着物に香水のシミ!自分でしみ抜きできる?よくある質問Q&A
良い香りをまとわせてくれる香水は、今も昔も人気がありますね。でも着物や浴衣に香水がつくと、厄介なシミになることをご存知でしょうか?様々な香料を混ぜた香水は、変色したシミになったり、強い香りがいつまでも取れないことも…。
「着物の香水シミは自分で染み抜きできるの?」「着物の香水シミはクリーニングで取れる?」等等、ここでは着物についた香水のシミについて、よくある質問を解説していきます。
着物の香水のシミは自分でシミ抜きできますか?
着物の香水のシミをご家庭でシミ抜きできるかどうかは、着物の洗濯表示(素材や染料)で変わります。着物がご自宅での水洗いに対応しているか、まず確認しましょう。
香水のシミには水洗いが必要
香水は、様々な香料をアルコールで溶かした「混合式の液状香料」と言えます。その汚れは原則としては水溶性です。水には比較的溶けやすいですが、油分(石油系溶剤等)だけでは溶かし出すことができません。
そのためご家庭で着物についた香水のシミをシミ抜きする場合、その工程では「水洗い」が必要です。
シルク・ウールや繊細は着物はNG
シルク(正絹)やウール(羊毛・ウォッシャブル非対応)の着物、また色落ちの激しい繊細な着物等は、ご家庭では水洗いができません。このような着物に香水のシミがついた場合には、専門店でのシミ抜きや洗い張りを利用しましょう。
着物の香水シミのシミ抜き方法は?
香水のシミには中性洗剤を使ってシミ抜きを行い、さらにドライヤー等で香料を揮発させていきます。丈夫なきものの場合には、台所用洗剤や酸素系漂白剤等が使用できることもあります。
ただしいずれも事前に目立たない場所でテストを行った上で、自己責任でシミ抜きを行うようにしてください。
※シミの状態によってはご家庭でのシミ抜きでは汚れ・香りが落ちません。
用意するもの
- 中性タイプの洗濯用洗剤
- ガーゼか柔らかいタオル
- 洗濯用ネット(畳んだ着物が平らに入るサイズ)
- バスタオル2枚
- 着物用ハンガーまたは物干し
- ドライヤー
- アイロン、アイロン台、霧吹き等
下準備
- 着物の衿の型崩れを防ぐため、ざっくりと仮縫いしておくか、安全ピン等で仮止めしておきます。
- 目立たない箇所で変色・色落ちテストを行っておきます。
着物をシミ抜きする手順
- 洗面器などの容器に水を入れて、中性タイプの洗濯用洗剤を少量垂らして溶かしておきます。
- 溶かした洗剤液にガーゼを漬けて軽く絞ります。
- シミがある部分を軽く水で濡らしてから、2.のガーゼ(またはタオル)でシミの部分を軽くトントンと叩いていきます。丈夫な素材・染料の場合には、洗剤原液を少量漬けてから優しくなでるように洗ってもOKです。
- シミがある部分を水で十分にすすぎます。
- バスタブ・シンク等に水をはって、中性タイプの洗濯用洗剤を適量入れて溶かします。
- 着物を畳んでネットに入れてから、ネットごと5.の洗剤液に全体的に漬け込みます。
- 両手で優しく押して、全体を押し洗いします。
- 水を取り替えて2回真水で押し洗いして、十分にすすぎます。
- ネットごと洗濯機に入れて、脱水機能で30秒程度だけ脱水します。型崩れ気になる場合にはこの工程は省いて構いません。
- バスタオル2枚で着物を挟んで軽くポンポンと叩き、水分を吸い取ります。
- ハンガーまたは物干しにかけて、よく形を整えます。直射日光を避けて自然乾燥させます。
- シミの状態を確認します。色汚れ等が残っている場合には、それ以上は作業を行わず、専門店に相談しましょう。
- 色汚れはわからないのに香りだけ残っている場合、ドライヤーで熱風をあてて香料を揮発させます。ただし熱し過ぎには注意。ポリエステル等は熱に弱く、素材が縮んでしまうことがあります。
- 完全にシミ汚れが取れたことを確認してから、アイロンをかけて形を整えます。
※目に見えるシミ・汚れが残ったままで熱を加えると、取れないシミになってしまいます。着物の香水シミが取り切れない場合には、無理に作業を続けないようにしましょう。
丈夫な着物には「台所用洗剤」+「酸素系漂白剤」
着物と一口に言っても色々あって、中には普段着感覚でドンドン洗える丈夫なポリエステル着物等もあります。このような着物の場合には、洗浄力の強い「台所用洗剤」や「酸素系漂白剤」を使ってみるのも手です。
※洗浄力・漂白力が強い分、色落ち・変色・変質を起こすリスクは高くなります。必ず事前に変色テストを行い、シミ抜きは自己責任で行ってください。
用意するもの
- 台所用洗剤(液体・中性タイプ)
- 酸素系漂白剤(液体タイプ。粉末タイプはNG、塩素系も禁止)
- 洗濯用洗剤(中性タイプ)
シミ抜きの手順
- 上の「シミ抜き方法」と基本的な手順は同じです。中性洗剤をシミに使う部分で、かわりに台所用洗剤を原液で適量シミの部分に付けて、指で優しく撫でるように洗います。
- 洗面器等に水を入れて、洗濯用洗剤を少量溶かしておきます。
- 酸素系漂白剤をシミ部分に適量染み込ませてから、2.で作った洗剤液の中に漬け込みます。
- 15分~20分程度放置します。
- シミ部分を水ですすぎ、後は上で案内した方法と同じように着物を全体的に仕上げ洗いします。残った香りはドライヤー等で揮発させます。
※長時間のつけ置き洗いは厳禁です。
※ドライヤーで熱しすぎないように気をつけましょう。
家で落ちない着物の香水シミもありますか?
着物の香水シミのうち、時間が経ったシミ、古いシミ、変色したシミは、ご家庭では落とすことができません。
またシミ範囲が広い場合もご家庭での対処が難しく失敗しやすいので、専門店にまかせることをおすすめします。
数日以上が経ったシミはNG
ご家庭で対処ができる香水のシミは、ついてから2~3日程度までのものです。香水シミの液体部分がすっかり乾くと繊維にしっかり定着してしまうため、ご家庭でのシミ抜きが難しくなります。
付けてから数日以上が経っているシミは、ご家庭では落とせないと考えた方が良いです。
後から浮いてきたシミ・古いシミ
シミの香料が時間をかけて酸化して、変色したシミです。これはご家庭では一切落とすことができません。一般的なクリーニング店でも断られやすいので、着物に強い専門店に相談することをおすすめします。
シミ範囲が広い
ご家庭でシミ抜きしても香料が落ちきらず、輪ジミや一部の変色等を起こしたり、いつまでもニオイだけが残ってしまう可能性が高いです。
着物の香水シミはクリーニングで落ちますか?
一般的な丸洗い(ドライクリーニング)では着物の香水シミは落ちません。専門的なシミ抜き、程度によっては洗い張りが必要になります。
手作業でのシミ抜きができるお店を
香水シミは機械での洗浄(一般的なドライクリーニング)だけでは落ちずに残ります。キチンとした職人がおり、着物の手作業でのシミ抜きができるお店に相談をしましょう。
重症の場合は「黄変抜き」や「洗い張り」
時間が経って変色したシミや、香料による色の定着が激しい場合等には、漂白作業を伴う「黄変抜き」や、一度着物をほどいてから水洗いする「洗い張り」が必要となることもあります。
着物のお手入れ全般を扱える悉皆屋(しっかいや:着物クリーニングやリフォームの専門のお店)や、着物専門店等を選びましょう。
おわりに
着物についた香水のシミはとても取れにくいので、一般的なクリーニング店だと「落ちません」と断られてしまうことも多いようです。近所で引き受けてくれるクリーニング店が無い…そんな時には、昔ながらの着物のお手入れ専門の悉皆屋である当店『きもの創夢』にお気軽にご相談ください!