物のケーキの汚れを自分でシミ抜きできるかどうかは、着物の素材や洗濯対応の可否によって変わってきます。シミ抜きを始める前に、洗濯表示や素材等を必ず確認しましょう。
シミ抜きができる着物とは
ケーキのシミ抜きでは、油分汚れを落とした後に水を使う工程が必要です。手洗いや洗濯機洗いに対応している着物であれば、ケーキのシミ抜きを自分で行うことができます。
- ポリエステル着物
- 一部の木綿着物
- ウォッシャブルウールの着物
- ウォッシャブル加工済の着物 など
シミ抜きができない着物とは
水濡れに弱い素材や、特殊加工がある着物などはシミ抜きをするとその部分が縮んだり変質してしまうため、家ではシミ抜きをすることができません。専門店での対応が必要になります。
- 正絹の着物
- シルク混紡、シルク交織の着物
- 金箔等の特殊加工がある着物
- 刺繍のある着物
- 絞りの着物 など
なお一般的に、留袖・振袖・喪服着物などのフォーマル向け着物は正絹(シルク)で作られていることが多いです。ただし製品によって素材がまったく違うため、一概に「着物の種類」だけで洗濯対応を判断することはできません。
着物についたケーキの汚れをシミ抜きする方法は?
着物についたケーキの汚れを取るには、ベンジンで生クリームやバターに含まれる油分を分解してから、中性洗剤で残った汚れを落とします。
用意するもの
- ベンジン
- 中性の洗濯用洗剤
- タオル 数枚
- 柔らかい布 数枚
- 洗濯用ネット
- 洗面器等の容器
- 着物専用のハンガー
- アイロン・アイロン台・霧吹き
- アイロン用のあて布
- 台所用洗剤(ポリエステル着物の場合)
下準備
- ベンジン作業中は窓を明けて換気をします。密閉された空間で作業してはいけません。
- ストーブ・コンロ・ライター等の火器類の使用をすべて中止します。ベンジンは引火性であり、火事の危険性が高いです。
シミ抜きの手順
- 大きめのタオルを広げ、その上に着物のシミがある部分を置きます。
- 布にベンジンをたっぷりと含ませて、汚れがある部分を軽く叩いていきます。
- 汚れが分解されて落ちていくので、布は常にキレイな面が当たるようにしながら動かしていきます。
- 汚れが目立たなくなったら、もう一度布にベンジンを含ませて、ベンジンで濡れた部分の輪郭がわからなくなるようにぼかしていきます。
- 洗面器に水を入れて、シミがあった部分に水をすこしずつ垂らし、軽く濡らしていきます。
- 洗面器の水に中性洗剤を適量垂らして、洗剤液を作ります。ポリエステル着物の場合は、台所用の洗剤を使ってもOKです。
- 洗剤液をシミのあった部分に垂らして、よく染み込ませます。
- キレイな布を上に置いて、水分を優しく吸い取ります。強く押さえたりこすったりしないことが大切です。
- 汚れが取り切れるまで、何度か7)と8)を繰り返します。
- 1汚れが落ちたら着物を畳んで洗濯ネットに入れ、中性洗剤を使って全体を仕上げ洗いします。洗濯機でソフト洗いをするか、浴槽などに洗濯液を作り、全体を押し洗いして洗いましょう。
- 脱水は洗濯機で30秒程度行います。長すぎないことが大切です。
- 着物ハンガーにかけてシワをしっかりと伸ばし、直射日光があたらない場所で自然乾燥させます。
- あて布をあててアイロンをかけ、形を整えます。
※ベンジンを染み込ませた布で強く叩く・こする等の負担をかけるのは絶対にNGです。毛羽立ち・スレが起きる原因になります。
※アルカリ洗剤や重曹・クエン酸・セスキ炭酸ソーダ等は使用しないでください。変質・変色が起こる可能性があります。
※洗濯・シミ抜きでは必ず「水」を使いましょう。温水を使うと卵やクリームに含まれるタンパク質が凝固し、取れにくいシミになってしまいます。
家で落ちないケーキのシミもある?
古いシミや濃い色の果汁系のシミ等は、ご家庭のシミ抜きでは落とすことができません。
時間が経ったシミ
付けてから時間が経って汚れが繊維に定着すると、ご家庭の洗剤やベンジンでは汚れが剥がせなくなります。着物のケーキのシミに自分で対処ができるのは、汚れを付けてから3日程度が限度です。
後から浮き上がってきたシミ
時間が経って浮き上がってきた油ジミや変色は、すでに酸化が始まっている可能性も考えられます。ご家庭では対処ができないので、着物に強いお店に早めに相談しましょう。
ベリー系・カシス系等のシミ
次のような果実の果汁やジャムを使っているシミの場合、アントシアニン等の天然色素を多く含むため、家では汚れを落としきれない可能性が高いです。
- ラズベリー
- クランベリー
- ストロベリー(イチゴ)
- カシス
- ブドウ
また高純度のカカオを使用したチョコレートのシミなどもご家庭では落ちきらない可能性があります。
着物のケーキの汚れはクリーニングで落ちる?
一般的なクリーニング法である「丸洗い(着物丸洗い)」をするだけでは汚れが落ちないので、部分洗いである「シミ抜き」を行ってもらいましょう。
また洋服系クリーニング店等の場合、着物の扱いに強くなく、難しいシミや古いシミは断られてしまうことがあります。悉皆屋(しっかいや:着物のシミ抜き等のお手入れ全般を扱う専門業者)など、着物の扱いに強いお店を選ぶことが大切です。
おわりに
着物についたケーキの汚れについては、後から「油染み」が浮いてきたり、生クリームの汚れが白く浮き上がってきてから慌ててお店に持ち込む…という方も少なくないようです。
専門店でも、古くなったシミの方が対処には時間も手間もかかってしまいますし、その分だけシミ抜き料金も値上がりしてしまいます。「自分でシミ抜きをするのは難しそう」「汚れが取り切れたか不安」という場合には、早めに専門店にご相談されることをおすすめします。