着物にチョコレートのシミ!汚れの取り方は?よくある質問Q&A

甘くて美味しいチョコレートは、いつの時代も人気のお菓子ですね。しかしカカオ豆から生まれた「カカオマス」というココアパウダーを使っているので、一度着物に汚れが付くと強力なシミになってしまうのが問題です。
着物にチョコレートのシミ・汚れが付いたら、自分でシミ抜き等の対処はできるのでしょうか?

着物のチョコレートの汚れの取り方は?
着物のチョコレートのシミは油分(油脂)が多い油溶性汚れなので、まずベンジンで油脂成分を溶かして落とします。さらに残った色素成分を、中性洗剤を使って水洗いして落としていきます。
事前に確認しましょう
家で水洗いができる素材かどうか、洗濯表示を必ず事前に確認してください。正絹(シルク100%)や一般的なウールきものは水を使うと縮むので、水洗いができません。木綿・麻等の「一見洗える素材」も、着物では激しい色落ち・色褪せが起こるためご家庭で水洗い不可ということがあります。
用意するもの
- ベンジン(薬局やドラッグストアで買えます)
- 中性タイプの洗濯洗剤(エマール、アクロン等)
- 柔らかい布またはガーゼ
- タオル(汚れて捨てても構わないもの)
- バスタオル2枚
- 洗濯用ネット(畳んだ七五三着物が平らに入るサイズ)
- 着物用のハンガー(物干しでも代用OK。洋服用ハンガーは型崩れしやすいのでNG)
- 洗面器等の容器
- アイロン、アイロン台、霧吹き、あて布
シミ抜きの下準備
- 窓を開けるか換気扇を回し換気しましょう。作業中は常に換気し続けます。ベンジンは揮発性が高く、吸い込むと刺激の強い危険な物質です。
- ベンジンは引火性ですので、作業中はライターやストーブ、コンロ等の火器類の使用は中止します。火事の原因となるので絶対に使用しないでください。
- 素材・染料によっては、ベンジンによる色落ち・変色・色褪せが起きます。目立たない箇所や共布での変色テストをおすすめします。
- 水を使ったシミ抜きでは、着物が型くずれすることがあります。特に型くずれをしやすい衿元は安全ピン等で仮止めするか、ザックリと縫い止めておきましょう。
シミ抜きの手順
- 下に汚れても良いタオルを敷き、着物のチョコレートのシミがある箇所を広げます。
- 柔らかい布がビッショリ濡れるくらいに、ベンジンを浸します。
- この布で、シミをトントンと軽く叩いていきます。汚れが少しずつ溶けて、布や下のタオルに移ります。こまめに布・タオルを動かし、チョコの汚れを他に移さず、常にキレイな面が当たるように作業を続けます。
- シミが取れたら、もう一度ベンジンで布を濡らします。
- 濡れている箇所と乾いている箇所の境目がわからなくなるように、ベンジンを塗り拡げてぼかします。
- ベンジンを塗った箇所を、すぐに水で濡らしておきます。
- 洗面器等に水を少し入れて、中性洗剤を垂らし、よく溶かしておきます。
- 薄めた洗剤液をシミ部分につけて、指でやさしく馴染ませます。
- ぬるま湯でよくすすぎ、シミの状態を確認します。
- 1汚れが目立たなくなったら、着物を畳んで洗濯ネットに入れます。
- バスタブまたは洗面ボウル等に水をはり、中性洗剤を適量入れます。
- 洗濯ネットごと洗剤液に着物を沈めて、両手で優しく押し洗いします。
- 水を取り替えて、2~3回押し洗いを繰り返し、丁寧にすすぎます。
- ネットのままで洗濯機に入れ、脱水機能で30秒ほど脱水します。(型崩れが不安な着物なら洗濯機での脱水は省略してもOKです)
- 着物をネットから取り出し、バスタオル2枚で挟みます。タオルの上から軽く叩いて、優しく水分を吸い取ります。
- 専用ハンガーに着物をかけ、直射日光を避けて風通しの良い場所で自然乾燥させます。乾燥機等は使用しないでください。
- シミの状態を確認し、アイロンで形を整えます。
注意点
※ベンジンで濡らした布で着物をゴシゴシ擦らないこと。また、「汚れが落ちないから」と繰り返し同じ箇所をベンジンで対処するのも避けましょう。表面が白く毛羽立つ「スレ」が起き、専門店でも着物を元に戻せなくなります。
※ベンジン作業後にすぐにシミの箇所を濡らしましょう。早めに水で濡らすことで、ベンジンによる「輪ジミ」になるのを防げます。
※生クリーム等の乳成分が含まれている可能性を考え、シミ抜き・洗濯には「お湯」を使用することを避けています。温かいお湯を使うとタンパク質が固まり、取れにくい汚れになりやすいためです。
※シミ抜きしても汚れが取れない場合は、汚れた部分にはアイロンしないでください。高熱をあててしまうと汚れが取れにくくなります。そのまま専門店に持込み、できるだけ早くプロのシミ抜きをしてもらいましょう。
水洗いできない着物のチョコのシミ抜きは?
着物が水洗いできないタイプの場合、チョコレートのシミが直径1mm程度のとても小さいものであれば、ベンジンだけでシミ抜きできることもあります。ただし薄い色の着物等、ご家庭で対処しない方が良い着物もあるので注意しましょう。
少しのシミならベンジンで落ちる?
ポチッと点のように付いたわずかなチョコレートのシミ(直径1mm以下)程度であれば、ベンジンで油性汚れを取るだけで汚れが目立たなくなることはあります。この場合には、上の1.で紹介したシミ抜き方法のうち、1.~5.までの作業を行い、あとは自然乾燥させて仕上げればOKです。
ただし「輪ジミ」になりやすいので、「ぼかし」の作業を丁寧に行うように十分に注意してください。また次の注意事項も必ず確認しましょう。
色素の汚れが広がりやすい!
次のような着物の場合には、ベンジンだけでの対処はおすすめしません。
- シミの直径2mm以上
- 薄い色の着物(クリーム色、薄ピンク、薄い水色等)
- 無地の着物/無地の部分についたシミ
チョコレートのシミは「カカオマス」という天然のココアパウダー成分を含んでおり、とても色素成分が強いです。そのため水洗いをしないと、ベンジンに乗って汚れがどんどん広がってしまうことがあります。
少しでもハッキリと見えるシミや、薄色・無地等の汚れが目立ちやすい着物の場合、ベンジンだけでは汚れが落としきれません。
専門店での料金も上がる
ムリに家でシミ抜きして一度汚れが広がってしまうと、専門店でのシミ抜き料金が高くなってしまいます。専門店では「シミの大きさ(汚れの範囲)」でシミ抜き料金が決まるからです。水洗いできない着物については、早めに専門店でシミ抜きすることをおすすめします。
家で落とせないチョコのシミもある?
着物についたチョコレートのシミが次のような状態の場合は、自分で行うシミ抜きでは汚れを落とせません。
時間が経ったシミ
付いてから数日以上が経っていると、チョコレートのココア成分が繊維に定着してしまっているので、ご家庭の溶剤や洗剤では落としきれません。
古いシミ・後から見つかるシミ
シミ抜きが不十分な場合には、あとから油シミが浮いてきたり、変色シミとなることがあります。これもご家庭では対処できません。
直径1センチ以上のシミ
広範囲のシミになるほど、汚れが繊維に残りやすいです。目安として「1センチ以上」のチョコレートのシミは、水洗いできる着物でもプロに任せることをおすすめします。
縫い目をまたいでいるシミ
縫い目をまたいで汚れが広がっている場合、縫い糸に汚れが染み込んでいる可能性が高いです。後から縫い目が傷んで着物に思わぬダメージが来ることがあるので、早めに専門店に持ち込みましょう。
クレンジングオイルを使ってはダメ?
着物についたチョコレートのシミには、クレンジングオイルは使わないでください。オイルに含まれる洗浄成分等で、思わぬ色抜けや変色が起きることがあります。
普段着の洋服向けの対処法です
クレンジングオイルを使ったシミ抜きは、Tシャツ等の一般的な洋服(普段着)向けの対処法です。着物等のデリケート製品にはおすすめできません。
クレンジングオイルにはオイル以外に様々な洗浄成分や界面活性剤等が含まれていて、しかも製品によって配合の差が大きいです。製品内のアルコール等、何かの成分が反応すると、思いもよらない「色抜け」「変色」や、別の「油染み」等が生まれてしまいます。この他、エタノール等のアルコール用品の使用もおすすめできません。
おわりに
着物についたチョコレートのシミは、放っておくと成分がどんどん繊維に定着して「染まったシミ」になってしまいます。早い段階であれば専門店で比較的簡単にキレイにできますので、着物が水洗いできないものだったり、上手にシミ抜きできるか不安な場合には、早めに専門店に相談をしましょう。
もちろん当店『きもの創夢』でも、着物についたチョコレートのシミのシミ抜き・汚れとりを承っています。古いシミが残ってしまった…といったご相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください!