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シミの対処方法

それダメ!ポリエステル着物のシミ抜きでよくある5つの失敗とは

ポリエステル素材の着物

ご家庭でお手入れがしやすいポリエステル着物は、着物初心者の人からも人気がありますね。着付けの練習として、初めての気軽な着物として…正絹着物はまだだけれど、ポリエステル着物なら何枚か持ってる!という人も多いのではないでしょうか。

でもこのポリエステル着物、シミ抜きやお洗濯がラクだからと洋服感覚でお手入れすると思わぬ失敗をすることもあるって知っていましたか?大切な着物を長持ちさせるためにも、ポリエステル着物のシミ抜きやお手入れで注意するポイントを知っておきましょう。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 京都きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。ここではポリエステル着物のシミ抜き・洗濯やお手入れで特によくあるトラブルを解説していきます。

ポリエステル着物

アルカリ洗剤で色落ちさせる

ポリエステル着物に汚れが付いた時「しっかり汚れを落としたいから」と酵素入りの合成洗剤や酸素系漂白剤等を気軽に使っていませんか?実はこれ、あまりおすすめができないポリエステル着物のお手入れ方法なんです。

ポリエステルはウールやシルクに比べて縮みにくいので、ご家庭での水洗いにも対応しています。しかし化学繊維で染料の定着力がやや弱いので、ちょっとした洗濯でも「色落ち」が起きやすいのです。

特にポリエステル着物の場合ですと、買った時そのままの美しい色合いやハッキリした発色を大切にしたい人が多いことでしょう。

強い洗剤で洗ってしまうと色落ちや色にじみが起きやすいです。

またポリエステルには麻や木綿のような「色あせ=それも風合い、味」というものはありませんので、色落ち対策はしておいて損がありません。

シミ抜きには中性洗剤を

ポリエステル着物のシミ抜きや洗濯では、色落ち等を防ぐ「中性タイプの洗濯用洗剤」を使うのが原則です。着物専用ではなく、例えばエマールやアクロン等といった洋服用のおしゃれ着で大丈夫ですよ。

「中性洗剤だけだと油汚れが落ちきらない」という時には、ベンジンでその部分だけを軽くシミ抜きして、全体は中性洗剤で洗った方が良いでしょう。なおベンジン使用の際にも色落ち・色ハゲはしやすいので、あくまでも優しく作業をすることをおすすめします。

まとめ洗いして色移りする

ポリエステル着物は、製品によっては洗濯機でも洗うことができる着物です。でも「面倒だから」「水や洗剤がもったいないから」と、何枚もまとめて洗濯機で洗うのはNGですよ!

上のでも解説しましたが、ポリエステル着物は色落ちを起こしやすいです。そのため他の着物同士で触れ合うと、色が移ってしまうことがあります。

Tシャツ等の普段着であれば、色移り直後に強力な洗剤や漂白剤を使って対処をすることもできるでしょう。しかし着物の場合、これをやると今度は別の部分にダメージが出てくる可能性があります。とにかく「色移りを予防すること」が大切なのです。

洗濯機でも1枚ずつ洗う

ポリエステル着物のシミ抜き・洗濯では、洗濯機を使う場合でも原則として「1枚ずつ」を洗うようにしましょう。また同じ用に脱水の場合でもひとまとめにしないほうがよいです。

着物を複数枚洗わないのはもちろんですが、タオルやTシャツ等の他の衣類を入れるのも避けた方が無難。特に次のような着物には十分に注意しましょう。

  • おろしたての着物
  • 洗濯の回数が4~5回以下の着物
  • 濃色(赤、紺、黒等)の着物

ゴシゴシ洗って毛玉になる

丈夫なのが魅力のポリエステル着物。しかしポリエステルという素材は、意外と毛玉になりやすいと知っていましたか?特に綿やアクリル等の他素材とポリエステルが混紡されている場合、摩擦による毛玉(ピリング)ができやすいんです。

着物は織物ですから、ニット素材のような派手に大きな毛玉ができることはほとんどありません。しかし次のような強い摩擦をかけつづけていると、小さな毛玉があちこちにできたり、表面が毛羽立ってしまうことがあります。

× シミ抜きの際に強くゴシゴシと洗う
× ブラシ(歯ブラシ等)でしみ抜きする
× シミ抜きで硬いタオルや布を使う

毛玉ができてしまうと見た目にも悪いもの。軽く毛羽立ったりするだけでも、なんとなく着物がくたびれたような見た目になってしまいます。「ポリエステル着物だから」と甘く考えず、摩擦対策をすることは大切です。

洗濯機ではネット使用を

洗濯機で洗えるポリエステル着物でも、洗う際には必ず「洗濯用ネット」を使いましょう。ネットを使うことで不要な摩擦を抑え、毛玉(ピリング)の発生の防止に繋がります。

仕上げの柔軟剤でピリング防止

ポリエステル素材の着物のシミ抜きやお洗濯では、最後に柔軟剤で仕上げてあげるのがおすすめです。適量の柔軟剤を使うことで摩擦が抑えられるので、着用中の毛玉や毛羽立ち等もできにくくなります。

高温アイロンで変質する

着物のシミ抜きやお洗濯をすると、どうしても気になるのがシワや型くずれです。特に衿回り等は型崩れしやすいですし、思ってもみない箇所にシワが寄っていると気になりますよね。

ポリエステル素材の着物もアイロンをかけることはできますが、「大きなシワが気になるから」と高温でいつまでもアイロンをかけるのは厳禁!ポリエステルは熱にはあまり強くないので、綿麻のような天然繊維の感覚でアイロンをかけると変質してしまいます。

設定は中温まで

ポリエステル着物にアイロンをかける際には、できるだけ低い温度に設定した方が安心。まずは低温設定にしておいて、それでもシワが取れない場合には少しずつ温度をあげます。最高でもアイロンの温度は140℃程度まで。また、温めたアイロンを長く布にあてないようにしましょう。

あて布は必須

ポリエステル素材はテカリやすいので、アイロン時には必ず「あて布」をしましょう。また霧吹きで水をかける場合にはあて布の上からかけた方が良いです。

シワを作らない工夫を

ポリエステルは基本的にシワができにくい素材です。次の点に気をつけると、ポリエステル着物のシミ抜き・洗濯の時にできるシワをさらに減らせます。

・きちんと畳んで洗濯する

ザッと畳むとその部分がシワになりますので、きちんと本畳みした方が良いです。

・洗濯ネットのサイズを合わせる

小さいサイズの洗濯ネットにポリエステル着物をまるめて入れたり、たくさん折って入れるのはNG。本畳みして二つまたは三つ折り程度にした着物を平らに入れられるサイズが理想的です。

・乾燥時に形を整える

脱水後にハンガーや物干しに着物をかける時に、ていねいに型くずれを治しましょう。しっかりシワを伸ばしておいてあげると、アイロンの手間が激減します。特に襟回りは乾かす時の形作りが大事なので、ていねいに形を整えてください。

家で落ちないシミ・汚れの可能性も

ポリエステル着物はご家庭で洗える分「どんな汚れも落とせる」と思われがち。でも、次のようなシミや汚れは家で落とすことができません。

不溶性のシミ

  • 墨汁のシミ
  • ペンキのシミ
  • ジェルインクボールペンのシミ
  • マスカラのシミ 等

水にも油にも溶けない不溶性のシミは、ご家庭で分解・除去するのが難しいです。

色素の多いシミ

  • ワインのシミ
  • ブドウジュースのシミ
  • カレーのシミ等

時間が経つほど色素が定着し染まった状態になっている可能性が高いです。

古いシミ・酸化した汚れ

  • シミが完全に乾いている
  • いつ付いたシミか不明
  • 黄ばんでいる
  • カビのようなシミがある

時間が経って汚れが浮き出てきたり、カビに寄ってシミができている場合等は、ご家庭の溶剤では除去することができません。

ポリエステル着物の汚れ・シミがご自宅のシミ抜きで落ちない場合には無理に自己処理を続けず、早めに専門店に相談をしましょう。

おわりに

着物についた汚れやシミは、時間が経てば経つほど取れなくなっていきます。ポリエステル着物はご自宅でのシミ抜き・洗濯が行いやすいですが、だからといって時間が経過したものもスルリと汚れが落ちるわけではありません。

気軽に洗えるポリエステル着物だからこそ、汚れが付いた時には早め早めにシミ抜きやお洗濯のお手入れをすることが大切です。

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