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シミの対処方法

やったらダメ!着物の胴裏(裏地)シミのNG対処法4つ

着物胴裏シミ

「着物の裏地(胴裏)のオレンジや茶色いシミが気になる…」しばらく着ていなかった着物や古い着物等だと特に、裏地(胴裏)のシミが目立つもの。特に近年ではアンティーク着物等が人気なので、着物の裏地のシミの対処法について知りたいという方が多いようです。

着物の裏地(胴裏)のシミ・汚れについては、表地とは対処法が大きく異なります。良かれと思ってやったシミ抜きや対処法で、着物が着られなくなってしまうこともあるんです。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 京都きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。ここでは着物の裏地のシミについて、代表的なNG対処法を解説していきます。

ベンジン等でシミ抜きするのはNG

着物の裏地にシミを見つけたら、表地のときと同じような感覚で「シミ抜きすればいいや」と思う人が多いことでしょう。ところが裏地のシミは、シミ抜きでは落とすことができないんです。それは裏地のシミの原因が、一般的なシミ(汚れ)とは違うからなんですね。

【裏地のシミの原因】
 
1)青カビ・黒カビ・白カビ
着物の裏は湿気がたまりやすいので、カビの温床となりがちです。青カビや黒カビは生えるとすぐにポツポツと水玉のようなシミになります。白カビは生えてすぐには目立ちませんが、時間が経つとオレンジっぽいシミに変化していきます。
 
2)黄変(黄変)
黄変とは、汚れが酸化してできる変色のことを言います。最も多いのは「汗」の汚れによる酸化です。裏地は汗汚れを吸い込みやすいので、特に黄変が起こりがち。最初は黄ばみから始まり、徐々に薄いオレンジ、茶色、茶褐色へと色が濃くなっていきます。
 
背中やワキ等の汗をかきやすい箇所に広がっているシミがあれば、黄変である可能性が高いです。

カビシミ・黄変はシミ抜きで落ちない!

このような「カビ」や「変色」のシミは、食べこぼし等とは違って、汚れを取るだけでは元には戻りません。したがって、「洗剤」「ベンジン」「アルコール(エタノール)」「クレンジングオイル」「しみ抜き剤」等を使ったシミ抜き作業では、問題が解決しないのです。

漂白剤で対処するのもNG

上で解説したとおり、着物の裏地(胴裏)のシミは基本的に「カビ」か「黄変」が原因です。

着物の表地に「カビのシミ」や「黄変」ができた場合であれば、専門店で職人さんに漂白をしてもらったり、カビ取りをしてもらえば元に戻せることがほとんど。しかし着物の裏地(胴裏)については、「漂白してください」「カビ取りしてください」と依頼をすることも、もちろん自分で漂白をすることもできません。

それはなぜか?と言うと、着物の裏地が薄いためです。裏地(胴裏)は薄くて柔らかく、デリケートな素材で作られています。そのためカビ取りや黄変抜きのための強力な溶剤や漂白剤を使うと、布地が極端に薄くなったり、最悪の場合には破けてしまうんです。

クリーニングで預かって、布地が破れたら一大事ですよね。ですからどこの着物クリーニングの専門店でも、「裏地(胴裏)のシミ抜き」は受け付けていません。「クリーニングにシミ抜きに出したのに、裏地のシミだけは落ちていない」「着物のシミ抜きをしたいのにお店で断られた」というのは、このような理由があるのです。

ひどいシミを放置するのも危険

「着物の裏地はシミ抜きもできない、漂白もできないなら、外から見えるわけじゃないしそのまま着続けようかな~」と思う人も多いことでしょう。これは、程度によっては「アリ」です。ただし重症の場合だと、放置するのはおすすめできません。

軽いシミ程度なら「陰干し」で対処

ごく小さな裏地のシミであれば、これからシミの症状がひどくならないように、定期的に「陰干し」をするようにしましょう。陰干しを2~3ヶ月に一度はしっかり行って湿気や匂いを飛ばすようにすれば、シミの進行をだいぶ防ぐことができます。

重症の場合は放置はNG!

裏地のシミや着物の状態が次のような場合には、放置するのは危険です。

  • シミが胴裏だけでなく袖裏にもある
  • カビのシミがあちこちにある
  • カビ臭さが酷い
  • 黄変の色が濃い(キャラメル色~茶色になっている)

着物の裏地のシミが上のような状態だと、カビが表地にも進行していたり、黄変(変色)が表地でも起こる可能性が高いです。「裏地だけなら」と思っていたはずが、表地で深刻な「取れないシミ・変色」が発生し、染色補正でも元に戻せなくなるといった事例も多く見られます。

ひどいシミの裏地は新しく取り替える

裏地のシミが重度の場合には、次のいずれかの方法で裏地の布地を新しいものにしましょう。

着物を仕立て直す

着物の仕立直し(したてなおし)とは、着物を一度すべて解いて、表の布地は洗って張り直し、新しい裏地を付けて縫い直すという方法です。

仕立直しは、ほとんどの着物の加工店で行うことができます。紹介料・手数料はかかりますが、着物の販売店(呉服屋)等に相談して、加工店を紹介してもらうことも可能です。

仕立て直しの良い点

  • 着物のサイズを今の自分にあったものに変えられる
  • 表地もスッキリさっぱりして見た目も良くなる

仕立て直しの悪い点

  • 料金が高い

仕立直しは工程が多い分だけ、料金も高くなってしまいがち。加工店や着物の種類によっては、10万円近い料金が必要となるケースも見られます。

裏地(胴裏)交換

裏地交換(胴裏交換)とは、着物をほどかずに裏地のみを取り外して、新しいものい付けかえる方法です。一部の着物加工店ではこのような対処も行っています。もちろん当店でも、裏地交換は可能です!

裏地交換の良い店

  • 料金が安い
  • 部分交換も可能

裏地交換は工程が少ない分だけ、お仕立て直しよりも料金がリーズナブルです。またどのお店もやるわけではないですが、当店では胴裏だけ、袖裏だけ等の部分的な交換も受け付けています。

裏地交換の悪い点

  • 依頼できる店が少ない

胴裏・裏地の交換は高度な技術が必要な割に料金が安いです。サービス提供側からすると、「赤字なメニュー」とも言えます。そのため、「胴裏交換はやりません、仕立直しだけです」というお店が多い…というのが現状です。

自分で裏地を取り替えるのはダメ?

ここまでで解説したように、着物の裏地のシミには「仕立直し」か「裏地交換」で布地自体を新しくするという抜本的な対処法が必要となります。

「仕立直しは高いし、近所に裏地交換ができるお店も無いし…自分で着物の裏地を交換しようかなあ」と考える人も多いのではないでしょうか。

これについては良いとも悪いとも言えないのですが、ご自身の「縫い物の腕のレベル」がとても大事になるよ!ということだけは説明をしておきたいところです。

裏地交換は難しい!

着物の裏地交換をスムーズに行える縫いもののレベルは次のようなものです。

【裏地交換に必要な縫い物レベル】

  • 和裁の経験はある(洋裁ではNG)
  • 着物を2~3枚くらいは自分で仕立てたことがある

裏地の交換は、実は「着物を一から仕立てるよりも難しい」とも言われています。見た目に不自然さが無く、着た時にひきつれ等が起こらない…このような仕上がりを求めるのであれば、上で書いた位の腕のレベルが必要です。

裏地交換は職人さんが作業をしている動画等だとカンタンそうに見えるのですが、実際にやってみてから「しまった!難しい!」となる人が少なくありません。

縫う段階はもちろんなのですが、その手前の「ほどく」が意外と難しいところ。失敗してしまうと、最悪の場合には布地自体が傷んでしまって、後から職人がリカバーしようとしても元に戻せない…こんなことも意外と多くあります。

  • 和裁の経験が無い
  • 着物・洋服を仕立てたことが無い(裏地の仕組みがよくわからない)
  • フォーマルシーンで着る着物である
  • 絶対に失敗したくない着物である

上のような場合には、無理にご自分で裏地交換をせずに、専門店でのご相談をおすすめします。

おわりに

着物の裏地のシミの対処法、今回の情報はお役に立ちそうでしょうか?当店は着物加工の専門店として、裏地の交換等の細かい加工も喜んで受け付けています。

宅配便での全国対応もできますので、お近くに着物加工店が無い場合にはお気軽にご相談ください。もちろん着物の表地の黄変やカビ取り等のトラブルも一緒に対処できますよ!

他店で断られたシミ承ります!

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