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シミの対処方法

着物にオリーブオイルやゴマ油のシミ!応急処置やシミ抜き方法は?

オリーブオイル

オリーブオイルやゴマ油、グレープシードオイル……最近ではサラダオイルだけでなく、様々な食用オイルが食卓に登場するようになりましたね。イタリア料理でオリーブオイルをパンに付けて食べたり、中華料理や韓国料理でゴマ油やラー油を後から少し垂らしたりといった「オイルを楽しむ料理法」も人気のようです。

そのためか「着物に食用オイルを垂らしてしまった」というシミ・汚れのトラブルも増えています。オリーブオイル等の食用油で着物を汚してしまった場合、水性の汚れと同じように対処すると却って汚れが広がることも。オリーブオイルやゴマ油等、食用オイルの汚れに適した着物のシミ抜き等の処置をしていくことが大切です。

坂根克之
坂根克之
こんにちは。着物関係一筋50年 京都きものサロン創夢(そうむ) 坂根克之です。ここでは着物に付いたオリーブオイルやゴマ油等の食用オイルの汚れについて、応急処置やシミ抜き方法等を詳しく解説していきます。

着物の食用オイル汚れは「濡らさない」!

まずは着物にオリーブオイル等の食用オイルをこぼした時の「応急処置」について解説していきましょう。一般的に着物や衣類にシミを作ると、おしぼりや濡れタオル等で拭いたり叩いたりする人が多いですよね。また、人によっては水道水やコップの水で濡らすこともあるでしょう。ところが着物に付いたオイルのシミの場合、このような応急処置はすべてNGなんです。

【NGの応急処置法】

 濡れタオルで拭く
 おしぼりで拭く
 水道水で濡らす 等

オイル汚れは濡れると広がる

オリーブオイル等のオイル汚れは、「オイル(油)」というとおり油性の汚れです。油性汚れは水には分解されませんから、水をいくら加えてもキレイに落ちきることはありません。水で濡らすほどその水に乗って油汚れが広がり、後からシミ抜きをする範囲が大きくなってしまうんです。

また着物の素材が正絹(シルク)等の場合、特に水濡れはNG。シルクは水にとても弱いので、濡らした部分が縮んでしまい、ご家庭では対処ができない「水シミ」を作ってしまうことになります。

応急処置は「吸い取るだけ」

着物にオリーブオイル等の食用オイルの汚れを付けてしまった時、応急処置は次のような方法で汚れを吸い取るだけにましょう。

【OKの応急処置方法】

○ ティッシュで優しく抑えて吸い取る
○ 紙ナフキンで優しく抑えて吸い取る
○ ハンカチ・手ぬぐい等で抑えて吸い取る(※汚れますので注意)

強く擦ったり叩いたりはしないことが大切です。強いダメージを与えると、汚れが繊維の奥に押し込まれてしまいますよ。後はできるだけ触らないようにして帰宅しましょう。

着物の食用オイル汚れをシミ抜きする方法は?

では着物についたオリーブオイル等の食用油汚れは、どのようにシミ抜きしたら良いのでしょうか?水だけでは分解できないことは、上でも解説しましたね。

オリーブオイル等の油汚れは「油溶性」という油に溶けやすい性質を持っています。そのため石油から生まれた溶剤である「ベンジン」がシミ抜きには便利!ベンジンはドラッグストアや薬局でも買えるので、ご家庭での油性汚れのシミ抜きに向いているんです。

用意するもの

着物に付いたオリーブオイル等の食用油の汚れを落とすためには、次のものを準備しましょう。

  • ベンジン
  • 柔らかい布(汚れても良いもの)
  • タオル(汚れても良いもの)
  • 着物用のハンガー(物干しでも代用できます)

なお、ご自宅で洗える着物の場合には、シミ抜き後に中性洗剤で全体を仕上げ洗いした方が、輪ジミ等をより防ぐことができます。そのため、洗える着物の場合には次の支度もしておきましょう。

  • 中性タイプの洗濯洗剤(おしゃれ着洗い用のもの)
  • 洗濯用ネット
  • アイロン、アイロン台

※水洗いする場合、型崩れを防ぐため襟元を安全ピン等で止めておくか、ざっくりと縫い止めておくことをおすすめします。

作業前の注意

※ベンジンは揮発性が高く、また吸い込むと刺激の強い危険な物質です。作業中や乾燥中は窓を開ける等して常に換気してください。また病人や赤ちゃん、動物等が居る場所での作業は避けましょう。

※ベンジンは引火性です。ライターやストーブ、コンロ等の火器類の使用は厳禁ですので注意しましょう。

※着物の素材・染料によっては、ベンジンで色落ち・変色が起きることがあります。目立たない箇所や共布を使い変色テストをすることをおすすめします。

※シミの状態によってはご家庭でシミ抜きができないことがあります。次の「3.」の項目までチェックしてから作業を始めましょう。

シミ抜きの手順

  1. 下にタオルを敷いてから、着物のシミがある箇所を広げます。
  2. 柔らかい布がビショビショに濡れるくらいに、ベンジンをたっぷりと染み込ませます。
  3. ベンジンを浸した布で、シミがある部分をトントンと軽く叩いていきます。
  4. 汚れが少しずつ布や下のタオルに移るので、少しずつ動かして常にキレイな面が当たるようにしながら作業していきます。
  5. しっかり汚れが取れたら、もう一度布をベンジンでたっぷり濡らします。
  6. ベンジンで濡れている箇所の境目がわからなくなるように「ぼかし」をかけていきます。衿等の場合には衿全体(縫い目の部分まで)を濡らしておくと、輪ジミになるのを防げます。
  7. 着物を専用ハンガーにかけて乾かします。水洗いをする場合には、すぐに着物全体を中性洗剤を使って押し洗いして、軽く脱水してから乾かします。

※ベンジンで濡らした布で着物を強く擦ったり叩いたりはしないでください。着物の表面が白っぽく毛羽立つ「スレ」という現象が起こると、着物を元に戻せなくなります。

着物の食用オイルシミ、取り切れないこともある?

着物に付いたオリーブオイル等のシミの状態や汚れの種類によっては、ご家庭のシミ抜きでは汚れが落ちないことがあります。

乾いた汚れ・古い汚れはNG

オイルのシミがご家庭で落とせるのは、付いた当日~3日後くらいまでが限度です。

  • 汚れが乾いて定着している
  • 一度洗ったが油染みが浮いてきている
  • 残った油シミが変色していきている

このような乾いてしまったオイルのシミや時間が経過したシミについては、残念ながらご家庭では対処ができません。

直径2センチ以上の汚れは落ちきらない

ご家庭でのシミ抜きに使用するベンジンは、プロが使用する溶剤に比べると溶解力が強くありません。あまりにも大きいシミや汚れだとベンジンでは溶かしきれず、汚れが残って「輪ジミ」等になりやすいです。

また繰り返してベンジンで作業をすると、着物の表面にダメージが溜まりやすくなるので、これもおすすめができません。一般的に「直径2~3センチ」を超えるような大きさのシミは、自分でのシミ抜きは避けた方がよいでしょう。

縫い目をまたいだ汚れは危険

汚れが縫い目にかかっている場合には、専門店に任せましょう。縫い糸にまで油汚れが染み込んでいると、ベンジン等で外側から対処するだけでは汚れが取りきれません。

あとから油汚れが浮いてきたり、糸がもろくなって切れたりするトラブルが発生する恐れがあります。

混合性の汚れには「水洗い」が必要

「油」だけでなく「水性の汚れ」も含んだシミの場合、上のシミ抜き方法だけでは汚れを落としきることができません。

  • オリーブオイル+パスタの茹で汁
  • ゴマ油+酢+醤油のドレッシング
  • サラダ油+レモン汁+塩のドレッシング 等

このような油・水両方の特性を持った汚れは「混合性汚れ」であり、ご家庭のシミ抜きでは仕上げに水洗いが必要となります。ご家庭で水洗いができない着物の場合、汚れが残ってしまう可能性が非常に高いです。

シミ・汚れの種類が「家では落とせない」というものだった場合には、早めに専門店にシミ抜きの相談をしましょう。「油のシミである」ということを良い添えてシミ抜き(部分洗い)をオーダーすれば、適切に対処してもらえますよ。

おわりに

着物に付いたオリーブオイルやゴマ油等の食用油のシミは、時間が経つと段々と酸化して、落ちにくい変色シミになってしまいます。こうなると一般的なクリーニング店では対処をすることができません。

ただ当店『きもの創夢』は着物専門のお手入れ屋さんですから、このような古いシミや酸化シミに対処できる職人さんも存じております。「このシミ、もしかして古い油シミかも?」と思ったら、早めに当店までご相談くださいね。

他店で断られたシミ承ります!

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