着物のよだれ汚れは放置NG!応急処置とシミ抜きの正解は?
お宮参り着物で赤ちゃんを抱っこした時に着物によだれが付いてしまったり、七五三やお正月のお子様の着物によだれシミができたり…赤ちゃんや小さなお子様関連のイベントですと「着物にヨダレ」はとても多く聞くトラブルのひとつです。
日常着であればヨダレのシミはそこまで厄介な汚れではありませんが、着物の場合だとヨダレのシミはなかなか対処が難しいもの。「対処法がわからないから」と着物のヨダレのシミを放置して、取れないシミにしてしまうケースも珍しくありません。
1.着物によだれ汚れが付いた時の応急処置は?
出先で着物にヨダレが付いてしまった時には、どのように応急処置をするのが正解なのでしょうか?
ハンカチでそっと抑えるだけでOK
着物に付いたヨダレの応急処置方法は、着物の素材で異なります。
ポリエステル/ウォッシャブル着物の場合
- ハンカチまたはタオルを水で濡らします。
- 固く絞ってから、シミの部分を軽く叩きます。
- 乾いたタオルで再度シミの部分を軽く叩いて水分を取ります。
※お湯は使用しないでください。ヨダレに含まれる成分が固まり、シミが取れにくくなります。
※おしぼりは使用NGです。含まれる香料やアルコールで着物が傷むことがあります。
正絹・ウール等の水洗いNG着物の場合
- 乾いたタオルまたはハンカチで、シミの部分を軽く押さえて水分を吸い取ります。
- そのまま触れないようにしておきます。
※ゴシゴシと強くこすったり叩いたりするのはNGです。
※正絹(シルク)の着物に水分を与えると、縮んで水シミができたり輪ジミになることがあります。応急処置で濡れたハンカチ等を使わないようにしましょう。
シミがついた箇所の写真を撮っておく
応急処置が済んだら、着物にヨダレのシミが付いたところの写真をスマホで撮っておきましょう。シミが乾くと着物のどこにヨダレの汚れがわかりにくくなるので、乾く前に写真を撮っておくと安心です。
2.着物のヨダレのシミは放置してはダメ?
着物にヨダレの汚れが付いた場合、シミが乾くと汚れが見えにくくなり「そのままでも大丈夫かな?」と考える人も多いです。しかし応急処置だけでヨダレの汚れが付いた着物を放置してはいけません!
人間のヨダレには、たくさんの雑菌が含まれています。また赤ちゃんのヨダレには「母乳」が含まれるため、タンパク質も多いです。雑菌やタンパク質が多いシミを放置すると、次のようなトラブルが起こります。
- カビが生える:ヨダレのシミは黒カビ・青カビ等の原因になりやすいです。
- 変色シミになる:時間が経つとヨダレの成分が酸化して、黄色~茶色の変色シミになります。
- 着物の色が変わる:更に時間が経つと着物の地色が抜けたり、柄の色が変色することがあります。
着物に上のような深刻なトラブルが起きてしまう前に、着物に付いたヨダレの汚れはきちんとシミ抜きをすることが大切です。
3.着物のよだれ汚れは家でシミ抜きできる?
着物のヨダレ汚れのシミ抜きができるかどうかは、着物の素材によって変わってきます。
【ポリエステル着物・ウォッシャブル着物の場合】
ご家庭で着物のヨダレ汚れのシミ抜きが可能です。
- シミが付いた部分を軽く濡らします。
- 中性タイプの洗濯用洗剤の原液を少量付けます。
- やさしくつまみ洗いをします。
- 水でよくすすぎます。
- 全体を中性洗剤で仕上げ洗い(洗濯機または手洗い)します。
- 着物専用のハンガーに干し、陰干しでよく自然乾燥させます。
※ゴシゴシとこするのは止めましょう。
※この方法でシミ抜きができるのは、付いたばかりのヨダレのシミです。古いシミについてはご家庭では落とせません。4.以降の項目をチェックして、専門店に依頼しましょう。
【正絹着物・その他水洗い不可の着物の場合】
正絹(シルク)等の礼装用の着物については、着物についたヨダレの汚れのシミ抜きはご家庭ではできません。
これは、ヨダレのシミが水に溶ける「水溶性」であるためです。ご家庭でのシミ抜きの場合、ヨダレのシミを取るには着物を水に濡らさなくてはなりません。
正絹や水洗い不可の着物を少しでも水に濡らすと、「輪ジミ」「着物の収縮」「色落ち」等のトラブルが起きます。着物を濡らさないでお手入れできる「ベンジン」は油系の溶剤なので、ヨダレのシミを完全に取り除くことはできません。
そのため、専門店でのシミ抜きが必要になるのです。
4.よだれ汚れはクリーニングの「きもの丸洗い」で落ちる?
ヨダレの汚れは、一般的な着物クリーニングである「きもの丸洗い」では落ちません。
「着物丸洗い」とは、洋服の場合のドライクリーニングと同じで、石油系の溶剤を使った機械洗いのことです。皮脂汚れ等の軽い油溶性の汚れは落とすことができますが、ヨダレ汚れのような水溶性の汚れはほとんど落とせません。
「着物をクリーニングに出したのに、後からヨダレのシミが変色ジミになった……」こんなトラブルが起きるのは、そのクリーニング店が「丸洗い」しかしていないためでしょう。
洋服クリーニングがメインで着物も対応するチェーン店等では、「着物は丸洗いしかできない」というお店も多いです。お店選びでは十分注意してくださいね。
5.着物のよだれ汚れを落とせる専門店とは?
着物のヨダレの汚れを落とすには、職人の手作業による「着物向けのシミ抜き」が必要です。このような対応ができる専門店はどのように探せばよいのでしょうか。
- 悉皆屋(しっかいや):着物のクリーニングやお直し等を全般的に扱う伝統的な専門業者です。店舗数は少ないですが、最近では宅配でシミ抜き等のお手入れを依頼できるお店も増えています。
- 着物専門クリーニング店:着物だけを扱うクリーニング店です。ただし激安系の店舗の場合、丸洗い(機械洗い)しかできない店舗もあるので、事前に「シミ抜き」ができるかよく確認しましょう。
- 着物の購入店舗(呉服屋やデパート):着物の販売店に相談すると、取引のある悉皆屋を紹介してもらえます。ただしこの場合、販売店の紹介料として、手数料(マージン)が料金に上乗せされることも多いです。
6.着物のヨダレ汚れのシミ抜きの料金はどれくらい?
着物のヨダレ汚れのシミ抜きの場合、料金はいくら位かかるのでしょうか?
シミが小さく新しい場合
着物に他の汚れが一切無ければ、シミ抜き料金は数千円程度で済むことも。ちなみにシミ抜き自体の料金は、シミの大きさとシミの数で変動するお店が多いです。
他に汚れがある着物・これから長く着ない着物の場合
皮脂汚れやファンデーション汚れ等のシミがたくさん付いていたり、喪服着物等で今後しばらく着ない場合には、着物丸洗いも合わせて必要になります。この場合は、丸洗いの料金+シミ抜き料金がかかります。
シミが古い場合
変色しているシミやカビが生えている場合だと、「カビ取り」「黄変抜き(おうへんぬき)」等、さらに専門的な対応が必要になるため、別途料金がかかります。
いずれの場合でも、「シミの大きさ」と「着物の状態」で料金が変わってきます。そのため着物のヨダレ汚れのシミ抜きの場合、事前に「見積もり」を出してくれるお店を選ぶことをおすすめします。
おわりに
着物のヨダレのシミは、早めに専門店に依頼すれば安めの料金でスッキリお手入れできることがほとんどです。出先でシミが付いた場合はもちろんですが、お宮参りや七五三・お正月等の後では着物全体を明るい場所でしっかりチェックして、ヨダレのシミが無いか確認しておきましょう。