ヘアワックス・スプレー…着物についた整髪料シミの対処法は?
着物をキレイに着る日には、髪型にも気を使いたいですよね。でも着物にヘアワックスやヘアスプレー等の整髪料が付いてしまうと大変です!ヘアワックス、ヘアスプレー等は髪型キープのための成分がたくさん入っているので、落ちにくいガンコなシミになってしまいます。
着物に整髪料のシミが付いた時には、どのようにシミ抜きをすればよいのでしょうか?
着物についたヘアワックスのシミの落とし方は?
着物についたヘアワックスの汚れには、水分をベースにした「水性汚れ」と、「油性汚れ」の両方が混じっています。そのため着物のシミ抜きをご家庭でする場合には、まずベンジンで油性の汚れを溶かして落とし、さらに中性洗剤を使った水洗いで残った水性汚れを落としきります。
事前に確認しましょう!!
2.シミの状態によっては、ご家庭ではシミが落とせないことがあります。下の「家で落ちないシミもある?」を必ず確認してから作業を始めましょう。
用意するもの
- ベンジン(シミ抜き用のもの)
- 柔らかい布かガーゼ
- タオル(汚れても良いもので、白か薄い色のもの)
- バスタオル2枚
- 中性タイプの洗濯洗剤(おしゃれ着洗い用のもの。エマール、アクロン等)
- 洗面器等の容器
- 柔軟剤
- 洗濯用ネット(本畳みした着物が平らに入るサイズ。丸めて入れないこと)
- 着物専用ハンガー(物干しでも代用できます)
- アイロン、アイロン台、霧吹き等
下準備
- 窓を開けて換気します。ベンジンは揮発性なので、刺激がある成分が空気中に飛び散ります。作業中や乾燥中は常に換気をしてください。
- ベンジンは引火性です。ストーブ・ライター・コンロ等の火器類の使用はすべて中止します。
- 襟元が型崩れやすい着物の場合、安全ピン等で仮止めをするか、ざっくりと縫い止めておきましょう。
シミ抜きの手順
- 汚れても良いタオルを広げて、上に着物を置きます。
- 柔らかい布にベンジンをしっかりと染み込ませます。ビッショリ濡れるくらいがポイントです。
- シミがある部分を柔らかい布で軽く叩き、油汚れを溶かし、下に落としていきます。
- タオルや布が汚れますから、少しずつ動かし、常にキレイな面が当たるようにしつつ作業を続けます。
- 十分に汚れが落ちたら、もう一度ベンジンで布を濡らしましょう。再度シミの周辺を叩き、境目をぼかしておきます。これで輪ジミを防ぎます。
- シミがある部分にぬるま湯をかけて、濡らします。ベンジン作業後すばやく行うと輪ジミ防止に有効です。
- 洗面器等の容器にぬるま湯を少し入れて、中性洗剤を溶かして薄めておきます。
- 薄めた洗剤液をシミがある部分に付けて、指でよくなじませて洗います。ゴシゴシこすらないことが大切です。
- 汚れが落ちたら、よくすすいでおきます。
- バスタブや洗面ボウルにぬるま湯を入れ、中性洗剤を適量溶かします。
- 着物を畳んでネットに入れ、10.の洗剤液に漬け込みます。両手で優しく押し、全体を押し洗いします。
- ぬるま湯を2回入れ替えて、しっかりと濯ぎます。
- ネットのまま洗濯機に入れます。脱水機能を使い、30秒程度脱水させます。型崩れしやすい着物の場合は、脱水を省略してかまいません。
- バスタオル2枚で着物を挟み、ポンポンと軽く叩いて水分を吸い取ります。
- 専用ハンガーか物干しに着物をかけて、形をよく整えます。直射日光を避けて自然乾燥させましょう。
- シミの状態をよく確認してから、素材に合わせた温度のアイロンで形を整えます。
注意点
※ベンジンを含ませた布で強く擦ったり叩いたりするのはNGです。また「シミが落ちないから」と、繰り返し同じ箇所をシミ抜きしないでください。表面が白っぽく毛羽立つ「スレ」が起こり、元に戻せなくなります。
※シミ抜き・乾燥後に万一汚れが残っている場合には、アイロンがけは中止して、専門店に相談しましょう。シミが残った状態で熱を加えると、取れないシミになってしまいます。
家で落ちないシミもある?
着物についたヘアワックスのシミが次のような状態の場合には、ご家庭では汚れを落とすことができません。
× 時間が経って乾いたシミ(数日以上が経過している)
× 洗った後で汚れが浮いてきた(油シミが浮いてきた状態)
× 保管していたらシミが浮いてきた(シミが酸化・変色した状態)
× シミの範囲が3センチ以上ある(汚れが取り切れない可能性が高い)
× シミが縫い目をまたいでいる(着物の縫い糸に汚れが染み込んでいる)
ヘアワックスのシミは人工的な油分と香料が多いため、後からシミが浮いてきたり、香料等の成分が残ってしまうことが多いです。このようなシミについてはご家庭では対処ができないので、専門店に相談をしましょう。
着物についたヘアスプレーの汚れは落とせる?
着物についた整髪料のシミが「ヘアスプレー」の場合は、残念ながらご家庭のシミ抜きで落とすことができません。これには次のような理由があります。
1)粘着力がとても強い
ヘアスプレーの粒子に含まれる成分は粘着力がとても強く、一度乾いてしまうと一般的な洗剤や溶剤では剥がすことができません。言ってみれば「スプレータイプの強力接着剤がくっついている」ような状態です。
2)粒子が細かい
ヘアスプレーの粒子はとても細かいので、繊維の表面だけでなく繊維の奥にまで入り込んでしまっています。
無理に着物のヘアスプレーの汚れを落とそうとして高温のお湯を使ったり強い洗剤を使い、着物をすっかりダメにしてから専門店に持ち込まれるケースが多く見られます。誤ったシミ抜きをして着物そのものを傷めてしまうと、専門店でも元に戻せない場合が多々あります。自己判断での対処は絶対にやめましょう。
着物の整髪料のシミが家で落ちない時には?
着物の整髪料のシミが家で落とせない場合には、手作業での「シミ抜き」や「洗い張り」ができるお店に相談をしましょう。
ドライクリーニングだけでは汚れが落ちない
着物についた整髪料のシミは、一般的な着物クリーニングである着物丸洗い(ドライクリーニング)だけでは落とすことができません。必ず手作業で着物のシミ抜きができるお店を選ぶことが大切です。
またお店に持ち込む場合には、シミがあることをいい添え、原因がヘアワックスまたはヘアスプレーであることを伝えておきましょう。
酷い汚れは「洗い張り」となることも
汚れの程度が酷かったり、シミの範囲が広い場合等には、着物をほどいて職人が水洗いする「洗い張り(あらいはり)」が必要となることもあります。シミ抜きだけでなく洗い張りもお願いができる悉皆屋(しっかいや:着物の総合的なお手入れの専門業者)や、着物に強いお店を選ぶことをおすすめします。
おわりに
着物についたヘアワックスやヘアスプレーの汚れは、一般的なクリーニング店(洋服クリーニングのお店)だと断られてしまうことも多いです。それくらい落ちにくく、対処が難しい汚れというわけですね。
当店『きもの創夢』は悉皆屋であり、着物専門のクリーニング・リフォーム加工等を扱うお手入れの専門業ですので、着物の整髪料のシミ等のお手入れのご相談も受け付けています。大切な着物に整髪料の汚れが付いてしまった…という時には、お気軽にご相談ください。