着物に付いたお茶のシミ・たった1つのコツと2つの対処法
着物でお出かけをした日は、和食や甘味処等に行くという人も多いもの。その分、着物でお茶をいただくシーンも増えますね。また茶道、いわゆる「お茶のお稽古」で頻繁にお抹茶をいただく人も居ることでしょう。
着物に緑茶や抹茶等のお茶のシミが付いたら、どのように対処をしたら良いのでしょうか。インターネット上には様々な着物のお茶のシミ抜き方法や応急処置法が溢れていて、どれが正しいのかわからなくなっている人もいるはずです。
その着物は「自宅で水洗い」できますか?
一口に「着物」と言っても、その種類は様々です。カジュアルに普段着感覚で着る着物やアンティーク着物もあれば、フォーマルで着る留袖や振袖、訪問着等もありますね。
でもお茶のシミの場合、区別の仕方のポイントはたった一つ。「その着物が家で水洗いができるか」という問題です。
【水洗いができる着物】
- ポリエステル素材の着物
- ウォッシャブル加工がされている着物 等
【水洗いができない着物】
- 正絹の着物(シルクの着物)
- 天然染料を使った色落ちしやすい着物
- 刺繍等の特殊加工がある着物 等
お茶のシミ汚れは「水性の汚れ」なので、水分を与える(濡らす)という作業をしないと汚れを溶かして取ることができません。ところが、水洗いができない着物達は少量濡らしただけでも縮んで「輪ジミ(水シミ)」になったり、色落ちをしてしまうことがあります。
「お茶のシミを取ろう」と応急処置をしたつもりが、かえって汚れを広げたり輪染みを作ってしまった…こんなケースがとても多いのです。
着物にお茶のシミが付いた時には、まず「水洗いができる着物だったかどうか」を確認しましょう。外出先等で着物の素材等がわからない場合には、「水洗いができない着物」の方の対処をしておくと安心です。
水洗いができる着物のお茶のシミ対策
自宅で水洗いができる着物の場合は、お茶のシミに次のように対処します。
外出先での応急処置
- ティッシュ等で抑えてシミの水分を取る
- 濡らしたタオルを固く絞り、シミの部分を軽く叩く
- シミが目立たなくなったら、乾いたタオル等で水分を取る
外出先ではタオル等を濡らして対策を。
ただし、おしぼりやウェットティッシュ等は使わないでください。含まれる香料や洗浄剤等の影響で、着物が変色したり変質してしまうことがあります。
自宅でのシミ抜き方法
着物にお茶のシミを作ったら、当日中にはシミ抜きを行いましょう。
用意するもの
- 中性洗剤(おしゃれ着洗い向けのもの。エマール・アクロン等)
- 洗濯用ネット(着物を畳んで入れられるサイズ)
- 柔軟剤
- 洗面器または浴槽等を利用してもOK
- アイロン
- 着物専用ハンガーまたは物干し竿
シミ抜きの手順
- シミの部分を軽く水で濡らします。
- 洗濯用中性洗剤を小皿等に適量出してから水で薄め、シミの部分につけます。
- 強くこすらないようにして、指で軽くつまんで洗います。
- シミが目立たなくなったら、畳んで洗濯ネットに入れます。シミがある部分が外に出るように入れると良いです。
- 洗面器等に水を張って中性洗剤を垂らして薄め、着物をネットに入れたまま漬けます。
- 両手で軽く押して、全体を優しく押し洗いします。
- 2~3回水を取り替えて、すすぎを行います。
- 洗濯機に入れて、30秒~40秒程度脱水します。長く脱水するとシワができますのでご注意ください。
- 着物専用ハンガーまたは物干しにかけて形を整え、直射日光があたらない場所で自然乾燥させます。
- アイロンでシワをのばし、形を整えます。
※汚れが取れない場合には、ムリにシミ抜きを繰り返すのはやめましょう。摩擦による毛羽立ちが起きたり、その部分だけ色が褪せてしまうことがあります。
家で落ちないお茶のシミもある?
家で水洗いができる着物であっても、お茶のシミの状態によっては自宅でシミ抜きができないこともあります。
お茶に含まれるタンニンは非常に強い色素成分で、時間が経つごとに繊維に強く定着していきます。最終的には布を染めてしまうほど、強力な定着力を持っているのです。
そのため着物に付いたお茶のシミを何日間も放っておいてからだと、ご家庭ではシミ抜きができなくなってしまいます。またシミの範囲が広かった場合、汚れが取り切れずに輪染みになってしまうケースも見られます。
- シミが付いてから数日以上時間が経過している
- シミをいつ付けたのかわからない
- 一度シミ抜きをしたが落ちきっていない
- 輪染みになってしまった
上のような場合には、自宅でムリにシミ抜きをせず、専門店に相談をしましょう。
水洗いができない着物のお茶のシミ対策
自宅で水洗いができない着物の場合、お茶のシミが付いた時には応急処置の段階から注意が必要です。
外出先での応急処置
水を使うと「水シミ」等になりやすいので、ティッシュペーパーやハンカチを使って水分を吸い取るだけにします。
おしぼり等はもちろんNGですが、濡れタオル等も応急処置で使わない方が良いです。
汚れや水シミが広がってしまった場合、専門店でのシミ抜きの料金が上がってしまうこともあります。ムリにシミを取ろうとしない方が安全です。
「シミ抜き」ができる専門店へ
水洗いができない着物に付いたお茶のシミは、残念ながら自宅ではシミ抜き等の対処をすることができません。着物のお手入れができる専門店に「シミ抜き」を依頼しましょう。
「丸洗い」ではお茶の汚れは落ちない
「着物クリーニングなら何でもお茶のシミが落ちるか」というと、そういうわけでもないので注意が必要です!
着物の一般的なクリーニングである「丸洗い(きもの丸洗い)」だけでは、お茶のシミは落とすことができません。「丸洗い」はドライクリーニング(石油系)なので、落とすことができる汚れは軽い皮脂汚れ等の油系の汚れです。
お茶・抹茶等の水性汚れを落とすには、職人が手作業で行う「シミ抜き」が必要になります。「着物を専門に扱うお店」で、「シミ抜き」のコースがあるかどうか、必ず確認をしておきましょう。
「洗い張り」が必要になることも
着物のお茶のシミの範囲が広い場合には、洗い張り(あらいはり)というお手入れが必要になることもあります。これは一度着物をほどいて反物に戻し、専門の職人がていねいに水洗いをする方法です。
洗い張りは伝統的な技法であり、一般的なクリーニング店等では請け負うことができません。しかし悉皆屋(しっかいや:着物のお手入れの専門店)等であれば、洗い張り等も含めたお手入れの方法を案内することができます。着物のお茶のシミの症状が重い場合には、特に「着物に強い専門店」を選ぶことが大切です。
おわりに
着物に付いた緑茶等のお茶のシミは、軽く拭いて乾くと一見して目立たなくなることもあるため「シミ抜きをしなくても平気かも?」判断してしまう人も多いです。
しかし緑茶に含まれるタンニンは、時間が経つ毎に少しずつ繊維を染めてしまい、後から目立つシミ・汚れとなって浮き上がってしまいます。
お茶のシミは時間が経てば経つほど、専門店でも取れにくいシミに変化するものです。取れにくいシミになるということは、その分だけ、着物を甦らせるための料金も高くつくということ。シミが付いたら早めにシミ抜きをするのが最も確実で、しかも安上がりな対策となります。