着物にコーヒーのシミが!応急処置やシミ抜きの正解とは?
コーヒーはちょっとしたお茶の時間にはもちろん、コース料理の最後等にもよく出てくる飲み物です。お出かけをした時に着物にコーヒーのシミをつけてしまった……というトラブルも多く見られます。
そのせいか、着物のコーヒーのシミを応急処置する方法やシミ抜き対処については、インターネット上でも様々な情報が混じっています。どの情報が正しいのかよくわからず、困っているという人も多いのではないでしょうか。
外出先でのコーヒーのシミの応急処置
まずはコーヒーのシミが着物に付いた時に、外出先でどのように応急処置をするかを見ていきましょう。
シミの範囲が小さい場合
「ほんの少しコーヒーの滴が垂れた」という程度のシミ(直径5mm程度)であれば、軽く応急処置をすることでシミを目立たなくすることもできます。
- 乾いたハンカチ等でシミ部分を軽く押さえて、シミの水分を吸い取ります。
- 別のハンカチ・タオルを水で濡らしてから、ギュッと固く絞り、シミの部分をごく優しく叩きます。タオルの裏から指を当てるようにして、シミのポイントだけにふれるようにしましょう。シミを広げないようにすることが大切です。
- 別の乾いたハンカチ等でシミを軽く叩いて、水分をもう一度よく取ります。
※「シミを取ろう」と濡らしすぎないように気をつけましょう。布地がその部分だけ縮んだり、シミが広がる恐れがあります。
※おしぼりやウェットティッシュ等を使うのはNGです。着物の変色・変質等を起こす可能性があります。
※タオルを濡らすのにお湯を使わないでください。ミルクの成分が固まって取れにくくなります。
※コーヒーをこぼした場合、応急処置後にも、必ずシミ抜きは必要です。ムリにシミを取りきろうとせず、目立たなくする程度にしておきましょう。
シミの範囲が広い場合
コーヒーのシミの範囲が広い(直径2~3センチ以上)の場合は、着物の素材によって応急処置法が変わります。
洗える着物の場合
- ポリエステル着物
- ウォッシャブル着物 等
ご自宅で水洗いができる着物の場合は、広い範囲にシミができた場合も上の「シミの範囲が小さい場合」と同じように、濡らして絞ったタオルを使って応急処置をしてOKです。
早めに応急処置をしておくことで、後の着物のシミ抜きをラクにすることもできます。
洗えない着物の場合
- 正絹(シルク)の着物
- 天然染色製品の着物
- 振袖・留袖・訪問着等のフォーマル着物
- 伝統工芸品の着物
- 先染め織物の着物 等
自宅で洗ってお手入れができない着物は、「水濡れ」をすると強く縮んだり、色が落ちたりする可能性が高いです。
そのため、コーヒーのシミを応急処置で取ろうと水を含ませすぎると、変質する範囲が広がり、かえって後のシミ抜きが大変になってしまいます。
乾いたタオルやハンカチ等でコーヒーを吸い取るだけにして、外出先ではそれ以上シミには触らないようにしましょう。
コーヒーのシミは自分でシミ抜きできる?
着物についたコーヒーのシミは、自分でしみ抜きすることができるのでしょうか?
洗濯表示を確認しましょう
着物のコーヒーの汚れを落とすには「水」を使った工程が必要になります。そのため、水に弱い素材や織り方・色落ちが激しい着物等については自宅でのシミ抜きができません。
【水洗いOKの着物の例】
- ポリエステル等の化繊の単の着物
- ウォッシャブルウールの着物
- 木綿きものの一部(ウォッシャブル対応との表記あり) 等
シミの状態によってはシミ抜きが可能です
【水洗いNGの着物の場合】
- 正絹の着物(シルクの着物)
- 一部の天然染料を使った着物
- 刺繍等の特殊加工がある着物 等
ご自宅ではシミ抜きができません。悉皆屋や着物専門クリーニング店等にシミ抜きをしてもらいましょう。
なお同じ素材(例えば木綿や麻)でも、着物の染め方・織り方等によってご自宅で対応ができるものとそうでないものがあります。「素材がよくわからない」「洗濯対応が不明」という場合には、ムリをせずに専門店に相談しましょう。
一度水洗いで縮ませたり色落ちをさせてしまった場合、専門家でも着物を元に戻せないことがあります。
特に振袖や訪問着等、一生モノの大切な着物については、自己判断で処理をしないことをおすすめします。
着物のコーヒーのシミを落とす方法
洗濯表示がOKだった場合は、次のような方法で着物のコーヒーのシミをシミ抜きしていきます。
用意するもの
- ベンジン(クリーニング・シミ抜き用のもの)
- バスタオル(汚れても良いもの)
- 古い布かガーゼ
- タオル(数枚以上)
- 液体型中性洗剤
- 洗濯用ネット
- 着物用のハンガーまたは物干し
- アイロン
シミ抜きをする手順
- バスタオルを下に敷いてから、着物を広げます。
- 古い布にベンジンをたっぷり染み込ませて、シミのある部分を軽く叩いていきます。
- シミが目立たなくなったら、もう一度布にベンジンを染み込ませて、濡らした部分の輪郭をぼかします。衿等の場合には、衿全体にベンジンを広げて輪郭を目立たなくします。
- 着物ハンガーにかけて一度乾かします。
- 洗面器やバスタブ等に水を張ってから中性洗剤を適量溶かします。
- 着物を水に漬けて、両手で軽く押すようにして押し洗いします。
- シミがあった部分には、中性洗剤の原液を少量漬けて、振り洗いをします。
- 水を取り替えて、2~3回すすぎます。
- 洗濯ネットに入れて、40秒程度洗濯機で脱水させます。
- 着物用ハンガーまたは物干しで陰干しして乾燥させます。
- アイロンで仕上げます。慣れない場合には、半乾きの状態でアイロンをするとシワを伸ばしやすいです。
注意するポイント
※一度乾いてしまったコーヒーのシミ、後から発見したコーヒーのシミはご自宅では落とせません。専門店に相談しましょう。
※洗濯の際には「お湯」を使わないでください。ミルクの成分が凝固して、シミが取れなくなります。
※ベンジンの使用中は必ず換気をし、火器類の使用は止めましょう。
※ベンジンは刺激が強いです。マスク・手袋等を使用することをおすすめします。
着物をクリーニングする場合には
着物のコーヒーのシミをお店で落としてもらう場合には、次の点に気をつけましょう。
「丸洗い」ではコーヒーシミは落ちません
着物丸洗い(いわゆるドライクリーニング)だけでは、着物のコーヒーのシミは落ちません。ドライクリーニンは石油溶剤を使った洗濯なので、コーヒーや汗といった水性汚れを落とすのは不得意なのです。
コーヒーのシミを落とすには、手作業での「シミ抜き」、程度によっては「洗い張り」という対策が必要になります。丸洗いしかできない…というお店は避けてくださいね。
着物に詳しいお店を選びましょう
一般的な洋服クリーニングのお店ですと、店員さんが「着物のシミ抜き」に詳しくないため、シミありの着物を断られたり、「クリーニングしたけど落ちなかった」と言われたり…といったトラブルも多いようです。
着物についたコーヒー等の水性のシミは対応が難しいので、次のようなきちんと専門的な対処ができるお店を選びましょう。
- 悉皆屋(しっかいや):着物のお手入れ全般を扱う専門業者です。シミ抜き・洗い張り・染色補正等、幅広いお手入れに対応できます。
- 着物専門のクリーニング店:中には職人が在籍しない店もあるので要注意、公式サイトをよく確認しましょう
- 購入店舗に相談:付き合いのある悉皆屋を紹介してくれます。ただし、紹介手数料等が発生することも多いので注意しましょう。
おわりに
着物についたコーヒーのシミは、時間が経つと繊維をしっかり染めてしまい、取れないシミになってしまいます。自分でシミ抜きする場合でも、お店に持ち込む場合でも、早く対処することが大切です。